Hokkaidoサマーインスティチュート・トライアル「課題解決の手法を学ぶ2+2日間」

 「平成27年度トップランナーとの協働教育機会拡大支援事業」の一環として,「課題解決の手法を学ぶ2+2日間」(担当教員参加部局:先端生命科学研究院,高等教育推進機構,理学研究院,農学研究院,保健科学研究院)を開催しました。これは,来年度から正式に実施されるHokkaidoサマーインスティテュートを試行するものです。

 本学が世界の課題解決に貢献するには,イノベーションの創出や社会の改革を主導できる人材の育成が必要であり,このため課題解決の様々な手法を学ぶ機会が必要となっています。本プログラムでは,Part1「解決すべき課題の芯をつかむ(ケースタディとリサーチ演習)」とPart2「課題解決のためのサービスデザイン・ワークショップ」の2回にわたり,課題解決の手法について学びました。以下では,それぞれの実施内容について簡単に紹介します。

● Part1:解決すべき課題の芯をつかむ(ケースタディとリサーチ演習)

 Part1は,社会人の人材育成マネジメント教育に全国的に定評のあるグロービス経営大学院より2名の講師(山中礼二先生、川上慎市郎先生)を本学として初めてお招きし,8月22日(土)と23日(日)の2日間の日程で工学部アカデミックラウンジ3において開催しました。学内の15部局から25名(うち大学院生・研究生15名)および学外から3名の28名が参加しました。

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中山先生による講義

 山中先生による初日の講座では,「ビジネスイシュー,ソーシャルイシュー双方に通用する課題解決の手法」に関する講義から始まりました。課題解決のために新しい事業を起こすスキルやプロセスに関して,プロフィット,ノンプロフィットに関わらず,どちらの課題解決にもつながるスキルや知識を紹介していただき,山中先生ご自身が育成に尽力された起業家の事業事例を一緒に考え,事業化する過程を紐解いていきました。また,「ワーキングマザーの負担感が大きい」という社会課題を例に,問題の本質を捉える手法をワークショップ形式で学習しました。

 これに引き続き川上先生の「課題の芯を捉えるリサーチの手法」に関する講義では,生活者の抱える課題が,それが本質的かつ深刻なものであればあるほど,実際の生活者自身の意識において顕在化していない(無意識の中にある)ことを認識しました。

 2日目は,チーム毎に決めたソーシャルイシューの解決のための芯となる部分をインタビューにより捉え,的確に構造化・言語化する手法をまとめ,発表を行いました。

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チームごとに課題の芯を捉えるリサーチ演習を行い,その成果を発表しました。

 

● Part2:課題解決のためのサービスデザイン・ワークショップ

 Part2では,大学間交流協定校であるフィンランド・ラップランド大学サービスデザイン大学院の研究者2名(Essi Kuure, Hanna-Riina Vuontisjärvi)に講師として来日いただき,さまざまな課題解決手法のなかでも特に欧州で開発され,日本でも最近各方面で注目されているサービスデザインの手法を学ぶワークショップを企画しました。10月10日(土)と 11日(日)の2日間の日程で高等教育推進機構S棟1階で開催され,21名(学内教員・学生17名、学外4名)の方に参加いただきました。

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Hanna先生(左)とEssi先生(右)

 サービスデザインとは,デザイン思考を使い,目に見えないサービスを利用者の立ち場に立って可視化,問題を洗い出し,課題解決の方法を具体化していく手法です。今回のワークショップでは,世界的イベントである「Tokyo Olympic 2020」 を題材に取りあげ,私たちにとって良いイベントに育てていけるか,また札幌人ができる地方在住者の参加のあり方について考える過程を通し,サービスデザインの実践をわかりやすく学ぶことができました。

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サービスデザインのプロセスの一場面
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欧州、アフリカ、札幌、沖縄など多様な参加者

  ワークショップ参加者からは,北大が目指す人材育成の手法にサービスデザイン思考が学際領域や産業社会・地域コミュニティの研究にどのように活用できるか今後も試行したいこと,大学の理系・文系の基礎教育や新渡戸スクールなど学際領域を能動的に学ばせる教育技法として,このようなアクティブラーニングを取り入れたいという感想も寄せられました。

 また,ワークショップに参加した学生と教職員が,世界規模の社会課題解決のアイデアを競う国際学生コンペティション(Hult Prize 2016)への参加を企画し,一次選考として学内コンペ「Hult Prize @ Hokkaido University国際学生コンペティション」を実施しました。準備期間わずか2ヶ月で,学内から17チーム(1チームは3~4名)が応募。参加チームには多くの留学生に加え,リーディング・プログラム生(2チーム),新渡戸スクール生(6チーム)などが参加し,各々4分間のプレゼンテーションに練りに練ったイノベイティブなアイデアを詰め込み,競い合いました。2次審査は世界5カ国で実施され,これを勝ち上がるとニューヨークの最終選考に招待されます。優勝賞金は100万ドル。アイデアを事業化するチャンスが与えられます。北大から世界的な社会起業家が誕生するかもしれません。