Study Group for Conservation

of the Daito Scops Owl

ダイトウコノハズク保全研究グループ

 

大東諸島における固有鳥類の保全生態学研究 

これまでに14種(亜種含む)の鳥類が日本国内で絶滅し、そのうち12種が島嶼に生息していた。沖縄本島の東400kmの太平洋上に位置する大洋島、南北大東島では7亜種の鳥類が進化した。その反面、国内で最も多く絶滅させた歴史を持ち、4亜種が絶滅した。絶滅が相次いだ中で大東島に固有の2亜種ダイトウメジロ、ダイトウヒヨドリ、ダイトウコノハズクが生き残った。しかし、北大東島ではすでにダイトウコノハズクは絶滅した可能性が極めて高く、南大東島における雄の個体数も約150 個体にまで減少した。

 南大東島における多くの亜種の絶滅は、開墾に伴う樹木の伐採、生息可能域の収奪が原因である。現在の南大東島における樹林性の鳥類の生息域は幅50m程の帯状に島を囲む防風林だけである。2010年11月の大型で猛烈な台風12号によりダイトウコノハズクに巣穴を提供する多くの樹木が倒れた。2011年9月には台風15号が、2010年の被害に追い打ちをかけるように大東島近海に長時間滞在した。これまでに確認されたダイトウコノハズクの20巣がモクマオウの樹洞に位置しており(全確認巣の約9割)、その三分の一が2010年の台風による倒木などで使用不可能となっている。

 亜種ダイトウコノハズクは希少であり保護対策に緊急を有する個体群でといえる。皮肉的ではあるが、大東諸島への移入樹木モクマオウがダイトウコノハズク個体群の維持に貢献してきた。モクマオウ導入以前に主要な営巣木として利用されていた大東諸島の在来樹種ダイトウビロウの森林を復活させるまでの過渡的な措置として、巣箱を用いた繁殖個体群の安定をはかることが急務と考えている。さらに、個体群の長期的なモニタリング体制を充実させ、正確な状況把握に努め、確率的な絶滅可能性を事前に予知することが大切である。


個体群保護のための喫緊の課題

現在の個体群の状況から繁殖個体数の安定化は一刻を争う状況にある。ダイトウコノハズクの若鳥が繁殖のために定着を終える12月初旬までに南大東島に20個の巣箱を設置する。設置に際しては南大東島の生態系を守る意識を高める啓蒙活動を兼ね、野生生物に興味を持っておられる島民の方々の協力を仰ぐ。南大東島に隣接する北大東島では過去40年程の間、ダイトウコノハズクの確実な観察記録がない。北大東島と南大東島の距離は10kmに過ぎないため、南大東島から移動分散している可能性がある。しかし、巣場所としての樹洞を提供する樹木がないことが北大東島での定着を妨げていると考えられる。北大東島における定着を可能にするために巣箱を架設する。北大東島における個体群の再確立は、絶滅リスクを分散させるために極めて重要な課題である。


社会的な課題

ダイトウコノハズクが狭い大東諸島で生息し続けるためには、樹林地を永続的に確保する必要がある。現在の南大東島には極狭い面積の樹林地しか存在していない上に、台風の影響で樹林地の荒廃が進んだ。大東諸島の潜在極相樹であるダイトウビロウは、台風の影響に対して頑健であるが移入樹種のモクマオウは弱い。またモクマオウは植栽から80年程が経過し、樹勢が衰えたことも台風の影響を大きく受けた原因と推測される。今後は、これまでに南大東島で実施してきた調査研究、および保全活動で培った経験を総動員し、また南大東島での長期にわたる生活で得た島民との友好的な関係を元に、潜在植生であるダイトウビロウ林を復活させる社会的活動を行う。大東諸島の最高次の捕食者であるダイトウコノハズクが生息できる樹林を復活させるべく、村役場と意見交換の場を設け、講演会などを企画し島民にダイトウコノハズクが生息し続けることができる樹林地の保護育成が大東島諸島の持続的発展に欠くことができないものであることを伝えたい。