ジャーナルクラブ

2019年度

20190606

杜担当

RdDM-independent de novo and heterochromatin DNA methylation by plant CMT and DNMT3 orthologs

Rafael Yaari, Aviva Katz, Katherine Domb, Keith D. Harris, Assaf Zemach & Nir Ohad

Nature Communications 10, Article number: 1613 (2019)

異なるDNAメチルトランスフェラーゼ(DNMT)によって触媒されるDNAメチル化は多くの真核生物における顕著なエピジェネティック修飾である。今まで、植物DNMTの機能解析が主にA. thalianaなどの被子植物に限られています。そこで、著者がP. patensを用いてPpDNMTのde novoメチル化及び維持型メチル化を研究し、植物におけるDNAメチル化の進化メカニズムを推論した。その結果、PpMETはCGサイトのメチル化を維持し、PpDNMT3sはCGとCHHサイトをde novoメチル化することができる。PpCMTによるCHGサイトのde novoメチル化は被子植物の CMTs もde novoメチル化能力を有する可能性を示唆している。さらにPpcmt のCHHメチル化はヘテロクロマチンに低くなり、ユークロマチンに増加する。またPpDRMs変異体の軽微なメチル化変化によってRdDM経路におけるメチル化がP. patensに弱いことを示唆している。以上のことから、著者は初期植物のde novoメチル化はDNMT3および/またはCMTに依存し、DRMとRdDM経路は植物進化に持続的に存在することを推論した。さらに特定のクロマチン領域をメチル化する能力がDRMsの進化においては重要な役割を果たし、DRMによるde novoメチル化活性の増強とCMT2によるヘテロクロマチンのCHHメチル化は、DNMT3が被子植物から消失の一因になりうる。

20190523

福田担当

Hypomethylated drm1 drm2 cmt3 mutant phenotype of Arabidopsis thaliana is related to auxin pathway impairment

Ivano Forgione, Magdalena Wołoszyńska, Marianna Pacenza, Adriana Chiappetta, Maria Greco, Fabrizio Araniti, Maria Rosa Abenavoli, Mieke Van Lijsebettens, Maria Beatrice Bitonti, Leonardo Bruno

Plant Science 280 (2019) 383-396

DNAメチル化はクロマチンリモデリングや遺伝子発現の制御に寄与しており、植物においては多様性や発達過程で重要な役割を担っている。著者はDNAメチル化酵素であるDRM1、DRM2、CMT3のtriple mutantであるdrm1 drm2 cmt3 (ddc) mutantで発達異常を発見した。根では重力屈性に従わない成長と主根の短小化が生じ、葉では面積の減少や葉のねじれなどが生じていた。また、胚では球状胚期や心臓型胚期において異常がみられた。これらの表現型がオーキシン応答経路のmutantのそれと似ていたため、ddc mutantでオーキシンの蓄積を解析した。その結果、ddc mutantの表現型とオーキシンの分布には相関性が見られたことから、DNAメチル化がオーキシン関連遺伝子の発現を制御していることが示唆された。実際にddc mutantの葉と根でオーキシン関連遺伝子の発現変動がみられ、そのうち発現上昇していた遺伝子をMethylated DNA immunoprecipitation-qPCRによってメチル化解析を行なったところ、YUCCA2という遺伝子のプロモーター領域において低メチル化が発見された。以上のことから、著者はDNAメチル化による直接的な遺伝子発現の調節が器官特異的に生じると考えている。

20190509

山田担当

Large-scale comparative epigenomics reveals hierarchical regulation of non-CG methylation in Arabidopsis

Yu Zhang, C. Jake Harris, Qikun Liu, Wanlu Liu, Israel Ausin, Yanping Long, Lidan Xiao, Li Feng, Xu Chen, Yubin Xie, Xinyuan Chen, Lingyu Zhan, Suhua Feng, Jingyi Jessica Li, Haifeng Wang, Jixian Zhai, and Steven E. Jacobsen

PNAS January 30, 2018 115 (5) E1069-E1074

植物においてDNAのシトシンメチル化は細胞機能を制御する上で重要な働きを担っている。Whole-Genome Bisulfite Sequence (WGBS)はDNAメチル化の状況をゲノムワイドに調査できる手法である。その有用性ゆえにシロイヌナズナでは広く用いられており、多くの研究者たちが様々なデータを生み出してきた。しかしそれらは実験条件、ライブラリー作成、バイオインフォマティクスの解析技術においてグループ毎に異なっており、これらを相互に解析するような手法は存在していなかった。筆者達はGEOデータベースにて公開されている503個ものシロイヌナズナのWGBSライブラリーのうち、54個のWTコントロール、260個のテストライブラリーの計314個を解析した。複数の独立したWTコントロールライブラリーとの比較を行なうことで、従来の手法よりも高い精度でDMRsを抽出することに成功した。さらに、統計学的手法によるライブラリーのクラスタリングを行い、様々なエピジェネティックな因子間の関係性を示している。

20190418

ピック担当

Genic C-Methylation in Soybean Is Associated with Gene Paralogs Relocated to Transposable Element-Rich Pericentromeres

El Baidouri M, Kim KD, Abernathy B, Li YH, Qiu LJ, Jackson SA.

Mol Plant. 2018 Mar 5;11(3):485-495

Most plants are polyploid due to whole-genome duplications (WGD) and can thus have duplicated genes. Following a WGD, paralogs are often fractionated (lost) and few duplicate pairs remain. Little attention has been paid to the role of DNA methylation in the functional divergence of paralogous genes. Using high-resolution methylation maps of accessions of domesticated and wild soybean, we show that in soybean, a recent paleopolyploid with many paralogs, DNA methylation likely contributed to the elimination of genetic redundancy of polyploidy-derived gene paralogs. Transcriptionally silenced paralogs exhibit particular genomic features as they are often associated with proximal transposable elements (TEs) and are preferentially located in pericentromeres, likely due to gene movement during evolution. Additionally, we provide evidence that gene methylation associated with proximal TEs is implicated in the divergence of expression profiles between orthologous genes of wild and domesticated soybean, and within populations.

 

2018年度

20190205

高井担当

Heritable Epigenomic Changes to the Maize Methylome Resulting from Tissue Culture

Zhaoxue Han, Peter A. Crisp, Scott Stelpflug, Shawn M. Kaeppler, Qing Li and Nathan M. Springer

Genetics, Vol. 209, 983–995

DNAのメチル化は遺伝子の整合性の維持や遺伝子発現の制御に働くことができる。ほとんどの場合では、DNAメチル化のパターンは極めて安定的に継承される。しかしながらDNAメチル化の変化は、組織培養を経るといくつかの遺伝子座で起こる可能性があり、体細胞変異を引き起こす。トウモロコシの組織培養から再分化した植物では、ゲノムの領域のいくらかのサブセットでDNAメチル化の変化が観察された。複数の組織培養系統で一貫して起こったDNAメチル化の変化が高い割合でホモに起こっていることから、いくつかの遺伝子座は組織培養中にメチル化の標的、あるいはメチル化の変化のホットスポットである可能性があり、そのためエピジェネティックな変化が現れていることが示唆された。組織培養後での一貫したDNAメチル化の変化は獲得型のものと損失型のものを含んでおり、CGやCHG、あるいはその2つのシトシンを持つ領域に作用している。植物カルスにおいて観察される組織培養誘導性の変化が、再分化当代の個体で見つかり、その多くが次の世代の子孫に継承されていた。

20180124

杜担当

Characterization of DCL4 missense alleles provides insights into its ability to process distinct classes of dsRNA substrates

Montavon T, Kwon Y, Zimmermann A, Hammann P, Vincent T, Cognat V, Bergdoll M, Michel F, Dunoyer P.

The Plant Journal (2018) 95, 204–218

Dicer またはDicer-like(DCL)タンパクはRNAサイレンシングにおいて重要な役割を果たしている。動物の中でDicerタンパクのPAZドメインはdsRNAの一端を固定することができます。DCL4は植物で最も機能が多いDCLタンパク質であり、この多様性の原因を理解するために、筆者らはそれぞれDCL4のHelicaseドメイン、PAZドメイン及びPAZの近隣サイトに変異をもつミスセンス変異体を用いて研究を行った。その結果、まずDCL4依存性sRNAを効率的に生成するために、Helicaseドメインの必要性を明らかにした。そして、各変異体がdsRNAと結合する能力はほとんど損なわないが、DCL4依存性sRNAの生成を特異的に損なうことがあきらかになった。しかし、この欠陥はDCL4の細胞内局在やDRB4との結合能力と関わらなかった。PAZドメインの変異により、RDR依存のdsRNA基質を処理する能力はあるが、分子内フォールドバック構造の処理には不十分であることが分かった。

20181218

竹平担当

Arabidopsis Serrate Coordinates Histone Methyltransferases ATXR5/6 and RNA Processing Factor RDR6 to Regulate Transposon Expression

Zeyang Ma, Claudia Castillo-González, Zhiye Wang, Di Sun, Xiaomei Hu, Xuefeng Shen, Magdalena E.Potok, Xiuren Zhang

Developmental Cell, Volume 45, Issue 6, 18 June 2018, Pages 769-784.e6

Serrate(SE)は、哺乳類のArs2のオルソログであり、植物におけるマイクロプロセッサーの必須成分としてmiRNA産生に関与することが知られている。SEが、エピジェネティックなsilencingの制御に関与するかどうか、また、どのように制御するかは、未だほとんど解明されていない。筆者らは本論文において、SEの新規パートナーとして、ヒストンメチル化酵素であるATXR5とATXR6を報告した。シロイヌナズナにおいてATXR5/6は、H3K27me1を蓄積させることにより、ヘテロクロマチン化を促進し、TEsを抑制し、そしてゲノムの安定性を調整する。SEはATXR5/6に制御されるTEs遺伝子座に結合し、これらの領域にH3K27me1を蓄積させる。さらに、in vitroにおいてSEはATXR5の酵素活性を直接増強する。予想外に、seの変異はatxr5atxr6変異体においてTEの再活性化とDNA  re-replicationを抑制するフェノタイプを示した。se-2/atxr5/atxr6 変異体においてTEの発現抑制は、RDR6が引き起こすRNA silencing に起因する。筆者らは、SEはRDR6が関与するTEの転写後にはたらくRNA silencing を阻害する一方で、ATXR5/6が関与するH3K27me1の修飾の蓄積を促進することを提唱した。従って、SEはTEの発現を微調整するために、H3K27me1の修飾なsilencingとRNA切断の機構の両方を調節している。

20181211

野沢担当

Cytosine methylation at CpCpG sites triggers accumulation of non-CpG methylation in gene bodies.

Zabet NR, Catoni M, Prischi F, Paszkowski J.

Nucleic Acids Research, Volume 45, Issue 7, 20 April 2017, Pages 3777–3784,

シトシンのメチル化は、転写の調節に関与するエピジェネティックな修飾であり、通常は転写抑制に関連する。哺乳類では、メチル化シトシンは主としてCpGに見られるが、植物においてはCpGメチル化、CpHpGメチル化、CpHpHメチル化が存在し、転移因子のサイレンシングに関与する。さらに、CpGメチル化は、活性遺伝子のcording領域に見られる。H3K9のヒストン脱メチル化酵素(IBM1)が存在しない場合、Genebodyがメチル化された遺伝子はNon-CpGメチル化を獲得する。特定のGenebodyがメチル化された遺伝子のみがIBM1が存在しない場合にNon-CpGメチル化を獲得する理由は明らかになっていない。著者らは、内側のシトシンがメチル化されている場合にのみ、CpCpG部位の外側のシトシンがメチル化され得るということを見出した。両方のシトシンにおいてメチル化されたCpCpG部位は、IBM1によって保護された遺伝子においてCpHpGメチル化の拡散を促進する。対照的に、CpCpG部位は、IBM1非依存性遺伝子においてメチル化されず、CpHpGメチル化の拡散を促進しない。これらの結果から内側のシトシンがメチル化されたCpCpG部位の存在がCpHpGメチル化を促進し、ibm1変異体においてIBM1が保護する遺伝子領域ではCpHpGメチル化を獲得しているとことが示された。

20181204

ピック担当

Chromosomal distribution of soybean retrotransposon SORE-1 suggests its recent preferential insertion into euchromatic regions

Kenta Nakashima , Jun Abe & Akira Kanazawa

Chromosome Res . 2018 Sep;26(3):199-210.

Retrotransposons constitute a large portion of plant genomes. The chromosomal distribution of a wide variety of retrotransposons has been analyzed using genome sequencing data in several plants, but the evolutionary profile of transposition has been characterized for a limited number of retrotransposon families. Here, we characterized 96 elements of the SORE-1 family of soybean retrotransposons using genome sequencing data. Insertion time of each SORE-1 element into the genome was estimated on the basis of sequence differences between the 5′ and 3′ long terminal repeats (LTRs). Combining this estimation with information on the chromosomal location of these elements, we found that the insertion of the existing SORE-1 into gene-rich chromosome arms occurred on average more recently than that into gene-poor pericentromeric regions. In addition, both the number of insertions and the proportion of insertions into chromosome arms profoundly increased after 1 million years ago. Solo LTRs were detected in these regions at a similar frequency, suggesting that elimination of SORE-1 via unequal homologous recombination was unbiased. Taken together, these results suggest the preference of a recent insertion of SORE-1 into chromosome arms comprising euchromatic regions. This notion is contrary to an earlier view deduced from an overall profiling of soybean retrotransposons and suggests that the pattern of chromosomal distribution can be more diverse than previously thought between different families of retrotransposons.

