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Ca2+シグナルが植物体内の栄養バランス統合シグナルとして働くことを発見

形態機能学系の山口淳二先生と佐藤長緒先生のグループが、植物の栄養バランスを調節するための新しいメカニズムを発見して論文発表しました。本学科出身の安田盛貴博士が中心的な役割を果たした成果となっています。以下、佐藤先生による解説です。

 

私たち人間と同様に、植物にとっても体内の栄養バランスは重要です。特に、光合成で同化した糖(C)と土壌中から吸収した無機窒素(N)は、植物が生きていく上で必須な要素であり、CとNのバランス「C/N」は植物の成長に大きな影響を与えます。このような「C/N」栄養応答と呼ばれる現象の理解は、作物の生産性向上にも繋がる可能性を秘めています。

私たちはモデル植物シロイヌナズナを用いてC/N栄養応答の分子基盤解明に取り組んでいます。これまでに、タンパク質翻訳後修飾の1つであるリン酸化修飾が植物のC/N栄養シグナル伝達で重要な役割を担うことを明らかにしてきましたが、それを触媒するリン酸化酵素(キナーゼ)の実体は不明でした。今回、私たちはC/N栄養応答の新たな制御因子としてCIPKキナーゼを同定しました。CIPKキナーゼは植物において広く保存されており、膜上に局在するカルシウム(Ca2+)センサータンパク質CBLと複合体を形成することで活性化します。変異体の表現型解析から、CIPKキナーゼがC/Nに応答した植物の成長制御に大きく貢献することを明らかにしました。さらに、生化学的な解析から、CIPKキナーゼは既報のC/N応答制御因子ユビキチンリガーゼATL31をリン酸化し、ユビキチン化基質14-3-3タンパク質との相互作用を促進することやATL31タンパク質安定性を制御することが示されました。そして、Ca2+阻害剤を用いた解析から、C/N栄養応答制御において、Ca2+シグナルが重要な役割を担うことを証明しました。本研究で得られた知見から、植物のC/N栄養シグナルの統合にCa2+シグナルが関与し、その受容体であるCBL-CIPKキナーゼ複合体がC/N応答制御の上流シグナル伝達機構の分子実態として機能することが明らかになりました(下図)。

今後は、C/N栄養バランスの感知とCa2+の関係性や他の植物種における保存性などを検証し、C/N栄養応答のさらなる理解と作物種への応用に貢献できればと考えています。

なお本研究成果の発表は、北海道大学 大学力強化推進本部が実施する「平成27年度若手研究者向け論文校閲費支援事業」のサポートを受けて進められました。

発表論文: Yasuda S, Aoyama S, Hasegawa Y, Sato T*, and Yamaguchi J. (2017) Arabidopsis CBL-Interacting Protein Kinases Regulate Carbon/Nitrogen-Nutrient Response by Phosphorylating Ubiquitin Ligase ATL31. Molecular Plant 10: 605-618. (http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1674205217300060

 

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