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ハワイ産ショウジョウバエは単一起源ではなく複数の祖先に由来する

系統進化学系の加藤徹先生が、ショウジョウバエの進化的起源に関する新しい発見をして論文発表しました。以下、加藤先生ご自身による解説です。

 

ハワイには列島固有のショウジョウバエが多数生息し、これらはガラパゴス諸島のダーウィンフィンチやアフリカのシクリッド科魚類と同様、顕著な適応放散の例の一つとして非常に有名です。適応放散とは「単一の祖先が様々な環境に適応して多様化することで形質が異なる多数の系統に分化する現象」です。これらハワイ産のショウジョウバエは、イディオミア(Idiomyia)属とヒメショウジョウバエ(Scaptomyza)属という2つのグループに大きく分けられます。そのうち、前者は全てハワイ固有である一方、後者は約6割がハワイ固有で残りが世界各地に分布することから、両者の起源について2つの仮説が提唱されてきました(図1)。一つは、両者はハワイで単一の祖先から適応放散し、その後ヒメショウジョウバエ属の一部がハワイから大陸へ分散したという「ハワイ単一起源」説、もう一つは両者の祖先が大陸からハワイへ別々に移入して適応放散したという「複数起源」説です。そして、最近のDNAを用いたいくつかの系統学研究からは「ハワイ単一起源」説が有力であるとの見解が示されています。しかし、従来の研究はいずれも解析種の選定に大きな偏りがあり、大陸産のヒメショウジョウバエが数種しか含まれてなかったことから、これらの仮説が十分に検証されたとは言い難い状況でした。

図1図1.ハワイ産ショウジョウバエの起源に関する2つの仮説

 

本研究では、これまでDNA配列情報が得られていない大陸産のヒメショウジョウバエ11種について、11遺伝子(合計約7kb)のDNA塩基配列を新たに決定しました。そして、これらの配列情報に既知の配列情報をあわせて分子系統樹を構築し、それぞれの系統が分岐した年代を推定しました。また、現生種の地理分布と系統樹の分岐関係との対応を調べることで、祖先種の分布がかつてどこにあったかを推定しました。

図2図2.系統樹から推定されたハワイ産ショウジョウバエの起源。イディオミア属の系統で1回、ヒメショウジョウバエ属の系統で2回、大陸からハワイへ祖先の移住があったと推定される。

その結果、得られた系統樹(図2)において、イディオミア属とヒメショウジョウバエ属は根元で分岐し、その後、ヒメショウジョウバエ属では大陸産の系統が最初に分岐するという樹形が示されました。また、ハワイ産のヒメショウジョウバエ属は大きく2つの系統にわかれ、これらは大陸産の系統が分岐した後にそれぞれ独立して分岐する樹形を示しました。これらの結果は、ハワイ産ショウジョウバエが複数の祖先からなることを示し、イディオミア属の系統で1回、ヒメショウジョウバエ属の系統で2回、それぞれ独立して大陸からハワイに移住したと考えることができます。こうして、本研究では、ハワイ産ショウジョウバエがハワイ単一起源ではなく、大陸を起源とする複数の祖先に由来することを明らかにしました。

 

発表論文: Katoh T, Izumitani HF, Yamashita S, Watada M (2016) Multiple origins of Hawaiian drosophilids: Phylogeography of Scaptomyza Hardy (Diptera: Drosophilidae). Entomological Science, doi: 10.1111/ens.12222. (http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/ens.12222/abstract)

 

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