20180712

杜担当

Analysis of RDR1/RDR2/RDR6‐independent small RNAs in Arabidopsis thaliana improves MIRNA annotations and reveals unexplained types of short interfering RNA loci

Seth Polydore、 Michael J. Axtell

The Plant Journal(2018)94,1051–1063

植物のsRNAは遺伝子発見の転写後及び転写のサイレンシングを介して重要な生理的メカニズムを調節する。そしてphasiRNAやrasiRNAなどRNA依存性RNAポリメラーゼ(RDR)に依存するsRNAとヘアピン由来やmicroRNAなど非RDRに依存するsRNA、二つのカテゴリーに分類されます。当研究ではrdr1/2/6三重変異体を用いてsRNA-seqライブラリーを作製し、RDR1、2、または6の機能に依存していた以前注釈が付けられたmiRNA loci58個を見出し、注釈が付けられないloci91個がmiRNA lociと推定する。続いて、筆者たちはsRNAに対してゲノムワイドと発現差異解析を行いました。32859個lociが20〜24ntの範囲で主に読み取られた。そのうち、176個はrdr1/2/6三重変異体の中に発見量が特に変わらない、2個が上昇した。さらに、176個lociから38個非miRNAやヘアピン由来のsRNAを見つかり、そしてこれら38個のlociが今までまだ記載されていない生物発生機構を有し、かつタンパク質コード遺伝子の近傍に位置する。以上の結果から、、シロイヌナズナにおける1つ以上の新規なタイプのsRNAが存在することを示唆している。

20180705

高井担当

WIND1 promotes shoot regeneration through transcriptional activation of ENHANCER OF SHOOT REGENERATION1 in Arabidopsis

Akira Iwase, Hirofumi Harashima, Momoko Ikeuchi, Bart Rymen, Mariko Ohnuma, Shinichiro Komaki, Kengo Morohashi, Tetsuya Kurata, Masaru Nakata, Masaru Ohme-Takagi, Erich Grotewold, Keiko Sugimoto

Plant Cell. 2017 Jan;29(1):54-69

植物と動物には傷害に対して適当な応答ができるが、植物は特に優れた傷害応答ができる。植物は体に傷を受けた時、カルスという未分化の細胞塊を形成し、元の器官を再生することがある。傷害によって器官再生が引き起こされることが知られていたが、機構まではわかっていなかった。先行研究によりWIND1が細胞のリプログラミングの中心であることが示唆され、さらに当研究ではWIND1はESR1遺伝子を活性化させ、カルス形成と茎葉の再分化を促進していることが明らかになった。esr1変異体ではカルス形成や再分化の抑制が起こったことから、ESR1は細胞のリプログラミングに必要であることが示唆された。WIND1はESR1のVWRE-like モチーフに結合し転写を誘導でき、WIND1-SRDX 植物ではESR1の発現が減少した。また、ESR1の過剰発現はWIND1-SRDXによるカルス形成阻害が相補するなど、ESR1はWIND1の下流に働く因子であることがわかった。以上のことから、傷害応答における茎葉再分化につながる重要な分子機構を明らかとなった。

20180628

竹平担当

Transcriptional control and exploitation of an immune‐responsive family of plant retrotransposons

Jérôme Zervudacki, Agnès Yu, Delase Amesefe, Jingyu Wang, Jan Drouaud

植物におけるTEの可動化は遺伝子発現に影響を与える制御モジュールを提供することから、進化と適応の原動力として知られてきた。本研究ではLTR::GUS融合遺伝子形質転換体を用いた実験から、ATCOPIA93はシロイヌナズナの病原体防御の間に免疫応答遺伝子のように挙動しうることを示した。ATCOPIA93のコピーの一つであるEVDに対する検証から、このコピーはDNAメチル化とPcG関連の働きによるH3H27me3の両方によって抑制されていることが示唆された。シロイヌナズナのゲノム中でATCOPIA93はFull lengthのコピーの他にsoloLTRとしても存在する。Full lengthのコピーとは違い、soloLTRにはDNAメチル化およびH3H27me3のマークが欠けており、そのうちの一つのコピーでは隣接する免疫応答遺伝子RPP4の被細菌ストレス時の発現に必要であることが示唆された。このように植物はCOPIA93についてEVDの発現と転移の可能性を抑制する一方で、RPP4の発現活性化に利用していると考えられる。

20180614

野沢担当

Locus-specific control of the de novo DNA methylation pathway in Arabidopsis by the CLASSY family

Ming Zhou, Ana Marie S. Palanca & Julie A. Law

Nature Genetics 50pages865–873 (2018)

DNAメチル化は、遺伝子制御、トランスポゾンのサイレンシングおよびインプリンティングに必須である。特定のDNAメチル化パターンの生成はこれらのプロセスにとって重要であるが、メチル化が個々の遺伝子座でどのように調節されるかは不明のままである。ここでは、4つの推定クロマチンリモデリング因子、CLASSY(CLSY)ファミリーが、Arabidopsis thalianaにおけるDNAメチル化の座位特異的および全体的制御の両方に必要であることを示す。メカニズムとして、これらの因子はRdDMを誘導する24 塩基の低分子干渉RNA(24nt-siRNA)の産生を制御するRNAポリメラーゼ-IV(Pol-IV)と関連して作用する。個別に、CLSYはPol-IV-クロマチン会合および数千の異なる遺伝子座での24nt-siRNA産生を制御し、それらは実質的にすべての24nt-siRNAを制御している。この制御は関与するCLSYに依存して、DNAメチル化の遺伝子座特異的制御を促進するため、異なる抑制性クロマチン修飾に依存している。植物と哺乳動物のメチル化系の間で保存されているとすれば、類似の経路は広範囲の生物において作用する可能性がある。

20180607

ピック担当

A genome-wide transcriptome and translatome analysis of Arabidopsis transposons identifies a unique and conserved genome expression strategy for Ty1/Copia retroelements

Stefan Oberlin, Alexis Sarazin, Clement Chevalier, Olivier Voinnet, and Arturo Mari-Ordonez

Genome Res. 2017 Aug 7: 27:1–14

Retroelements, the prevalent class of plant transposons, have major impacts on host genome integrity and evolution. They produce multiple proteins from highly compact genomes and, similar to viruses, must have evolved original strategies to optimize gene expression, although this aspect has been seldom investigated thus far. Here, we have established a high-res- olution transcriptome/translatome map for the near-entirety of Arabidopsis thaliana transposons, using two distinct DNA methylation mutants in which transposon expression is broadly de-repressed. The value of this map to study potentially intact and transcriptionally active transposons in A. thaliana is illustrated by our comprehensive analysis of the cotranscrip- tional and translational features of Ty1/Copia elements, a family of young and active retroelements in plant genomes, and how such features impact their biology. Genome-wide transcript profiling revealed a unique and widely conserved alterna- tive splicing event coupled to premature termination that allows for the synthesis of a short subgenomic RNA solely ded- icated to production of the GAG structural protein and that preferentially associates with polysomes for efficient translation. Mutations engineered in a transgenic version of the Arabidopsis EVD Ty1/Copia element further show how alter- native splicing is crucial for the appropriate coordination of full-length and subgenomic RNA transcription. We propose that this hitherto undescribed genome expression strategy, conserved among plant Ty1/Copia elements, enables an excess of structural versus catalytic components, mandatory for mobilization.

20180531

杜担当

Evolution of sequence-specific anti-silencing systems in Arabidopsis

Aoi Hosaka, Raku Saito, Kazuya Takashima, Taku Sasaki, Yu Fu, Akira Kawabe, Tasuku Ito, Atsushi Toyoda, Asao Fujiyama, Yoshiaki Tarutani & Tetsuji Kakutani

Nature Communications volume 8, Article number: 2161 (2017)

トランスポゾンなどの寄生配列と宿主との競争は遺伝子コントロールシステム進化の一つの要因である。トランスポゾンは潜在的な危険性があるので、真核生物はこれに対してエピジェネティックな手段で沈黙することができ、トランスポゾンがこの沈黙を抵抗する方法は、今まで知ることがまだ少ない。ここに、筆者らはHiun(Hi)という普段はDNAメチル化により沈黙されるが、沈黙に対して自身でエンコーディングされたVANC21タンパク質で抵抗する活性を持っているトランスポゾンを発見した。そして、他のトランスポゾンに影響を与えない。さらに、HiはトランスポゾンファミリーVANDAL21に属し、DNA脱メチル化は他のVANDALファミリーメンバーに影響を与えない。そこで、筆者らはVANCオープンリーディングフレームのみ存在している変異体及びそのノンセンス変異体を用いて、VANC21タンパク質はDNA脱メチル化効果を十分に誘導することができる。ChIP-seq及びEMSAを行い、VANC21は配列のノンコーディング領域と結合することがわかった。結合位置の配列の研究によってタンデムリピートはVANCタンパク質の特異性の原因と思われ、VANCタンパク質は短いDNAモーチフと特異的に結合することがわかった、モーチフはタンデムリピートの形成により集まり進化する。さらに、筆者らは他のVANDALファミリーメンバーに存在するVANC-likeタンパク質、特にVANC6に対して同じ実験を行い、VANC6がVANC21と似るファンクションをもつが、違い特異性を示した。以上の結果から、VANDALトランスポゾンはVANCタンパク質及びモチーフとの共通進化により、エピジェネティックな沈黙から逃げ出し、かつ宿主に最小限のダメージを与えることが示唆された。

20180517

高井担当

ZmCCT9 enhances adaption to higher latitudes

Cheng Huang, Huayue Sun, Dingyi Xu, Qiuyue Chen, Yameng Liang, Xufeng Wang, Guanghui Xu, Jinge Tian, Chenglong Wang, Dan Li, Lishuan Wu, Xiaohong Yang, Weiwei Jin, John F. Doebley, and Feng Tian

メキシコ南西の熱帯を起源にしてトウモロコシはアメリカの幅広い緯度の地域に分布しており、原種のテオシントと比べ長日条件で早く開花できる。この特徴は植物が簡単に緯度を超えた分布ができないという特徴に反している。トウモロコシがどのようにして緯度を超えた分布をできるようになったのかは知られていない。そこで、筆者らはPositional cloning と Association mapping を行い、開花時期に関わる量的形質座をZmCCT9の57kb上流のHarbinger-like transposable element に定めた。このHarbinger-like element は長日条件でZmCCT9の発現を抑制しており、その結果花成が早まっていることがわかった。CRISPR/Cas9によるZmCCT9のノックアウトによっても長日条件で花成が早まることからZmCCT9は日周的に発現が制御されており、その下流のフロリゲンであるZCN8の発現を抑制することで花成を遅らせていることが明らかになった。以上の結果から、ゲノムでの豊富なトランスポゾンのおかげでトウモロコシが90度以上にわたる適応をできたことが示唆された。

20180510

竹平担当

A Mutation in Plant-Specific SWI2/SNF2-Like Chromatin-Remodeling Proteins, DRD1 and DDM1, Delays Leaf Senescence in Arabidopsis thaliana

Eun Ju Cho, Seung Hee Choi, Ji Hong Kim, Ji Eun Kim, Min Hee Lee, Byung Yeoup Chung, Hye Ryun Woo, Jin-Hong Kim

PLoS One. 2016; 11(1): e0146826

葉の老化は葉の発達の最終ステージであり、様々な内的・外的要因に関連する経路が複雑に相互作用しあって制御されている。老化を制御しているのは主に転写因子であることが知られている。同定されている800以上の老化関連遺伝子遺伝子のうち100以上の遺伝子は転写因子である。植物特異的なSWI2/SNF2クロマチンリモデリングタンパク質ファミリーに属するDRD1の変異体であるdrd1-6において、葉の老化遅延が観察された。暗処理による葉の老化の誘導(DIS)を行い野生型とdrd1-6における光合成活性やクロロフィル・タンパク質の含有量等を比較した結果、野生型で有意にそれらの低下が早く、DRD1の変異は、光合成色素やタンパク質の分解に影響を与えていることが示唆された。また、DIS時の遺伝子発現を比較したところ、WTとdrd1-6では様々な遺伝子の発現が変化していた。DRD1の変異は、老化進行中のエピジェネティックな修飾変化に影響を与え、様々な老化関連遺伝子の発現に変化が生じている可能性が示唆された。DRD1ノックダウン変異体であるdrd1-pでは葉の老化遅延が観察されなかったのに対して、SWI2/SNF2ファミリーであるDDM1のヘリカーゼドメインが破壊されているddm1-2変異体では葉の老化遅延が観察された。このことから葉の老化の制御には、SWI2/SNF2クロマチンリモデリングタンパク質のヘリカーゼドメインが重要であることが示唆された。

20180426

野沢担当

RNA-directed DNA methylation involves co-transcriptional small-RNA-guided slicing of polymerase V transcripts in Arabidopsis

Wanlu Liu, Sascha H. Duttke , Jonathan Hetzel, Martin Groth, Suhua Feng, Javier Gallego-Bartolome, Zhenhui Zhong, Hsuan Yu Kuo, Zonghua Wang, Jixian Zhai, Joanne Chory and Steven E. Jacobsen

Nat Plants. 2018 Mar;4(3):181-188

植物において、RNA-directed DNA methylation (RdDM)は、ARGONAUTE 4 (AGO4)に結合し、サイレンシングするゲノム領域を標的とする24ヌクレオチドの低分子干渉RNA(siRNA)を必要とする。 RdDMはまた、AGO4-siRNA複合体は足場としてRNAポリメレースV(Pol V)によって転写されるnon-coding RNAを必要とする。筆者らは、Pol V新生転写産物をゲノムワイドで捕捉するためのglobal nuclear run-on (GRO) assay という手法を用いた。その結果、Pol V 転写産物の5’末端+10ポジションに共通のウラシル(U)を含むPol V RNA独特の特徴を明らかにした。このウラシルは、多くのAGO4結合24-nt siRNAに見出される5 ‘末端のアデニンに相補的であり、siRNA欠損突然変異体およびago4/6/9三重変異体ではこれらの特徴が消失した。これらのことからPol V転写産物5’末端の+10UがsiRNAを媒介した切断によるものであることが示唆された。またago4/6/9三重変異体における野生型AGO4の発現はPol V転写物のスライスを回復することができたが、触媒的に不活性なAGO4突然変異体はスライス欠陥を補填しなかった。著者らはまた、Pol V転写産物の切断は機能が十分に理解されていない伸長因子であるSUPPRESSOR OF TY INSERTION 5-LIKE(SPT5L)を必要とすることも見出した。これらの結果は、多くの真核生物において保存されているプロセスである、RNAを媒介した転写抑制におけるPol V転写断片の重要性を強調している。

20180419

ピック担当

Regulation of rice root development by a retrotransposon acting as a microRNA sponge

Jungnam Cho, Jerzy Paszkowski

eLife. 2017 Aug; 6: e30038.

