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聞こえない小鳥でも個体ごとに特徴のある歌をうたう

北海道大学大学院理学研究院の森千紘博士(卒業生)と和多和宏准教授らの研究グループは、耳が聞こえないカナリアも発声パターンには個体ごとに違いがあり、毎年歌の変化が起こるにもかかわらずその個体差が維持されることを明らかにして論文発表しました。北大のプレスリリースでも紹介されています。

ヒトの言語や小鳥の歌は、親など他個体の発声をまねて類似した音を発することで獲得され、これを発声学習といいます。発声学習で獲得される発声パターンには個体差が生まれ、それが個体識別や個体間コミュニケーションに重要な役割を果たします。しかし、発声パターンの個体差が聴覚による学習の影響をどのくらい受けているかはわかっていませんでした。

小鳥の一種、カナリアは毎年完成させた歌をいったん崩して新しく歌を学び、1年目に獲得した音要素の種類を部分的に維持しつつ、新しく加えたりなくしたりして歌を変化させます。今回の研究ではこの毎年の歌変化に着目し、カナリアを用いて実験を行いました。お手本となる親鳥の歌と自分の声が聞こえない聴覚除去個体をつくり、音要素の維持と入れ替わりがどのように起こるのか解析しました。その結果、聴覚がなくても、正常な場合と同様に発声パターンを変化させ、種特異的な(カナリアの歌としての特徴をもった)歌を完成(固定化)させることがわかりました。また、次の年の歌の変化を調べると、耳が聞こえなくても前年と同様の音要素を維持しつつ、部分的に音要素を入れ替えていることがわかりました。これらのことは、種特異的な歌を発達させる中で、聴覚によらない生得的なメカニズムが毎年の歌変化と個体ごとに特徴のある発声パターンを作り出すことに寄与していることを意味します。

 

発表論文: Chihiro Mori, Wan-chun Liu, and Kazuhiro Wada (2018) Recurrent development of song idiosyncrasy without auditory inputs in the canary, an open-ended vocal learner. Scientific Reports 8:8732.(https://www.nature.com/articles/s41598-018-27046-4

 

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