英語論文で見られる良くない表現
この文書では,大学院生が最初の英語論文を書く際にありがちな,良くない英語表現をまとめています.
- set up: 「落とし入れる,嵌める」という意味があるせいか,あまり使われないような気がする.
- then: 「次ぎに」くらいのつもりで使う例が多いが,厳密に時間的に後にあることにしか使えない.
- exist: 日本語は名詞主導の言語なので,「...(名詞)が存在する」という表現が多い.しかし,この表現は動詞主導の言語である英語では多くの場合にはまず使えない.特に「...という現象が存在する」とは全く言えない.動詞主導の英語ではoccurなどを使う(単純な置き換えではダメ)のが良さそうである.
- there is: 上と同じく there is variability などとはできない.
- could: could は仮定法過去すなわち,「...できたのにそうはしなかった」と紛らわしいので日本人は使用しない方が無難.例えば,You
could call me yesterday.と彼/彼女から言われたら,「あなたは昨日私に電話をかけることができた(能力を有していた).」という意味ではなく,「あなたは昨日わたしに電話をかけれたのに,かけてくれなかったじゃない!」のように多分に非難や残念な気持ちが入っている.
- 懸垂分詞:分詞節の主語が主節の主語に一致しなくてはならない.Considering smaller spatial scale of the 2nd mode, oceanic adjustment driven by surface wind is important. この場合,Considering …, we …と主節の主語はweとならなくてはならない.そうでなくては,considering
の主語と主節の主語が不一致となるためである.このように主節の主語と分詞節の意味上の主語とが一致しないことを,懸垂分詞と呼び,ほとんどの場合に避けなくてはならない.私が知る限り唯一の例外は,using
である.Using の場合,主節の主語は人でなくても良いようである(そういう用例が多数見られる).おそらく,using
は慣用句的に使われ意味上の主語の機能が失われているのであろうと推測している.
- 非制限的用法の関係代名詞節の前後にカンマ','が無い:関係代名詞には,制限的用法と非制限的用法の二つがある.制限的用法とは関係代名詞節がなくては文の意味が成り立たない場合で,例えば
We conduct a experiment that identify the response of the system to the
external forcing. では,We conduct an experiment. だけでは文として意味を成さないことが分かるだろう.一方非制限的用法の例は,We
examine the interannual variability of the Pacific Ocean, which is one
of the action of the center associated with El Nino. で,which 以下は付加的な情報を示しているだけであり,なくても文の主たる情報は伝わるのである.多くの場合制限的用法ではthatを,非制限的用法ではwhich
を用いる.まれにnative speaker に制限的用法でもwhich に直すように求められることがあるが,その理由は不明である.
- 文がAndかButから始まる.->And, But から始めるのは口語的なのでダメ.
- and で結ばれる前後の節の並列性が低い -> and以外を使うか,並列性を高める.
- 節の区切りにカンマがない.A is B and C is D. などでは,A is B, and C is D. と節(この場合は等位節)の前にカンマが必要.
- 式だけの行の末尾にカンマ','かピリオド'.'が無い.英語では式も文なので,カンマかピリオドが必要.
- 式だけの行の次の行がWhereから始まる:where が正しい.
- maximum amplitude -> maximal amplitude
- spectrum peak -> spectral peak
- 冠詞
- the が必須:the North Pacific, the Japan Sea, the North American continent, the Kuroshio
- the が付かない:North America, Eurasia
- in 1990s -> in the 1990s
- northern hemisphere → the Northern Hemisphere (NとHが大文字,theがつく)
- Northern and Southern Hemisphere -> Northern and Southern Hemispheres
- 段落の最初の文がインデントされていない:必ずインデントする.
- 文頭のGenerally: In general, が正しい.
- 文頭のParticularly, Especially, : In particular, が正しい.
- 文頭のAssociated with:ほとんどの場合,In association with が正しい.
- Fig. 1, 2 -> Figs. 1, 2
- Fig.1 -> Fig. 1: 英文では省略形を示す際にピリオドを置く.従ってピリオドの後に空白が無いと,その非省略形はFigure1という1単語になってしまう.
- Fig. 1(a) -> Fig. 1a
- 括弧の前に空白が無い -> 括弧の前には必ず空白をつける.
- 名詞の結合のし過ぎ:upper water temperature
grid data.名詞を2語つなげる使用はOK(grid
data, water temperature).3語になるとちょいと苦しい,場合によってはハイフンを使う方が良い,(例 sea-surface
temperature).
- firstly → first
- grid data → gridded data
- on the other hands → on the other hand (handが単数)
- 他動詞と自動詞
- relating issue → related issue (relate は他動詞で使う)
- 主語名詞 locates → 主語名詞 is located. (locate は位置させるという他動詞)
- ここで我々はどうこうした.のここでのHere → Now
- in mid-latitude → in mid-latitudes
- 前置詞
見延 庄士郎 , last modified 29, Dec, 2002
参考資料
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