It is well documented that transposable elements (TEs) can regulate the expression of neighbouring genes. However, their ability to act in trans and influence ectopic loci has been reported rarely. We searched in rice transcriptomes for tissue-specific expression of TEs and found them to be regulated developmentally. They often shared sequence homology with co-expressed genes and contained potential microRNA-binding sites, which suggested possible contributions to gene regulation. In fact, we have identified a retrotransposon that is highly transcribed in roots and whose spliced transcript constitutes a target mimic for miR171. miR171 destabilizes mRNAs encoding the root-specific family of SCARECROW-Like transcription factors. We demonstrate that retrotransposon-derived transcripts act as decoys for miR171, triggering its degradation and thus results in the root-specific accumulation of SCARECROW-Like mRNAs. Such transposon-mediated post-transcriptional control of miR171 levels is conserved in diverse rice species.

 

2017年度

20180115

竹平担当

Distinct phases of Polycomb silencing to hold epigenetic memory of cold in Arabidopsis

HongchunYang, Scott Berry, Tjelvar S.G.Olsson, Matthew Hartley, Martin Howard, Caroline Dean

Science 10.1126/science.aan1121 (2017).

シロイヌナズナの低温誘導性のエピジェネティックなFLC抑制は、ポリコーム複合体が主となり行っており、局所的なH3K27me3の核形成と、H3K27me3のgene bodyへの伝播の2段階に分かれているということが報告されている。それぞれの機構にはどのようなタンパク質がどのように関わるかを、変異体、形質転換体を用いて発現解析、ChIP、イメージングなどにより調査した。低温処理後速やかに開始されるH3K27me3の核形成は、トリガーとなるVIN3、PRC2のサブユニットであるVRN2、H3K27me3の保持を行うVRN5によって制御されている。低温処理から数日後に開始されるH3K27me3のgene bodyへの伝播は、FLCの長期サイレンシングに関与しており、LHP1がH3K27me3に結合して核形成部位を安定化し、CLF がPRC2のサブユニットとしてメチル化の伝播を行うことによって進められている。

20171225

林担当

Developmental Restriction of Retrotransposition Activated in Arabidopsis by Environmental Stress

Gaubert H, Sanchez DH, Drost HG, Paszkowski J

Genetics. 2017 Oct; 207(2): 813–821.

トランスポゾンの転移は、過去さまざまなタイミングで起こり、宿主の染色体構造や遺伝子発現を制御することが知られているが、その新しい挿入のバランスが保たれているのかはまだわかっていない。筆者らは熱活性化型トランスポゾンであるOnsenを用いて、転移や新規挿入の次世代への継承がどのように制御されているのかを調べた。はじめに、相互交配によって雄または雌の生殖細胞系列でOnsenの転移に対する許容性が異なるのかどうかを確かめた。この結果、雄・雌でちがいがないことがわかった。続いて、花の位置による制御を調べたところ、一番発達の早い花と遅い花において、バンドが全く異なるもの(4/5)バンドが同じパターンのもの(1/5)が見られた。この二つのパターンから、Onsenの転移を許可する仕組みは、“花特異的”または”花ができる前”の両方を含む制御が働いていると考えられる。また、これらの二つの制御は同時に働くことはなく、ひとつが起こった場合もうひとつを阻害する。このことによって、子孫に渡される一つの生殖系列のみが次世代に継承される。

20171214

高井担当

Transcriptional Regulation of the Ambient Temperature Response by H2A.Z Nucleosomes and HSF1 Transcription Factors in Arabidopsis

Sandra Cortijo, Varodom Charoensawan, Anna Brestovitsky, Ruth Buning, Charles Ravarani, Daniela Rhodes, John van Noort, Katja E. Jaeger and Philip A. Wigge

Mol Plant. 2017 Oct 9;10(10):1258-1273.

環境温度は植物において分布、やその範囲、生物季節学に影響する。真核生物では熱ショックに対する応答に重要な転写因子であるHSFsは、多くの遺伝子の発現を上昇させる。HSFsが熱ストレスにおいて中心的な役割を持つことが分かっている一方、外界温度に対する役割が良く知られていない。以前の研究から、ヒストンタンパク質の一つであるH2A.Zのヌクレオソームへの取り込みが出来ない変異体ではHSP70の発現が多くなるなどの表現型がみられるという。H2A.Zの状態も遺伝子の発現に影響することがわかっていたものの、H2A.Zは直接温度に応答するのか、遺伝子の発現しやすさを変えるのかわかっていなかった。本論文では、ゲノムワイドなデータセットを用いた解析によってヌクレオソームと転写因子の動態を調査することでトランスクリプトームの変化を調べている。筆者らは、日中の外界温度における応答は、目的の遺伝子に素早くリクルートされるHSFA1の転写因子に依存的であることを発見した。さらにHSFA1の変異体では、高温状態でも標的遺伝子でH2A.Zが減少しないこともわかった。最後に筆者らはHSFA1 転写因子やH2A.Z ヌクレオソームの転写応答システムは、閾値温度を超えることで活性化されることを示唆した。

20171211

ピック担当

Inhibition of RNA polymerase II allows controlled mobilisation of retrotransposons for plant breeding

Michael Thieme, Sophie Lanciano, Sandrine Balzergue, Nicolas Daccord, Marie Mirouze and Etienne Bucher

Genome Biology. 2017 July; 18:134

Retrotransposons play a central role in plant evolution and could be a powerful endogenous source of genetic and epigenetic variability for crop breeding. To ensure genome integrity several silencing mechanisms have evolved to repress retrotransposon mobility. Even though retrotransposons fully depend on transcriptional activity of the host RNA polymerase II (Pol II) for their mobility, it was so far unclear whether Pol II is directly involved in repressing their activity. Here they show that plants defective in Pol II activity lose DNA methylation at repeat sequences and produce more extrachromosomal retrotransposon DNA upon stress in Arabidopsis and rice. They demonstrate that combined inhibition of both DNA methylation and Pol II activity leads to a strong stress-dependent mobilization of the heat responsive ONSEN retrotransposon in Arabidopsis seedlings. The progenies of these treated plants contain up to 75 new ONSEN insertions in their genome which are stably inherited over three generations of selfing. Repeated application of heat stress in progeny plants containing increased numbers of ONSEN copies does not result in increased activation of this transposon compared to control lines. Progenies with additional ONSEN copies show a broad panel of environment-dependent phenotypic diversity. In conclusion, they demonstrate that Pol II acts at the root of transposon silencing. This is important because it suggests that Pol II can regulate the speed of plant evolution by fine-tuning the amplitude of transposon mobility. Their findings show that it is now possible to study induced transposon bursts in plants and unlock their use to induce epigenetic and genetic diversity for crop breeding.

20171106

野沢担当

The developmental regulator PKL is required to maintain correct DNA methylation patterns at RNA-directed DNA methylation loci

Rong Yang, Zhimin Zheng, Qing Chen, Lan Yang, Huan Huang, Daisuke Miki, Wenwu Wu, Liang Zeng, Jun Liu, Jin-Xing Zhou, Joe Ogas, Jian-Kang Zhu, Xin-Jian He and Heng Zhang

Genome Biology 18:103 2017

ATP-dependent chromatin remodeling factorsのchromodomain helicase DNA-binding familyは真核生物の成長や発達に重要な働きを担っている。これらは特殊な転写因子によってリクルートされ、発達に重要な遺伝子の発現を制御している。著者たちは順遺伝学な解析からトランスジェニックなRD29Aプロモーターの転写抑制を促進する因子として、植物の発達に関わるPKLを同定した。PKLの変異はDNAメチル化の変化を引き起した。また、DNAメチル化が変化する領域はRdDMの標的になる領域が大半を占めていた。pkl変異体条件下では少数のトランスポゾンや遺伝子の抑制が外れたが、全体的には、 PKL欠損によるDNAメチル化の低下は抑制を解除するには不十分であった。またpkl変異体条件下でのDNAメチル化の変化は24塩基のsiRNAレベルとの関係性が見られ、加えてPolV由来転写産物の蓄積やPolVによるヌクレオソームの安定化にはPKLが必要とされる知見が得られた。これらのことから、PolV関連機能はpkl変異体において損なわれることが示唆された。

20171030

竹平担当

Transgenerational phenotypic and epigenetic changes in response to heat stress in Arabidopsis thaliana

Migicovsky, Youli Yao, and Igor Kovalchuk

Plant signaling & Behavior 9, e27971; 2014

植物が熱ストレスにさらされると引き起こされる生理学的・エピジェネティックな変化は子孫にも伝えられているかもしれない。ストレスが植物に及ぼす生理学的な変化、また分子の変化について調べるために、野生型とDicer-like変異体であるdcl2dcl3dcl4、それぞれの植物体について、フェノタイプと分子レベルでの比較を行った。熱ストレスを受けた植物の子では、数は少ないが大きな葉をつけ、花芽形成が早くなった。また、熱誘導性トランスポゾンの発現も高くなった。当代での熱ストレスによって、ゲノム全体のメチル化が減少した。熱ストレスを受けた植物の子では、HSFA2の発現が上昇し、MSH2ROS1、いくつかのSUVH遺伝子の発現は低下していた。このような遺伝子の発現は、ヒストン上の修飾について、促進マーカーに正に相関し、抑制マーカーに不に相関した。dcl変異体では、これらの変化が一部不十分であった。

20171016

林担当

Full-length autonomous transposable elements are preferentially targeted by expression-dependent forms of RNA-directed DNA methylation

Kaushik Panda, Lexiang Ji, Drexel A. Neumann, Josquin Daron, Robert J. Schmitz and R. Keith Slotkin

Genome Biology 2016 17:170

トランスポゾンの制御機構のひとつとして知られるRNA directed DNA methylation (RdDM) pathwayには、いくつかの機構が存在することが知られている。筆者らは、TEが抑制された状態であるTE-silent contextと、ddm1 backgroundでTEが活性化しているTE-active contextの二つの状態に着目し、各RdDMで制御されるTEの解析を行なった。その結果、まず、新たな経路としてDCL3-RdDM経路が見つかった。また、RdDMの特異性はTEの長さや構造に規定されることが示唆された。PolⅣ-RdDMは特に短いTEに対してはたらき、DCL3-RdDMは内部領域の欠損のあるTE mRNA に対してはたらき、RDR6-RdDMはfull-lenfthで、かつ自律的なTE mRNAに対して働く。これらの制御はTe-silentでは見られず、TE-activeな状態で見られた。この、TE-activeな状態におけるRDR6-RdDMによるfull-lengthのTEの制御は、TE-activeな状態ではfull-length TE mRNAの別部位での切断が起こり、それが特異的な二次的siRNAの産生を促進し、その結果RDR6-RdDMが引き起こされたためだと考えられる。

20171011

高井担当

Hyperosmotic stress memory in Arabidopsis is mediated by distinct epigenetically labile sites in the genome and is restricted in the male germline by DNA glycosylase activity

Anjar Wibowo, Claude Becker, Gianpiero Marconi, Julius Durr, Jonathan Price, Jorg Hagmann, Ranjith Papareddy, Hadi Putra, Jorge Kageyama, Jorg Becker, Detlef Weigel, Jose Gutierrez-Marcos

eLife 2016 DOI: 10.7554/eLife.13546

植物における短期間の環境適応はエピジェネティックな修飾による遺伝子発現の変化によってもたらされる。この修飾は環境ストレスによって誘発され、ヒストンやシトシン(特にTEsのなか)のメチル化である。筆者らは浸透圧ストレスを環境ストレスとして扱い、高浸透圧状態が連続している場合にのみメチル化状態が後代に継承されることや、メチル化されている領域はばらばらであるということを発見した。さらに、データベースを用いた解析から浸透圧以外のストレス(本文では寒さ)によって誘発されるメチル化は、浸透圧によるメチル化領域とは異なる場所で起こることもわかった。以上のように新たに獲得したメチル化が後代に継承される確率は性別によって差があるらしい。雄親の生殖細胞ではDEMETER DNA グリコシラーゼが働きメチル化の除去が行われるため、たとえ雄親がストレスを感じても、その子孫は適応的な表現型を見せる訳ではない。MYB20やCNI1遺伝子の近くにあるストレス応答性のメチル化領域の研究では、long non-coding RNA による長距離制御も判明した。筆者らは短期間における環境適応はDNAメチル化機構によって変化した遺伝子発現が子孫に伝わることで引き起こされるものだとした。

