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環境ストレス→トランスポゾンの活性化→ストレス耐性!

形態機能学系の伊藤秀臣助教を中心とする研究グループでは、このたび動く遺伝子であるトランスポゾンが環境ストレスに耐性を持つ植物を誕生させることを実験的に証明しました。この成果は北海道大学のプレスリリースでも紹介されています。以下、伊藤先生ご本人による解説です。

本研究では環境ストレスが植物に与える影響について、内在性の動く遺伝子トランスポゾンの活性化の影響を調べました。トランスポゾンの活性化は、少なからず宿主植物に影響を与えることは推測されていましたが、実際に直接証明することは困難でした。今回我々の研究室では高温ストレスで活性化するトランスポゾンONSENを用いて人工的に転移誘導することで、転移集団でストレス耐性実験を行いました。その結果、植物ホルモンであるアブシシン酸に耐性を示す個体を得ることができました。その原因因子を明らかにすると、ONSENがアブシシン酸ストレス応答遺伝子に挿入されていることがわかり、挿入による遺伝子の機能破壊により、ストレスに非感受性となっていることがわかりました。環境ストレスで活性化するトランスポゾンはさまざまな生物で報告されています。このことから、環境ストレスが誘発するトランスポゾンの転移は、ゲノム進化による環境適用の原動力になることが証明されました。

図1図1. 高温ストレス処理によるONSEN転移集団の作成とストレス耐性試験。シロイヌナズナpolIV変異体に高温処理を行うと、次の世代でONSENの転移集団を得ることができる。この転移集団を用いてアブシシン酸ストレスに耐性を示す個体を探索した。

図2図2. ABAストレス環境下における野生株とONSENの転移によるストレス耐性獲得株.。通常培地(左)とABAストレス培地(右)。ABAを高濃度で含む培地に播種した野生株は発芽後生育が止まってしまうが、ONSENの挿入によりABAストレス非感受性になった変異体では、生育することができる。

発表論文: Ito H., Kim J.M., Matsunaga W., Saze H., Matsui A., Endo T.A., Harukawa Y., Takagi H., Yaegashi H, Masuta Y., Masuda S., Ishida J., Tanaka M., Takahashi S., Morosawa T., Toyoda T., Kakutani T., Kato A., and Seki M. (2016) A Stress-Activated Transposon in Arabidopsis Induces Transgenerational Abscisic Acid Insensitivity. Scientific Reports 23181. www.nature.com/articles/srep23181

 

 

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