論文解説





2010 年

Matsubara S., Takahashi T., Kimura A.P.

Epigenetic patterns at the mouse prolyl oligopeptidase gene locus suggest the CpG island in the gene body to be a novel regulator for gene expression

Gene 465: 17-29.

PubMed  HUSCAP

POP (prolyl oligopeptidase)遺伝子はこれまでに多くの生理機能を持つことがわかっていますが、その発現調節に関する報告はほとんどありませんでした。 今回はマウスを用いてPOP遺伝子の発現パターンを解析するとともに、その発現調節に関する解析も行いました。まずマウスの 組織におけるPOPの発現パターンを調べたところ、卵巣の顆粒膜細胞と胎盤の海綿状栄養膜(Fig. 2)および胚盤胞胚で強く発現していることが明らかになりました(Fig. 3)。次に、POP遺伝子の発現がエピジェネティックに調節されている可能性を検討するために、DNAメチル化パターンを解析しました。POP遺伝子座に は、遺伝子発現調節を担う可能性があるCGI (CpG island)と呼ばれる配列がプロモーター領域とエクソン15付近に存在することがわかり、それぞれCGI-1、CGI-2と名付 けました(Fig. 1)。これらのCGIのDNAメチル化パターンを解析した結果、CGI-2におけるCpGメチル化率がPOP発現の低い肝臓に比べて胚盤胞胚、胎盤、卵巣 顆粒膜細胞で低いことがわかりました(Fig. 4)。また、in vitroレポーター解析により、CGI-2はPOP遺伝子のプロモーター活性を上昇させるエンハンサー活性を示し、DNAメチル化によってそれが抑制さ れるこ ともわかりました(Fig. 5)。さらにもう1つのエピジェネティックな調節機構であるヒストン修飾パターンを解析したところ、卵巣顆粒膜細胞のCGI-2で転写活性化に関わる ヒストンH3アセチル化とヒストンH3K4メチル化のレベルが高いことが明らかになりました(Fig. 6)。以上の結果から、顆粒膜細胞においてCGI-2領域のクロマチン構造が開き、エンハンサーとして機能することによって転写活性を上昇させているとい う調節モデルが提唱できました(下図)。








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