20171006

Pik担当

Transposable elements (TEs) contribute to stress-related long intergenic noncoding RNAs in plants

Dong Wang, Zhipeng Qu, Lan Yang, Qingzhu Zhang, Zhi-Hong Liu, Trung Do, David L. Adelson, Zhen-Yu Wang, Iain Searle and Jian-Kang Zhu

Plant J. 2017 Jan; 90: 133–146

Noncoding RNAs have been extensively described in plant and animal transcriptomes by using high- throughput sequencing technology. Of these noncoding RNAs, a growing number of long intergenic non- coding RNAs (lincRNAs) have been described in multicellular organisms, however the origins and func- tions of many lincRNAs remain to be explored. In many eukaryotic genomes, transposable elements (TEs) are widely distributed and often account for large fractions of plant and animal genomes yet the contribution of TEs to lincRNAs is largely unknown. By using strand-specific RNA-sequencing, we pro- filed the expression patterns of lincRNAs in Arabidopsis, rice and maize, and identified 47 611 and 398 TE-associated lincRNAs (TE-lincRNAs), respectively. TE-lincRNAs were more often derived from retrotrans- posons than DNA transposons and as retrotransposon copy number in both rice and maize genomes so did TE-lincRNAs. We validated the expression of these TE-lincRNAs by strand-specific RT-PCR and also demonstrated tissue-specific transcription and stress-induced TE-lincRNAs either after salt, abscisic acid (ABA) or cold treatments. For Arabidopsis TE-lincRNA11195, mutants had reduced sensitivity to ABA as demonstrated by longer roots and higher shoot biomass when compared to wild-type. Finally, by alter- ing the chromatin state in the Arabidopsis chromatin remodelling mutant ddm1, unique lincRNAs includ- ing TE-lincRNAs were generated from the preceding untranscribed regions and interestingly inherited in a wild-type background in subsequent generations. Our findings not only demonstrate that TE-associated lincRNAs play important roles in plant abiotic stress responses but lincRNAs and TE-lincRNAs might act as an adaptive reservoir in eukaryotes.

20170817

野沢担当

Histone acetyltransferase GCN5 is essential for heat stress-responsive gene activation and thermotolerance in Arabidopsis.

Hu Z, Song N, Zheng M, Liu X, Liu Z, Xing J, Ma J, Guo W, Yao Y, Peng H, Xin M, Zhou DX, Ni Z, Sun Q

Plant J. 2015 Dec;84(6):1178-91.

植物は至適温度を超える温度にさらされると重大な生長遅延や発達遅延が起こる。ここでは、シロイヌナズナヒストンアセチルトランスフェラーゼGCN5の機能喪失が熱耐性に重大な欠陥をもたらし、熱応答遺伝子の転写活性化を著しく損なうことが示された。特に、熱活性型転写因子HSFA2およびHSFA3、Multiprotein Bridging Factor 1c(MBF1c)およびUV-HYPERSENSITIVE 6(UVH6)のようないくつかの重要な調節因子の発現は、野生型と比較して熱ストレス下のgcn5変異体において下方制御されることが明らかになった。クロマチン免疫沈降法より、GCN5タンパク質が、HSFA3およびUVH6遺伝子のプロモーター領域でエンリッチしており、GCN5がHSF3およびUVH6活性化に関与するH3K9およびH3K14アセチル化を促進することを示された。一方でHSFA2およびMBF1cではこれらの傾向は観察されなかった。さらに、gcn5変異体バックグラウンドでのUVH6の発現は、熱耐性を部分的に回復させることが明らかになった。これらの結果から、GCN5がシロイヌナズナにおける多様な調節を介して熱耐性の維持に重要な役割を果たしていることが示めされた。さらに、小麦TaGCN5遺伝子を導入すると、シロイヌナズナgcn5変異体植物における熱耐性が回復した。これにより、GCN5を介した熱耐性がシロイヌナズナとコムギとの間で保存されている可能性を示唆された

20170803

竹平担当

Epigenetic Regulation of Vegetative Phase Change in Arabidopsis

MingliXu,TieqiangHu, MichaelR.Smith,and R.Scott

The Plant Cell, Vol. 28: 28–41, January 2016.

植物の成長段階の変化は、miR156のレベルの低下によって制御されている。miR156の時間的な発現の低下の制御に関する分子メカニズムは、今まで解明されていなかった。シロイヌナズナのシュートに存在するほとんどのmiR156は、MIR156AとMIR156Cによって作られている。筆者らは、成長段階の変化の最中のMIR156A/MIR156Cの発現の変化は、ヒストンH3の27番リジンにおけるトリメチル化(H3K27me3)レベルの上昇が関係しているという仮定の下研究を行った。結果、以下に示すようなメカニズムにより、植物の成長段階の変化が制御されているだろうということが明らかになった。MIR156A/MIR156CにおけるH3K27me3の増加には、これらの遺伝子とPRC2複合体の結合力の増加が関連しており、この反応はSWINGER(SWN)とCURLY LEAF(CLF)によって重複して媒介されている。PICKLE(PKL)は、MIR156A/MIR156Cのヌクレオソームを+1位に安定させ、H3K27acのレベルを低下させることにより、この遺伝子へのH3K27me3を促進する。ただし、PKLはH3K27me3についての時間的な制御には関わっていない。

20170720

林担当

DNA sequence properties that predict susceptibility to epiallelic switching

Marco Catoni, Jayne Griffiths, Claude Becker, Nicolae Radu Zabet1, Carlos Bayon, Mélanie Dapp, Michal Lieberman-Lazarovich,Detlef Weigel & Jerzy Paszkowski.

EMBO J. 2017 Mar 1;36(5):617-628.

Transgenerational epigenetic inheritanceは、植物でよく知られているが、どのようにエピアレルの形成が制御されているのかは今まで明らかになっていなかった。筆者らは、DNAの配列的特徴が、(1) 安定的なエピアレルを形成する (2)再メチル化される という2つのエピジェネティックな制御タイプを決め、その特徴によってどちらのタイプであるか予測できると仮定し、その特徴を調べた。その結果、(1)CG密度 (2)配列の反復性 の2つの要素が、世代を越えるエピジェネティックな継承のタイプを決める重要な要素であることがわかった。CGメチル化が低く、反復性が高い配列では再メチル化が起こりやすい。また、この特徴は、自然界でのシロイヌナズナ継承集団や、epiRILs, イネでも同じようにエピジェネティックな継承のタイプを予測できる。

20170629

高井担当

Arabidopsis DNA polymerase recruits components of Polycomb repressor complex to mediate epigenetic gene silencing

Iv´an del Olmo, Juan A. L´opez, Jes´us V´azquez, C´ecile Raynaud, Manuel Pi˜neiro1 and Jos´e A. Jarillo

Nucleic Acids Res. 2016 Jul 8;44(12):5597-614.

植物細胞分裂時期におけるDNA複製では、エピジェネティックな修飾の維持機構が働いている。この修飾は植物体での器官形成に重要であり、DNAのメチル化、ヒストンのメチル化やアセチル化などが知られている。Arabidopsis thalianaではESD7という遺伝子がDNAポリメラーゼεの触媒サブユニットをコードしており、ESD7はDNA複製でのラギング鎖の合成に関わっているという。この遺伝子に変異が起こると、早花成を含む様々な表現型を示すらしい。このような形質的な特徴に着目し、筆者らはシロイヌナズナのESD7や花成の制御に関わるPRC2であるEMF2、CLF遺伝子の変異体を用いて、ESD7がPRC2を標的遺伝子にリクルートする方法を調査している。以上の調査の結果から、ESD7はそのC末端とRRCタンパク質のC末端が相互作用していることや、ESD7がH3K9me3の維持に関わっていることが分かった。さらに、プロテオミクス解析からはESD7がPRC2以外の様々なタンパク質と相互作用という結果も得られている。筆者らは遺伝子修飾の維持機構について新たな見解をもたらしたと結論づけ、ESD7によるPRC2のリクルートによる複合体形成はいつおこるのか等の研究も必要だとまとめた。

20170511

Pik担当

Epigenetic regulation of antagonistic receptors confers rice blast resistance with yield balance

Yiwen Deng, Keran Zhai, Zhen Xie, Dongyong Yang, Xudong Zhu, Junzhong Liu, Xin Wang, Peng Qin, Yuanzhu Yang, Guomin Zhang, Qun Li, Jianfu Zhang, Shuangqing Wu, Joëlle Milazzo, Bizeng Mao, Ertao Wang, Huaan Xie, Didier Tharreau, Zuhua He

Science, 2017 Feb; 355(6328), 962-965. Doi: 10.1126/science.aai8898 (2017).

Crop breeding aims to balance disease resistance with yield, however single resistance (R) genes can lead to resistance breakdown and R gene pyramiding may impact growth fitness. Here we report that the rice Pigm locus contains a cluster of genes encoding nucleotide-binding leucine-rich repeat (NLR) receptors that confer durable resistance to the fungus Magnaporthe oryzae without yield penalty. In the cluster, PigmR confers broad-spectrum resistance, whereas PigmS competitively attenuates PigmR homodimerization to suppress resistance. PigmS expression, and thus PigmR-mediated resistance, are subjected to tight epigenetic regulation. PigmS increases seed production to counteract the yield cost induced by PigmR. Therefore, our study reveals a mechanism balancing high disease resistance and yield through epigenetic regulation of paired antagonistic NLRs, providing a tool to develop elite crop varieties.

2016年度

20161215

野沢担当

Piwi Modulates Chromatin Accessibility by Regulating Multiple Factors Including Histone H1 to Repress Transposons

Yuka W. Iwasaki, Kensaku Murano, Hirotsugu Ishizu, Aoi Shibuya, Yumiko Iyoda, Mikiko C. Siomi, Haruhiko Siomi,Kuniaki Saito

トランスポゾンの転移は次世代への脅威になるため、特に生殖組織においてはトランスポゾンを選択的に抑制するメカニズムが必要である。Piwiおよびnon-coding RNAであるpiRNAがトランスポゾンの抑制を担うことが見い出されており、Piwi-piRNA複合体はトランスポゾン領域をヘテロクロマチン化することが示唆されているが、その分子メカニズムは未だ明らかになっていない。この研究においては、ショウジョウバエにてPiwiの新たな相互作用タンパク質としてヒストンH1が同定された。さらに、ヒストンH1のトランスポゾン領域への結合はPiwiに依存することが示唆された。また、PiwiはヒストンH1やHP1aなどを介してクロマチン構造を制御することが示された。HP1aがヒストンH3K9のトリメチル化修飾などにより制御される一方、ヒストンH1はこれとは独立に並行して機能していた。これらの結果より、Piwi-piRNA複合体はヒストンH1やHP1aなどの複数のタンパク質を介してクロマチンの構造を制御することにより標的となるトランスポゾンを抑制するというモデルが示された。

20161201

Pik担当

Transposon-derived small RNA is responsible for modified function of WRKY45 locus.

Haitao Zhang, Zeng Tao, Hanming Hong, Zhihui Chen, Changyin Wu, Xianghua Li, Jinghua Xiao, Shiping Wang.

Nature Plants, 2016 Feb 29;2:16016. doi: 10.1038/nplants.2016.16.

Transposable elements (TEs) are an important source for generating small interfering RNAs (siRNAs) in plants and animals. Although TE-siRNA-induced silencing of TEs by RNA-directed DNA methylation (RdDM) in the maintenance of genome integrity has been intensively studied, it is unknown whether this type of silencing occurs in suppressing endogenous non-TE genes during host–pathogen interactions. Here we show that a TE-siRNA, TE-siR815, causes opposite functions for the two alleles, WRKY45-1 and WRKY45-2, of the WRKY45 transcription factor in rice resistance to Xanthomonas oryzae pv. oryzae, which causes the most devastating bacterial disease in rice worldwide. Expression of WRKY45-1, but not WRKY45-2, generated TE-siR815, which in turn repressed ST1, an important component in WRKY45-mediated resistance, by RdDM. Suppression of ST1 abolished WRKY45-mediated resistance leading to pathogen susceptibility. These results suggest that TE-siR815 contributes to the natural variation of the WRKY45 locus and TE-siR815-induced suppression of ST1 results in the negative role of WRKY45-1 but positive role of WRKY45-2 in regulating disease resistance.

20161117

林担当

Arabidopsis RNASE THREE LIKE2 Modulates the Expression of Protein-Coding Genes via 24-Nucleotide Small Interfering RNA-Directed DNA Methylation.

Elvira-Matelot E, Hachet M, Shamandi N, Comella P, Sáez-Vásquez J, Zytnicki M, Vaucheret H.

Plant Cell 2016 Feb;28(2):406-25. doi: 10.1105/tpc.15.00540.

