論文解説





2014 年

Matsubara S., Kurihara M., and Kimura A.P.

A long non-coding RNA transcribed from conserved non-coding sequences contributes to the mouse prolyl oligopeptidase gene activation

The Journal of Biochemistry 155(4): 243-256.

PubMed  HUSCAP

プロリルオリゴペプチダーゼ(prolyl oligopeptidase, POP)は、さまざまな生理機能を持つセリンプロテアーゼであるが、その発現調節機構は十分に解析されていない。我々はマウスを用いてPOP遺伝子の調節 機構を研究しており、今回新たにlong noncoding RNA (lncRNA)が関わることを明らかにした。まず、マウスPOP遺伝子の上流と下流に存在する合計6箇所のconserved non-coding sequence (CNS)つまり種を超えて保存されている非コード配列を調べたところ、その5箇所からlncRNAが転写されていることがわかった(Fig. 1)。そのうちPOP遺伝子の発現と相関していたPOP遺伝子下流からのlncRNAについてクローニングを行ったところ、転写開始点の異なる2種類の全 長lncRNAが同定された(Fig. 2)。我々がlncPrep+96kbと名づけたこのlncRNAは、卵巣顆粒膜細胞と肝細胞由来のHepa1-6細胞において核内により多く存在してい た(Fig. 3)。これらの細胞でlncPrep+96kbをノックダウンしたところ、いずれもPOP mRNA量が40%程度減少したが、一方で過剰発現させた場合は顆粒膜細胞のみでPOP mRNA量の上昇が見られた(Fig. 4)。shRNAを安定的に発現させたHepa1-6細胞でPOP遺伝子座のヒストン修飾パターンが変化しなかったことから(Fig. 5)、ヒストンアセチル化以外の調節であると思われる。また、ホルモン処理したマウス卵巣の解析から、lncPrep+96kbはホルモンに応答すること がわかり、発情周期におけるPOP遺伝子の発現調節に関与する可能性も示唆された(Fig. 6)。同様なlncRNAの転写はヒトの精巣でも観察されたものの、その発現量はヒトPOP mRNAと必ずしも相関しておらず(Fig. 7)、ヒトPOP遺伝子の調節はマウスとは違うことが考えられる。以上の結果は、マウスPOP遺伝子の発現調節にlncRNAが関わることを示したもので あり、POP研究において非常に意義のある成果である。








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