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マウスの精子形成における長鎖非コードRNAの機能の一端を解明

生殖発生生物学系の木村敦准教授のグループでは、当学科出身の佐藤優衣博士主導のもと、同じ生殖発生生物学系の小谷友也准教授と北海道医療大学の高橋伸彦准教授との共同研究により、マウスの精巣特異的に発現する新規の長鎖非コードRNAであるTesraを発見してその精子形成における機能の一端を解明しました。この成果は生殖生物学分野のトップジャーナルであるBiology of Reproduction誌の3月号にオープンアクセス論文として掲載されており、この雑誌を発行する北米生殖生物学会(Society for the Study of Reproduction)のニュースでも注目論文としてとりあげられました。以下、木村先生による解説です。

 

哺乳類の精巣では、精子のもとである精原細胞が有糸分裂によって増える一方で、減数分裂と精子変態という過程を経て精子になります。この精子形成を理解することは生殖生物学における長年の課題なのですが、いまだにその全容解明には至っていません。我々は、その原因の一端が長鎖非コードRNA(英語ではlong noncoding RNA)にあると考えて研究を行いました。

長鎖非コードRNAとはタンパク質に翻訳されずにRNA分子のまま機能するもののうち200塩基を超える長さのRNAのことを指します。21世紀に入ってから多くの組織でその存在が明らかになりましたが、精巣はあらゆる組織の中でも特にたくさんの長鎖非コードRNAを含んでいるのです。ところが、他の組織ではさまざまな機能が明らかにされている長鎖非コードRNAの精巣における機能はまだ理解され始めたばかりです。

我々は今回、精巣特異的な遺伝子が並ぶマウス9番染色体上のPrss/Tessp遺伝子座において、新規の長鎖非コードRNAを発見してTesraと名づけました。Tesraは精巣だけで発現しており、減数分裂中の一次精母細胞という時期に核に多く局在することがわかりました。この時期はPrss/Tessp遺伝子座の遺伝子を含む多くの重要遺伝子が転写活性化する時期であることから、我々はTesraの転写活性化機能を検証しました。その結果、TesraPrss42/Tessp-2と呼ばれる遺伝子のプロモーターに結合してその転写活性化を担う可能性が高いことがわかりました。

Prss42/Tessp-2遺伝子は、以前の我々の研究によって二次精母細胞と呼ばれる時期の細胞が減数分裂を進行するのに必須の機能を持っていると考えられており、Tesraはその調節を行っている可能性が高いのです。また、Tesraは我々が以前同定したエンハンサーとも協働することが明らかになり、減数分裂過程での遺伝子の転写活性化メカニズムの一端が見えてきました。

現代社会では6組に1組の夫婦が不妊に悩んでいると言われていて、男性側に原因があるケースはそのうち半分とされています。本研究は、長鎖非コードRNAが精巣で減数分裂の進行に極めて重要である可能性を提示するもので、精子形成のメカニズムの全容解明に一歩近づくものです。将来的には男性不妊の原因究明にも寄与する可能性があると考えています。

 

 

発表論文:Satoh Y., Takei N., Kawamura S., Takahashi N., Kotani T., and Kimura A.P. (2019) A novel testis-specific long noncoding RNA, Tesra, activates the Prss42/Tessp-2 gene during mouse spermatogenesis. Biology of Reproduction 100: 833-848.(https://academic.oup.com/biolreprod/article/100/3/833/5149495

 

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