RTL2はシロイヌナズナに存在するRNaseⅢ enzymeである。この酵素は酵母において23nt siRNAを生成するDcrと構造的に似ており、先行研究から過剰発現体においてsiRNAの生成を増加させるということが知られていた。筆者らの実験において、RTL2は直接23nt siRNAを生成するDcrとは異なり、直接siRNAを生成する能力はなく、24ntより大きい分子のRNAを生成することが示された。また、これらのRNA分子はDCLによって更なる加工を受けることで21,22,24ntのsiRNAが生成される。さらに筆者らはRTL2に対する発現傾向のちがいから、RTL2-dependent gene, RTL2-sensitive geneをそれぞれ同定し解析を行なった。これからさらに、RTL2による加工はsiRNAの増加・減少の2つに関わること、RTL2によって前加工されるRNAはPolⅣから生成されるRNAの一部であり、この前加工によって5’,3’末端のヒエラルキーに変化が生じていることがわかった。また、RTL2によって調節されるsiRNAのうち13%はprotein coding geneであり、RTL2はトランスポゾンやIGRだけでなく、実際の遺伝子発現にも影響を与えているということが示唆された。

20161110

金担当

The Arabidopsis thaliana mobilome and its impact at the species level

Leandro Quadrana , Amanda Bortolini Silveira , George F Mayhew , Chantal LeBlanc , Robert A Martienssen, Jeffrey A Jeddeloh, Vincent Colot1*

eLife Sciences 5 · June 2016. DOI: 10.7554/eLife.15716

転位因子(TES)は生物ゲノム進化の強力なモータとして知られているが最近の転移活性を総合的に評価する文書はまだ不足している。ここで本研究では世界中から採集したシロイヌナズナの211アクセッションのゲノムを用いて数千個の転移事項を識別した。シロイヌナズナにおいて注釈つき326のTE家族の半分が含まっている。さらに、本研究では「mobilome」の組成や活動が気候や遺伝的な要因に関連しており、アクセッションの間で広い範囲に変化することを示している。また、TESがゲノム全体に均等的に挿入し、彼らは頻繁に遺伝子に影響を与えるため、複数の方法で遺伝子リッチ領域から自然淘汰によってパージされている。驚くべきことに、環境への適応応答を制御する遺伝子座が観察された最も頻繁に転移ターゲットである。これらの知見は、mobilomeが普遍的に種間で存在して、種全体のインパクトと対立遺伝子の動力として転位の重要性を示している。

20160915

川岸担当

Small RNA changes in systhetic Brassica napus

Ying Fu, Meili Xiao, Huasheng Yu, Annaliese S. Mason, Jiaming Yin, Jiana Li, Dongqing Zhang, Donghui Fu

Planta. 2016 Sep; 244 (3): 607-22

B. rapaB. oleraceaの交配による染色体倍加によって新しい種(合成B. napus)を作成し、small RNA(sRNA)の解析を行った。sRNAは、植物における交配・多倍数体化において重要な役割を果たしていることが以前の研究から判明しているが、合成B. napusにおいてどのようにsRNAが変化するのか、特に合成後の子孫世代ではわずかしか知られていなかった。私たちはHigh-throughputシーケンスを合成B. napusのS1~S4世代およびそのペアレントラインであるB. rapaB. oleraceaに対して行った。その結果、sRNAやmicro RNA(miRNA)の数がペアレントのラインと比較して2倍となっていること、S1~S4各世代における共通なsRNAの割合より、合成B. napusではmiRNAの発現が不安定であることが分かった。また、合成B. napusにおいてmiRNAは多くの場合非相加的な発現をしており、33.3%のmiRNAは合成B. napusにおいて新たに見つかったものであった。トランスポーザブルエレメント(TE)由来に由来するmiRNAの割合も増加し、トランスポゾンの活性化およびトランスポゾン関連miRNAの生成が見られた。これは交配および多倍数体化に対する反応と考えられる。加えて、miRNAのターゲットとなる遺伝子の数もペアレントと比べ2倍となり、遺伝子発現制御がより複雑になっていることを示す一方、miRNAのターゲット機能はライン間・世代間で保存されている。

20160825

金晶担当

DNA methylation changes facilitated evolution of genes derived from Mutator-like transposable elements

Jun Wang, Yeisoo Yu, Feng Tao, Jianwei Zhang, Dario Copetti, Dave Kudrna, Jayson Talag, Seunghee Lee, Rod A. Wing, Chuanzhu Fan

Genome Biol (2016) 17: 92. doi:10.1186/s13059-016-0954-8

Mutator –like転移因子はイネのゲノムで同定されたDNAトランスポゾンである。原核生物と真核生物ゲノムの両方に広範囲に存在する。新しい遺伝子構造の形成をもたらす異所性ゲノム配列を取り込むことができる。ここでは、全ゲノム比較解析に基づいて、論文 ではMutator -like transposable elements由来推定遺伝子の進化のプロセスとメカニズムについて検討した。結果の分析、推定遺伝子は一般的にGCリッチであり、主にGCリッチな親配列に由来し、低メチル化レベルと高組み換え率の親配列領域を優先的に取り込む。内部配列および終端重複配列(terminated inverted repeat regions)におけるメチル化レベルは異なっていて、24ヌクレオチドの小さなRNA媒介経路によって指示される可能性があり、進化の時間の経過とともに動的に変化することを示している。最後に、推定したMutator -like transposable elementsは脱メチル化された成熟花粉で発現される傾向があることは証明された。Mutator-like transposable elements由来の遺伝子の生存、調節などに対してDNAのメチル化は主要なメカニズムとして、進化に貢献した。

20160818

林担当

Arabidopsis AGO3 predominantly recruits 24-nt small RNAs to regulate epigenetic silencing

Zhonghui Zhang, Xiuying Liu, Xinwei Guo, Xiu-Jie Wang & Xiuren Zhang

Nature Plants 2, Article number: 16049 (2016) doi:10.1038/nplants.2016.49

Argonaute (AGO) タンパクはRNAサイレンシングの中心的な役割を持つタンパクであり、シロイヌナズナでは9つの機能的AGOプロテインが同定されている。AGO3は、その中であまり解析の進んでいなかったAGOタンパクである。配列の相同性からAGO2と同じ機能を持つと考えられていた。筆者らは、このAGO3について、はじめに各mutantでのウイルス応答を調べ、AGO3とAGO2が異なる機能を持つことを示唆した。続いて、各AGOプロテインに結合するsiRNAの特徴を調べたところ、AGO2-bound sRNAのほとんどは24nt 5’-A であったのに対し,AGO3-bound sRNAは21nt 5’-Aであった、ここからAGO2とAGO3は異なる特徴を持つsRNAが結合していることが示唆された。また、AGO3-bound sRNAの30%がAGO4-bound sRNAとオーバーラップしており、由来となる遺伝子座は60%がオーバーラップしていたことから、AGO3はAGO4に近いのではないか、ということが示唆された。そこでAGO4と同じクラスタに属するAGO6についてAGO3と比較したところ、AGOs-bound sRNAの重複はAGO4-AGO3のほうが、AGO4-AGO6よりも大きかった。さらに、AGO4プロモーターからAGO3を発現させることにより、ago4 mutantのDNAメチル化が回復することがわかった。これより、AGO3はAGO4と同様に、エピジェネティック経路に関わることが示唆された。AGO3の局在から考えてもRdDM経路に関わっているかもしれない。

20160804

野沢担当

Super-resolution imaging reveals distinct chromatin folding for different epigenetic states

Alistair N. Boettiger, Bogdan Bintu, Jeffrey R. Moffitt, Siyuan Wang, Brian J. Beliveau, Geoffrey Fudenberg, Maxim Imakaev,Leonid A. Mirny, Chao-ting Wu& Xiaowei Zhuang

Nature 2016. 529: 418-422

後生動物のゲノムは、個々のヌクレオソームの周辺でのDNAのパッケージングから、染色体全体の異なった区域への隔離まで、さまざまなスケールで空間的に組織化されている。キロ塩基からメガ塩基という中間的なスケールでは、DNAの3D構造が複数の遺伝子調節機構に関係しているが、この構造のいまだ解明されていない。今回我々は、ショウジョウバエ細胞のゲノムドメインを転写活性の高い状態、不活性な状態、ポリコームによって抑制された状態の3つにタイプに分類し、超分解能画像化法を用いて異なったエピジェネティック状態にあるクロマチンの3D構造を調べた。その結果、クロマチンのパッケージングがエピジェネティックな状態の違いに応じて異なることが明らかとなった。またポリコームによって抑制されている領域ではドメイン内でのクロマチンの混合が高く、近隣の転写活性の高いドメインを空間的に排除する傾向が高いことが明らかとなり、これらによって転写因子やエンハンサーの偶発的な接近を防ぎ、誤った転写を防いでいることが示唆された。

20160707

川岸担当

Chromosome-specific NOR inactivation explains selective rRNA gene silencing and dosage control in Arabidopsis

Chinmayi Chandrasekhara, Gireesha Mohannath,Todd Blevins, Frederic Pontvianne, Craig S. Pikaard

Genes & Dev. 2016. 30: 177-190

真核生物では、数百〜数千のrRNA遺伝子が存在し、染色体の中で長いタンデムリピートとなり、Nucleous organizer region (NOR)を形成している。rRNA遺伝子の発現制御はエピジェネティックな制御や、rRNA遺伝子の転写に関わるRNA PolIの発現を調製することでなされている。しかし、rRNAの遺伝子配列は多くの種においてほとんどが確定している一方、どのようにしてサイレンスされるrRNA遺伝子を再現性良く選んでいるのかわかっていなかった。本研究では、シロイヌナズナを用いて、Col-0を用いてrRNA遺伝子が活性化しているか否かを調べた。その上でCol-0と他のエコタイプを掛け合わせて組み換え自殖系統(RIL)を作成し、rRNA遺伝子うち活性化しているものと不活性化しているものがシロイヌナズナには二つ存在するNORのどちらに含まれているかを調べた。結果としては、活性化しているrRNAはNOR4に、不活性化しているrRNAはNOR2にあり、存在する染色体によってサイレンシングが行われていることがわかった。また、人工的にNOR2に存在するrRNA遺伝子をNOR4に導入すると、活性化することも分かった。これらのことから、rRNA遺伝子の活性化・不活性化は、rRNA遺伝子内の細かな遺伝子配列の違いによるのではなく、染色体の一部のサイレンシングメカニズムによって制御されていると考えられる。

20160602

林担当

A Mutation in Plant-Specific SWI2/SNF2-Like Chromatin-Remodeling Proteins, DRD1 and DDM1, Delays Leaf Senescence in Arabidopsis Thaliana
Cho EJ, Choi SH, Kim JH, Kim JE, Lee MH, Chung BY, Woo HR, Kim JH.

PLoS ONE 11(1): e0146826. doi: 10.1371/journal.pone.0146826

“Leaf senescence”はleaf developmentの最終段階であり、高度に制御されている。Leaf senescenceの制御にはエピジェネティックな機構が重要な役割を果たしていることがわかってきたが、クロマチンリモデリングに関わるSWI/SNF chromatin remodelersと老化との関連はわかっていなかった。筆者らは,植物でみられるSWI2/SNF2-like proteinとして知られるDRD1の変異体drd1-6 mutantにおいて、leaf senescenceの遅れが見られることを発見した。また、knockdown mutantであるdrd1-pではこのような遅れは見られず、同じSWI2/SNF2-like protein であるddm1-2 では同様の老化の遅れが見られたことから、leadf senescenceの制御にはSWI2/SNF2-like proteinのHELICc domainが重要なのではないかということが示された。また、TSI repeats, CEN repeatsの発現を調べたところ、DISによって誘導されるleaf senescenceを通してエピジェネティックな調節に変化が起きていることがわかった。このことから、DRD1は内在性遺伝子のRdDMを通してleaf senescence に関わっている、またはクロマチンリモデリング通して老化関連遺伝子の発現のコントロールをしている、ということが考えられる。

20160526

野沢担当

Epigenome confrontation triggers immediate reprogramming of DNA methylation and transposon silencing in Arabidopsis thaliana F1 epihybrids

Mélanie Rigal, Claude Becker, Thierry Pélissier, Romain Pogorelcnik,Jane Devos, Yoko Ikeda,

Detlef Weigel, and Olivier Mathieu

遺伝子やトランスポゾンにはさまざまなDNAメチル化状態があり、それによって異なる発現を示す。しかし、これらのepiallelesがどのようにできるか明らかになっていない。低メチル化されたmet1と野生型を交配するとF1世代で広範囲に及ぶメチル化や発現パターンの変化がみられた。また、この現象はタンパク質をコードする遺伝子で新たなnonparentalなepiallelesをつくりだし、non-CGメチル化や発現を増減させたが、最も変化の影響を受けたのは動原体周囲のトランスポゾンであった。トランスポゾンの一部の集団では再抑制がおこるが、多くのトランスポゾンではDNAメチル化が減少し、それにともなって転写が活性化されたり、子孫で可動化するものがみつかった。これらの発見より、個々のエピゲノムの併合はエピジェネティックなショックと見なすことでき、新規の遺伝子発現パターンやTE制御のようなエピジェネティックな差異を生みだすことを示唆している。

20160512

金担当

Minimal evidence for consistent changes in maize DNA methylation patterns following environmental stress

Steven R. Eichten and Nathan M. Springer

Front. Plant Sci. 06 May 2015

植物は異なる環境ストレスに応答する必要がある。これらの応答は小規模な遺伝子発現の変化から大規模な形態学的変化まですべてのレベルで起こる。その中で、エピジェネティクスは応答に潜在的な役割がある。ストレス誘導からのDNAメチル化変化は体細胞分裂を介して維持されて生命の後期にゲノムの機能を継続的に調整する可能性もある。本論文では同じ応力を受ける複数の個体にメチロームの特定的な改変が再現できるかを巡って植物に異なるストレス条件(熱、寒さ、紫外線)を与えてDNAメチロームの変動を討論する。コントロル組と比べてDMRsの数やサンプル全体のメチル化ゲイン及び損失の割合には明確な傾向が見えないが高メチル化DMRsはストレス植物に存在する比率が高い。また、データには非生物刺激より組織培養刺激を受けた植物に特定的なメチローム改変が多く見えると示唆されている。

20160428

佐藤担当

Detection of Pol IV/RDR2-dependent transcripts at the genomic scale in Arabidopsis reveals features and regulation of siRNA biogenesis

Shaofang Li, Lee E. Vandivier, Bin Tu, Lei Gao, So Youn Won, Shengben Li, Binglian Zheng, Brian D. Gregory, and Xuemei Chen

siRNAはPolIVの転写産物を元に合成される24ntのRNAであり、RNA指向性DNAメチル化(RdDM)の中で中心的役割を担うものであるが、これまでにPolIV依存性の転写産物(P4RNA)についての報告は上がっていない。その理由としては、siRNAの前駆体が非常に短命であること、WTではsiRNAを合成するlocusがサイレンシングを受けていることの2つが挙げられる。筆者らはdcl2,dcl3,dcl4の三重変異体を用いることでこの問題を回避し、RNA-seqやsiRNA-seq、dsRNA-seqの結果からpolIV依存性の転写産物を生じる領域を特定し、その周辺領域の特徴や転写産物の特徴を明らかにした。P4RNAの周辺領域は配列中のA/Tの頻度が高く、ヌクレオソームの占有率も低かった。この特徴は遺伝子の転写開始部分やエキソンでも見られる特徴であった。また、転写産物は5’末端が単リン酸化されている、イントロンを持たない、3’末端側がポリアデニル化されていない等、polII依存の転写産物とは明確に区別できる特徴を有していた。また、RDR2がP4RNA合成に与える影響を調べるためにRNA-seqおよびRT-PCRを行ったところ、驚くべきことにP4RNA合成にRDR2が与える影響はPolIVと同程度であった。これはRDR2が単にPolIVの下流で働くのではなく、PolIVと同時にはたらく、あるいはPolIVをリクルートするなど協同的にはたらく可能性があることを示している。さらに、PolIV依存性siRNA(P4siRNA)の合成とCHHメチル化の関係について、メチル化酵素であるDRM2とCMT2の標的となる領域を分けて調査を行ったところ、CHHメチル化レベルの減少に伴ってsiRNA合成量は特にDRM2の標的となる領域で顕著に減少していた。これは、DRM2が主にユークロマチン領域でCHHメチル化とsiRNAが強固にフィードバックしながら領域をサイレンシングしているのに対し、CMT2の領域が主にヘテロクロマチン領域に存在しており、siRNA合成の促進もCHHメチル化よりはH3K9me2やH3K27me1等のヒストン修飾に頼る部分が大きいためであると考えられる。

20160414

川岸担当

A transposon insertion in FLOWERING LOCUS T is associated with delayed flowering in Brassica rapa

Xueming Zhanga, Lin Menga, Bo Liua, Yunyan Hua, Feng Chenga, Jianli Lianga, Mark G.M. Aartsb, Xiaowu Wanga, Jian Wua

Plant Science 241 (2015) 211–220

植物の花成には様々な要因が関与しているが、その中でも日長と春化は重要な要素である。特に、ハクサイなどの葉を食す農作物においては花成のタイミングによって収穫量が変化してしまう。A. thalianaでは、日長の変化によってFLOWERING LOCUS T (FT)が発現し花成が誘導されることが判明している。この研究ではA. thalianaに近縁かつ多くの栽培品種を持つB. rapaを用いて、花成に関わる遺伝子を調査した。そのためにL58とR-o-18ラインをParentとして組み換え近親交配ライン (RIL) を作成し、QTL解析を行った結果、2つのFTオルソログが見つかった。A02染色体上のものをBrFT1、A07染色体上のものをBrFT2と名付けたが、特にBrFT2が花成時期に関与していることがわかった。またparentのラインにおいてBrFT2の配列や転写活性を調べたところR-o-18ラインのものには大きなinsertionがみられ、転写産物もほとんど見られなかったにもかかわらず、長日条件下ではR-o-18ラインでも花成時期に遅れが見られなかったことから、二つのFTオルソログが互いを補完しあう可能性があると同時に、何らかの機能分担を行っている可能性もある。

2015年度

20160127

林担当

A One Precursor One siRNA Model for Pol IV- Dependent siRNA Biogenesis

Jixian Zhai, Sylvain Bischof, Haifeng Wang, Suhua Feng, Tzuu-fen Lee, Chong Teng, Xinyuan Chen, Soo Young Park, Linshan Liu, Javier Gallego-Bartolome, Wanlu Liu, Ian R. Henderson, Blake C. Meyers, Israel Ausin, Steven E. Jacobsen,,

Cell Volume 163, Issue 2, 8 October 2015, Pages 445–455

植物におけるPolⅣ依存的な24nt-siRNAは、PolⅣからの転写産物がRDR2によって二本鎖になり、DCL3によって切断される経路を経て生成される。ここで、筆者らははじめにPolⅣから転写される前駆体RNA、P4RNAに注目した。PATHと呼ばれるRNA-sequence法を用いてTotal RNAからP4RNA libraryを作製し、small RNA libraryとの比較を行なった。さらに、P4RNA, 24-nt siRNAの5’端や3’端の特徴を調べた。この結果、P4RNAは30-40ntの長さであり、24nt siRNAに見られるdistribution, abundance, strand biasを反映していること、さらにP4RNAは5’ monophosphates と 3’ misincorporated nucleotides を持つことなどがわかった。これらは、転写の終結やDCL3による切断にいくつかのメカニズムがあることを示している。以上の結果より、筆者らはPolⅣの転写産物から24nt siRNAが生成される過程において、”ひとつの前駆体からひとつのsiRNAができる” というモデルを示している。

20160120

野沢担当

The Folding of the Specific DNA Recognition Subdomain of the Sleeping Beauty Transposase Is Temperture-Dependent and Is Required for Its Bindingto the Transposon DNA

Gage O. Leighton,Tatiana A. Konnova,Bulat Idiyatullin,Sophia H. Hurr,Yuriy F. Zuev,Irina V. Nesmelova

PLoS ONE 9(11): e112114. doi: 10.1371/journal.pone.

DNA型トランスポゾンは遺伝的応用や遺伝子療法に用いられているが、いまだ分子レベルのメカニズムが不明瞭なままである。Sleeping Beauty(SB)はDNA型トランスポゾンである。SBトランスポザーゼはモジュールタンパクでDNA結合部位と触媒のドメインで構成されている。DNA結合部位はさらにPAIとREDのサブドメインで構成されている。このDNAトランスポゾンデリバリーシステムの効率は様々な因子に依存している。本研究ではトランスポザーゼ活性が温度誘導型構造変化によるタンパク質の展開による影響を検証し、SBトランスポザーゼのPAIサブドメインは折り畳まれた状態でのみDNAと結合できることが示唆された。この結果より、温度によるタンパク質のコンフォメーション変化がトランスポゾンの転移活性に影響を及ぼすことが示唆された。

20151222

金担当

DNA methylation epigenetically silences crossover hot spots and controls chromosomal domains of meiotic recombination in Arabidopsis

Nataliya E. Yelina, Christophe Lambing, Thomas J. Hardcastle, Xiaohui Zhao, Bruno Santos, and Ian R. Henderson

Genes & Dev. 2015. 29: 2183-2202

減数分裂時期に、相同染色体は遺伝的及びエピジェネティックな情報によって制御されている限られたホットスポットで組換えを受ける。シロイヌナズナでは高メチル化された染色体セントロメアで組換えが抑制されている。本論文ではRNAに依存するDNAメチル化が局所的にユークロマチンクロスオーバーホットスポットをサイレントするのに十分であることを証明した。このサイレンシングには増加したヌクレオソーム密度とH3K9me2が関連している。しかし、CGメチル維持が欠失したmet1 変異体では染色体スケールでリモデリングを引き起こすが、ユークロマチンに組換えが増加し、ペリセントロメアに組換えが減少した。組換え修復経路に干渉組替え変異体(zip4)及び非干渉組換え変異体(fancm)を用いて、デリリングが干渉クロスオーバーに関与していることを実証した。whole-genome bisulfite sequencingを用いて、クロスオーバーリモデリングはセントロメア領域内CGメチル化の喪失によって駆動されることを示している。met1にある減数分裂DSB(double strand break) フォーカスは 野生型にあるDSBフォーカスと比較してあまり変わらない。ここで仮想を提案した:セントロメア付近のDSBからクロスオーバーへ形成するのを抑制するために、met1 染色体構造が変更された。これらのテータは、DNAメチル化はホットスポットのクロスオーバーをサイレントするのに十分であることと、染色体に沿って減数分裂組換えのドメインを確立するのに重要な役割を果たしていることを示している。

20151111

川岸 担当

HISTONE DEACETYLASE6 Controls Gene Expression Patterning and DNA Methylation-Independent Euchromatic Silencing

Emilija Hristova, Kateryna Fal, Laurin Klemme, David Windels, and Etienne Bucher

Plant Physiology, August 2015, Vol. 168, pp. 1298–1308

遺伝子発現におけるクロマチン制御の役割を調べるために、APUM9プロモーターを用いて組織特異的なGFPタンパク質レポーターラインを作成した。このラインにEMS処理を行い、epic1変異体を得た。この変異体ではヒストン脱アセチル化酵素HDA6に変異があることがわかった。この変異を持つラインをhda6-8と名付け、更なる調査を行ったところ、本来高度に保存されているESA1-RPD3モチーフに変異が発生しており、同時にAPUM9のアセチル化が上昇していた。これより、このモチーフはHDA6のターゲット遺伝子の認識、または関係するタンパク質との相互作用において必要なものと考えられる。また、hda6-8では、HDA6のヌル突然変異体株であるhda6-7と比較したところDNAメチル化には影響が見られなかったが、H4ヒストンのテトラアセチル化の増加が見られた。hda6-6とも比較したところ、hda6-8ではhda6-6と比べアップレギュレートした転写物がTEにおいては明らかに少なかった。このことから、ESA1-RPD3モチーフはあくまでユークロマチン領域のサイレンシングにのみかかわっていると考えられる。さらに興味深いことにhda6-7に野生型HDA6を導入しても機能は回復しなかったが、had6-8を挿入した場合機能を回復したことから、一度メチル化が失われても特定の状況下でメチル化が回復できる機構の存在が示唆された。

20151104

松永 担当

A strand-specific switch in noncoding transcription switches the function of a Polycomb/Trithorax response element

Veronika A Herzog, Adelheid Lempradl, Johanna Trupke, Helena Okulski, Christina Altmutter, Frank Ruge, Bernd Boidol, Stefan Kubicek, Gerald Schmauss, Karin Aumayr, Marius Ruf, Andrew Pospisilik, Andrew Dimond, Hasene Basak Senergin, Marcus L Vargas, Jeffrey A Simon & Leonie Ringrose

Nature Genetics 46, 973–981 (2014)

Polycomb/Trithorax 応答性因子 (PRE/TRE) は抑制と活性化の機能を可逆的に切り替えることができるが、その仕組みは理解されていなかった。ショウジョウバエのvestigial (vg) の下流にはPRE/TREが存在し、順鎖及び逆鎖の双方向のnoncoding RNAが転写される。ショウジョウバエの発生段階あるいは組織によってvg PRE/TREより異なる転写産物が生成され、順鎖の転写産物はvgを抑制し、逆鎖の転写産物はvgを活性化することから、noncoding RNAを介した切り替え機能があることがわかった。またin vitroの実験においては順鎖、逆鎖ともにPolycomb repressive complex 2 (PRC2) と結合し、そのヒストンメチル化活性を阻害したが、in vivoでは逆鎖のみPRC2と結合した。このことから、in vivoにおける特異性はPRC2自身ではなく、他の分子によって決定されているのであろう。また逆鎖の過剰発現体では、PRC2の活性を阻害し、クロマチンから排除していた。以上の点から、順鎖のnoncoding RNAはPRE/TREの結合を促進することで抑制を安定化させ、PRC2は独立にヒストンメチル化を行っていると考えられる。また、逆鎖は直接PRC2と結合し、その活性を阻害し、近傍遺伝子の活性状態を維持しているのであろう。双方向の転写産物の切り替えは、ハエやマウスにおいてもゲノムワイドに確認され、PRE/TREによる制御の広範な可能性が示唆された。

20150903

林 担当

The Arabidopsis DNA Polymerase δ Has a Role in the Deposition of Transcriptionally Active Epigenetic Marks, Development and Flowering

Francisco M. Iglesias,Natalia A. Bruera,Sebastián Dergan-Dylon,Cristina Marino-Buslje,Hernán Lorenzi,Julieta L. Mateos,Franziska Turck,George Coupland,Pablo D. Cerdán

PLoS Genet 11(1): e1004915. doi:10.1371/journal. pgen.1004915.

DNA複製に関わるDNA polymeraseδの後成的遺伝に関わる役割は今まで知られていなかった。筆者らはPolδの活性部位であるPOLDがA707V置換を起こした変異体gis5を単離した。この変異体はearly flowering, curly leaf phenotypeを示し、これらの表現型は24℃では強く出たが18℃では消失した。また24℃ではDNA replication-stress maker geneの発現の増加、相同組み換えの増加、H3K4me3の増加やSEP3の発現増加を示した。これより、gis5において高い温度条件でPolδが遅れることにより、DNA stress responseの引き金が引かれ、SEP3においてH3K4me3の増加が起こる。これはFTとの正のフィードバックループの要因となり、FTの発現増加がearly floweringとcurly phenotypeを引き起こすと考えられる。ここから、DNA polemeraseδは適切なエピジェネティック・マークに必要であり、これが変異すると、エピジェネティック・マークが影響を受けて成長や花成に影響を与えると考えられる。

 

20150827

野沢 担当

An Rtf2 Domain-Containing Protein Influences Pre-mRNA Splicing and Is Essential for Embryonic Development in Arabidopsis thaliana

Taku Sasaki,Tatsuo Kanno,Shih-Chieh Liang, Pao-Yang Chen, Wen-Wei Liao, Wen-Dar Lin, Antonius J. M. Matzke,and Marjori Matzke

Genetics June 2015 200:523-535

選択的スプライシングは、多くの植物で行われているが、発生やシグナル伝達経路におけるその制御についてはほとんど知られていない。今回、我々はpre-mRNAスプライシングに影響を与え、シロイヌナズナの胚発生に不可欠である新たな因子、AtRTF2を同定した。AtRTF2のスプライシングに関連した役割は、コアスプライソソーム構成因子PRP8の活性を損なう低形質変異prp8-7と同じ遺伝子スクリーニングで同定された低形質変異atrtf2-1によって示された。さらに、atrtf2-1とprp8-7変異は、GFP pre-mRNAのスプライシングパターンに同じ影響を及ぼすことが示された。2つの変異体では潜在的イントロンのAT-AC末端スプライシングが非効率的であり、翻訳可能なGFPの発現レベルの低下やスプライシングされていないmRNA、非翻訳GFP転写物の蓄積増加につながる。またatrtf2変異はゲノム全体のスプライシングを阻害し、totalイントロンの13-16%保持されるイントロンが増加することが示された。これらの結果からAtRTF2が植物生長の間の適切なスプライシング活性の維持に関わっていることが示された。

 

20150806

金 担当

The Methyl-CpG-Binding Protein MBD7 Facilitates Active DNA Demethylation to Limit DNA Hyper-Methylation and Transcriptional Gene Silencing

Zhaobo Lang, Mingguang Lei, Xingang Wang, Kai Tang, Daisuke Miki, Huiming Zhang, Satendra K. Mangrauthia, Wenshan Liu, Wenfeng Nie, Guojie Ma, Jun Yan, Cheng-Guo Duan, Chuan-Chih Hsu, Chunlei Wang, W. Andy Tao, Zhizhong Gong, Jian-Kang Zhu

Molecular Cell, Vol.57:971-983, March 2015

DNAメチル化はゲノム安定性、遺伝子調節に重要的な役割を果たしているエピジェネティックなマークである。カノニカルMBD(Methyl-CpG-Binding Domain)タンパクはメチル化CG部位を認識し、クロマチンリモデリング因子、ヒストン脱アセチル化酵素、ヒストンメチルトランスフェラーゼをリクルートすることで転写を抑制する。本論文ではシロイヌナズナMBD7とIDM3(Increased DNA methylation)がanti-silencing factorとして遺伝子抑制と高度メチル化を防ぐことを示している。MBD7は高度にメチル化されたCG−dense領域と優先的に結合し、他のanti-Silencing factor(IDM1,IDM2,IDM3など)と共同作用する。IDM1とIDM2は、ROS1(5-methylcytosine DNA glycosylase/lyase)によるDNA脱メチル過程を促進することが示された。従って、MBD7は、IDM1をリクルートすることでDNA脱メチル化酵素をリクルートしてDNAメチル化及び転写後サイレンシングを防ぐ。

20150716

川岸担当

Natural Variation in Epigenetic Pathways Affects the Specification of Female Gamete Precursors in Arabidopsis

Daniel Rodríguez-Leal, Gloria León-Martínez, Ursula Abad-Vivero, and Jean-Philippe Vielle-Calzada

The Plant Cell, Vol. 27: 1034–1045, April 2015

被子植物の雌性配偶子の形成はめしべの中で行われる。めしべの中にある一つの胚嚢母細胞(MMC)が減数分裂し胚嚢細胞(FM)となり、その内の一つのみが更に3回の核分裂を経て、単核の卵細胞や助細胞、反足細胞、もしくは複核の中央細胞となる。ところが雌性配偶子形成においては、MMCが複数個存在してしまうといったような自然変異等が存在することが分かっている。このような自然変異の制御にはエピジェネティックな要素が関係していると考えられているが、具体的なメカニズムははっきりしていなかった。そこで筆者は自然変異が見られる5つのA. thalianaエコタイプを用意し、それらを交配させることで表現型への自然変異の影響を調べた。また、small RNAと密接な関わりを持つAGO9やRDR6を欠損させた系統を用意してそれぞれのエコタイプと交配させたところ、エコタイプ間の交配で見られたような自然変異と同様な変異が出現した。このことより、MMCの自然変異にはAGO9やRDR6が関与していることが分かった。

20150702

松永担当

The Paf1 complex represses small-RNA-mediated epigenetic gene silencing

Katarzyna Maria Kowalik, Yukiko Shimada, Valentin Flury, Michael Beda Stadler, Julia Batki & Marc Bühler

Nature 520, 248–252 (09 April 2015)

生物界全体において、内在性の低分子RNAはクロマチンを介した過程において重要なはたらきを持つが、small interfering RNA (siRNA) がトランスに作用してクロマチン修飾を開始することは困難である。しかし分裂酵母 (Schizosaccharomyces pombe) では、ヘアピンRNA由来のsiRNAがトランスに作用し、ヘテロクロマチンのマークであるヒストンH3K9のメチル化を促進することが知られている。本研究では、高度に保存されたRNA polymerase-associated factor 1 complex (Paf1C) によって、低分子RNAによるヘテロクロマチン形成が抑制されていることを示した。ade6+遺伝子と相同な塩基配列をもつヘアピンRNA (ade6-hp)を合成するコンストラクトでは、Paf1C変異体において、ade6-hp由来のsiRNAがトランスに作用し、安定的なヘテロクロマチン形成が誘導され、遺伝子サイレンシングが起きた。さらに、ade6-hp由来のsiRNA(primary siRNA)の合成に続き、標的配列周辺で二次的なsiRNAの合成が増加した。さらにprimary siRNAとは独立に、二次的なsiRNAの継続的な産生によって、抑制状態を世代を介して伝播させることがわかった。またPaf1Cは、転写伸長や終結を促進することも知られている。我々の結果は、適切な転写終結や新生転写産物の解離は、低分子RNAによる効率的なサイレンシングを妨げるというモデルと一致している。また、転写終結や新生転写産物の解離に障害が起きることは、安定的な抑制状態を維持するためには必要なことであることを示した。

20150611

林担当

Transposable Elements Contribute to Activation of Maize Genes in Response to Abiotic Stress

Irina Makarevitch, Amanda J. Waters, Patrick T. West, Michelle Stitzer, Candice N. Hirsch, Jeffrey Ross-Ibarra, Nathan M. Springer

PLOS genetics, January 2015, Vol 11, Issue 7, e1004915

Trasnposable elements (TEs) は多くの真核生物でゲノムの大部分を占めている。いくつかの研究で、これらのTEsが宿主のゲノムと相互作用して遺伝子発現に関わることがわかってきており、特にTEの挿入がその近くにある遺伝子のストレス応答に関わっているという例が見つかってきた。この論文では、トウモロコシのゲノムを用いてストレスに応答して発現する遺伝子とその近くに挿入されたTE familyとの関連を調べた。はじめにRNA-seqによって異なるストレス (cold, heat, high salt, UV) に応答する遺伝子を調べた。この結果から、ストレスに応答して発現が上昇した遺伝子の近くに挿入されたTE familyを探索したところ、20のTE familyが見つかり、各ストレスごとに4〜9のTE familyが発現上昇に関わっていることがわかった。また、20のTE familyを分析したところ、ほとんどのTE familyにおいて、ストレス応答する転写因子であるDREB/CBFが結合するコンセンサス配列が見つかり、TE familyはストレスに応答するエンハンサーの役割を果たしているのかもしれない、ということが示された。さらに、TE insertionによるallelic variationを解析した結果、近くの遺伝子のストレス応答に関連するTE familyの多型的な挿入は、ストレス応答性遺伝子発現と強い相関があることが示された。これより、TEは、ストレス応答する遺伝子での、対立遺伝子的な遺伝子調節のバリエーションの重要なソースのひとつとなっていると考えられる。

20150528

野沢担当

Epigenetic regulation of intragenic transposable elements impacts gene transcription in Arabidopsis thaliana

Tu N Le, Yuji Miyazaki , Shohei Takuno and Hidetoshi Saze

Nucleic Acids Research Advance access published March 26,2015

植物を含む高等な真核生物のゲノムには多くの転移因子(TE)が含まれており、それらはヒストン修飾やDNAメチル化のようなエピジェネティックなメカニズムによって抑制されている。TEは近くの遺伝子の発現に悪影響を及ぼすが、最近の研究では、転写された遺伝子内に修飾されたTEの存在していることが明らかにされた。しかしながら、よく研究された植物モデルのシロイヌナズナでさえ、遺伝子内TEの存在量やエピジェネティックな制御、宿主遺伝子発現に対する潜在的な影響はいまだ解明されてない。本研究ではTEのゲノム全体での分布とシロイヌナズナにおける遺伝子内のTEのエピジェネティックな制御を包括的に解析した。これにより、TEの約3%が遺伝子内に配置されており、イントロン領域に優位に挿入することが明らかになった。また、それらのほとんどが遺伝子間TEより短く、メチル化が少ないが、 これらはまだRNA-directed DNA methylation依存及び非依存の経路の標的となっている。驚くことに、TEでのヘテロクロマチンのエピジェネティックな修飾は転写された遺伝子内でも維持されていた。さらにイントロン内のTEのヘテロクロマチンの修飾は、適切な転写を行うのに極めて重要であった。

20150514

金担当

A Two-Step Process for Epigenetic Inheritance in Arabidopsis

Todd Blevins, Frédéric Pontvianne, Ross Cocklin, Ram Podicheti, Chinmayi Chandrasekhara, Satwica Yerneni, Chris Braun, Brandon Lee, Doug Rusch, Keithanne Mockaitis, Haixu Tang, Craig S. Pikaard

Molecular Cell 10 April 2014, Pages 30–42

植物にはシトシンメチル化とヒストン修飾により転位因子、反複配列などをサイレンシングする機構がある。しかし、どうのように標的のサイレンシング配列を認識し、またはマークをつけるのかは不明である。RdDMにターゲットされたローカスの一部分の遺伝子座はHDA6への依存性があることがしめされている。これらのローカスでhda6変異により消失したEpigenetic Memory(サイレンシングに関するメモリー)がHDA6の回復により取り戻せない。一方、polIV polVにより切断されたsiRNA合成とRdDM経路はPolIVとPolVの回帰により回復した。このことは、サイレンシングがHDA6-depedentクロマチンの標識とde novoメチル化の2ステップに分かれることを示唆している。

20150430

佐藤担当

Regulatory link between DNA methylation and active demethylation in Arabidopsis

Migguang Lei, Huiming Zhang, Russell Julian, Kai Tang, Shaojun Xie, and Jian-Kang Zhu

PNAS vol. 112 no. 11, 3553–3557 March 17, 2015

植物では、RNA指向性DNAメチル化(RdDM)経路を通じた新規のDNAメチル化と、活発なDNA脱メチル化によってゲノム全体のDNAメチル化パターンが制御されている。しかしながら、細胞がどのような機構でこの2つのバランスを管理しているのかについてはほとんど明らかになっていない。筆者らはシロイヌナズナにおいて適切な脱メチル化を維持するためにDNAメチル化を必要とするRdDM標的配列を同定した。ROS1遺伝子プロモーターのヘリトロン転移因子(TE)はROS1を抑制的に制御するが、その一方でROS1の 5′ UTR(非翻訳領域)とプロモーターTE領域の間のRdDM標的配列のDNAメチル化はROS1発現を調節する際にこのヘリトロンTEに拮抗的にはたらく。また、この配列は同時にROS1タンパク質の標的でもあり、ROS1タンパク質によって脱メチル化を受ける。これらの結論から、さらに筆者らはROS1プロモーター領域にあるこの配列が、DNAメチル化と活発なDNA脱メチル化を感知するDNAメチル化モニタリング配列(MEMS)として役に立っていることを示唆している。MEMSは、ROS1の発現制御を通じてDNAメチル化レベルを感知し、メチル化状態を一定の範囲に保つサーモスタットのようなもの(メチルスタット)としてはたらくのである。

20150416

川岸担当

Evolution of DNA Methylation Patterns in the Brassicaceae is Driven by Differences in Genome Organization

Danelle K. Seymour, Daniel Koenig, Jorg Hagmann, Claide Becker, Detlef Weigel

PLOS genetics, November 2014, Vol 10, Issue 11, e1004785

DNAメチル化は、ほとんどの真核生物において古い時代から存在している分子構造を変化させる機構である。植物において、DNAメチル化は転写性のトランスポゾンのサイレンシングにおいて重要というのみならず、タンパク質をコードする遺伝子の発現を変えることによって表現型に影響を与えうる。しかしながら、進化的な時間における表現型の多様性への寄与は、DNA変異と関連していないエピアレルが限定的な安定性しか持っていないため、不明確である。トランスポゾンの監視や、宿主遺伝子の制御に対するDNAメチル化の相対的な寄与について調べるために、私たちはゲノム構造において多様なアブラナ科のうちの三種(Capsella rubella、 Arabidopsis lyrata、Arabidopsis thaliana)の情報を利用した。私たちは、系統特的なトランスポゾンや繰り返し配列の拡大や縮小が種間におけるDNAメチル化の違いを制御する主要な要因であることを見出した。ゲノムのなかでも最も強くメチル化された部分は配列レベルでは保存されていない。繰り返し配列に関連したメチル化の外側の部分では、遺伝子本体に存在する単独のヌクレオチドにおけるメチル化の保存の程度は驚くべきものである。最後にダイナミックなDNAメチル化はどの種においても環境の違いより組織の違いにおいて差がみられる一方、これらの反応は保存されていなかった。高い頻度で変化するゲノム領域に存在する種の間でのDNAメチル化の種間のバリエーションの多くはこのように大進化の状況のもと限られた表現型の結果である。

20150402

松永担当

FT-like proteins induce transposon silencing in the shoot apex during floral induction in rice

Shojiro Tamaki, Hiroyuki Tsuji, Ayana Matsumoto, Akiko Fujita, Zenpei Shimatani, Rie Terada, Tomoaki Sakamoto, Tetsuya Kurata, and Ko Shimamoto

PNAS 2015;112:E901-E910

高等植物において、花成は重要な発生段階のひとつである。イネにおける花成誘導因子はHeading date 3a (Hd3a) であり、14-3-3タンパク質を介して転写因子であるOsFD1と結合し、Florigen activation complex (FAC)を形成する。しかしながら、Hd3aと他のFAC因子、及びFACによって活性化する下流の遺伝子の時空間的な動態は明らかになっていなかった。花成誘導中のShoot apical meristem (SAM) におけるHd3aと、FACのターゲットであるOsMADS15の局在を調べたところ、どちらも花器官が形成されるまでSAMに存在することが明らかになった。また、師部特異的遺伝子であるRPP16プロモーターによってHd3aの発現を増加させたところ、野生型に比べて早咲きとなることが分かった。これらの点から、Hd3aは花成誘導だけでなく、花序の発生にも寄与していることが示唆された。また、Hd3aによってどのような遺伝子が制御されているか調べるため、Hd3aのパラログであるRFT1との二重RNAi lineと野生型イネにおいてRNA-seqを行った。驚くべきことに、花成誘導中のSAMでは多くのトランスポゾンが活性化しており、その一部はフロリゲンによって抑制されていることが明らかになった。

2014年度

20150219

金担当

Genome-defence small RNAs exapted for epigenetic mating-type inheritance

Deepankar Pratap Singh,Baptiste Saudemont, Gerard Guglielmi

Nature 509,447–452 (22 May 2014)

繊毛虫類のゾウリムシ( Paramecium )では、生殖系列の小核と体細胞性の大核がある。有性世代の度に小核から大核が生じ、その際に転移因子やそれらの単一コピーの残骸は削除される。こうした削除に関わっているのは、減数分裂に際して生殖系列ゲノムから生じるscnRNAである。これらのRNAはまず母系大核ゲノムをスキャンして、欠けている塩基配列を見つけ出すことで、その後の接合体の大核で同じ箇所の削除を再現できるように働いている。本研究では、この過程によって、エピジェネティクスにより解決できなかったヨツヒメゾウリムシ( Paramecium tetraurelia )の接合型の母性遺伝を説明できることを示す。ゾウリムシの接合型にはE接合型とO接合型がある。E型はmtAの発現に依存し、O型は、scnRNAに依存した mtA プロモーターの除去により決定される。同胞種である Paramecium septaurelia では、別の遺伝子 mtB のコード配列の削除により決定される。これらの独立に進化した機構は、何度もイグザプテーション(外適応)を遂げたことが示唆された。

20150205

川岸担当

Meiotic Adaptation to Genome Duplication in Arabidopsis arenosa

Levi Yant, Jesse D. Hollister, Kevin M. Wright, Brian J. Arnold, James D. Higgins, F. Chris H. Franklin and Kirsten Bomblies

Current Biology 23, 2151–2156, November 4, 2013

全ゲノム重複とは多細胞真核生物の進化において重要な要因であるが、それによって染色体が倍加し、細胞分裂における染色体の分離が難しくなってしまっている。それにもかかわらず、多倍数体の種は自然界に多く存在していることから、多倍数体の染色体の分離は何らかの機構によって上述の問題を解決していると考えられる。そこで多倍数体における染色体の分離機構について探るために、二倍体と四倍体のゲノム全体における差異を調べた。まず、筆者らの研究グループは、A.arenosaの野生二倍体、野生四倍体、二倍体にコルヒチン処理を行って作成した人工四倍体のそれぞれの減数分裂における染色体の動きを観察した。それにより野生二倍体において多倍数体における減数分裂に前適応していないことを確認した。その上で、A. arenosaの野生二倍体、野生四倍体の全ゲノムスキャニングを行い、結果として44遺伝子の39領域についてにおいて倍数体特異的な差異を見出すことが出来た。更に、その内8つの遺伝子が減数分裂に関与する遺伝子であることが分かった。これら8つの遺伝子は、全ゲノム重複に関係した染色体分離の障害を解消すると考えられる。また、これにより減数分裂に関わるような高度に保存された機構でも必要に応じて柔軟に変化しうることが示された。

20150122

佐藤担当

Identification of genes preventing transgenerational transmission of stress-induced epigenetic states

Mayumi Iwasaki and Jerzy Paszkowski

PNAS vol. 111 no. 23, 8547-8552 May 27, 2014

高温などの環境ストレスによってクロマチン状態が変化し、遺伝子のサイレンシングが解除されることがよく知られているが、そのほとんどが一時的なものであり、ストレスメモリーが次世代に持ち越されることはまれである。筆者らはクロマチン状態の維持・伝達を防ぎストレスメモリーを消去する因子を同定することを目的として、mom1 LUC25 lineを用いたスクリーニングを行った。そこで得られた通常条件でもluciferase活性をもつ変異体では、ddm1の内部に変異が入っていることが分かった。さらにddm1mom1のdouble mutantでは、それぞれのsingle mutantに比べLUCの転写量が増大していただけでなく、次世代へのストレスメモリーの伝達が観察された。これらの結果から、ddm1 mutantでは熱ストレスによってLUCが超活性化され、その状態がddm1 mom1 double mutantでは維持され、次世代へ伝達されるということが示唆された。

20141212

升田担当

miRNAs trigger widespread epigenetically activated siRNAs from transposons in Arabidopsis

Kate M. Creasey, Jixian Zhai,Filipe Borges,Frederic Van Ex,Michael Regulski,Blake C. Meyers,Robert A. Martienssen

Nature 508,411–415(17 April 2014)

エピジェネティックに活性化した21nt small RNA(easiRNA)は遺伝学的にmRNAやncRNAに由来する二次型siRNA、21nt trans-acting siRNAと似ており、これらはmiRNAがトリガーになることから、miRNAがeasiRNAにとって重要であると考えられた。miRNAはDCL1によって産生される。実際、産生の機能と一致してddm1/dcl1二重変異体ではeasiRNAが減少した。miRNAによる切断はeasiRNAの蓄積、ある意味ではRDR6に依存して24nt hetsiRNA生合成を抑制する。ddm1/rdr6ddm1を比較すると、ddm1/rdr6ではいくつかのTEsで転写が減少し、それらのいくつかのTEsではメチル化レベルが増加していた。TEsのメチル化の低下はエピジェネティックな活性化と転写を起こし、miRNAのターゲットとなることでPTGSを引き起こす。生殖細胞などの発生段階でmiRNAコード領域のメチル化が減少することでトランスポゾンの転写物をターゲットとする。このように異なる発生段階の組織特異的なサイレンシグを起こしているのだろう。TEsは転写後にサイレンシングされる可能性がある結合配列を保存していた。これはRDR6を介してターゲットとなるTEs転写物の優先的な切り出しがRDR2と拮抗的に働き、hetsiRNAの生合成を妨げるからだろう。miRNAが誘導するeasiRNAの生合成はトランスポゾン転写産物を特異的に標的とする非活性化した機構だが、生殖系列のリプログラミング時に活性化して機能する。トランスポゾンにとってはヘテロクロマチン化による長期のサイレンシングの回避、宿主側にとっては生殖系列時のゲノムの保護のために維持されてきた機構であることが示唆された。

20141120

松永担当

Meristem-specific expression of epigenetic regulators safeguards transposon silencing in Arabidopsis

Tuncay Baubec1,2, Andreas Finke3, Ortrun Mittelsten Scheid1 & Ales Pecinka1,3

EMBO reports (2014)15, 446-452

植物において、転移因子はTranscriptional gene silencing (TGS) によって不活性な状態が維持されている。筆者らはシロイヌナズナにおいて、βグルクロニダーゼ遺伝子の転写が抑制されているTS-GUSトランスジェニックラインにDNAメチル化阻害剤であるゼブラリンを与え、その後DNAメチル化等の抑制状態が再獲得されるメカニズムについて実験を行った。ゼブラリン処理後、GUSシグナルは子葉で観察され、茎頂分裂組織 (SAM) や本葉では観察されなかった。またこのとき内生のトランスポゾン等も子葉において発現がみられた。さらにRNA directed DNA methylation (RdDM) 関連因子の変異体にTS-GUSを導入し、ゼブラリン処理を行ったところ、いくつかの変異体において本葉で強くGUSの発現が観察され、その状態が次世代に継承された。また、マイクロアレイの結果から、RdDM関連因子はSAMで強く発現していることが分かった。以上の結果から、子葉などの胚性組織でDNAメチル化などの抑制状態が解除され、トランスポゾン等が活性化しても、SAMでRdDMによって再び抑制されることが示唆された。すなわちSAMは、RdDM関連因子の発現によって、エピジェネティックな抑制状態を栄養組織や次世代に伝える、チェックポイントとしての機能があることが示唆された。

2013年度

田中担当

20131121
Francesco M. Piccolo and Amanda G. Fisher (2013)
Trends Cell Biol. 2013 Oct 9. pii: S0962-8924(13)00153-0. doi: 10.1016/j.tcb.2013.09.001. [Epub ahead of print]
Getting rid of DNA methylation

DNAのメチル化は、転写やゲノムの監視機構に関係があり研究が進んでいるが、
脱メチル化に関しては議論の余地がある。そのため、脱メチル化についてまとめたのがこのREVIEWである。
筆者は大きく分けて以下点を主張している。

  1. メチル化は植物・動物・菌で保存されているが、脱メチル化は多様である。
    哺乳類に共通する脱メチル化のシグナルやメカニズムは見つかっていない。
  2. 脱メチル化の研究は、異なる細胞を沢山調べて進められている。しかし、量に頼らず、機構的・分子的に明瞭にするべき。
  3. 脱メチル化はTetタンパク質による5mCから5hmCへの転換やDNAの合成、更なる能動的な修飾によっておこる
松永担当

20131108
Arturo MO et al. (2013)
Nature Genet. Sep;45(9);1030-1041.
Reconstructing de novo silencing of an active plant retrotransposon.

植物ゲノムに存在する転移因子は、その増殖や欠失のバーストによって構成される。転移因子の活性はDNAメチル化や、転写型遺伝子サイレンシング (TGS) によって主に制御されており、サイレンシングの定常状態についての研究が行われてきた。しかし、どのようにして転移因子が新規に侵入し、さらに抑制されるかについては、ほとんどが未知である。近年、シロイヌナズナの野生型とmet1あるいはddm1変異体を組み合わせた近交系系統 (epiRILs) を用いて、単一コピーの転移因子であるEvade (EVD) の増幅や再サイレンシングの構成を解析することができた。met1 epiRIL lineのひとつであるepi15では、自殖を経るごとにEVDのコピー数が増加する。RDR6-DCL2/4経路によってEVDは抑制されるが、一部はGAG由来のVLPによって保護される。EVDのコピー数が増加し続け、閾値に達するとDCL3経路がはたらき、3’ gag領域にde novoメチル化を引き起こす。このメチル化は、おそらくpolIV、polVによるアンチセンスの転写を介して、LTR領域にメチル化が広がり、EVDの転写が抑制される。このように、単一コピーのEVDのバーストを解析することで、どのようにして新規のエピアレリズムが起こるかを示すことができた。

山岸担当

20131017
Nuthikattu S et al. (2013)
Plant Physiol. 2013 May;162(1):116-31.
The initiation of epigenetic silencing of active transposable elements is triggered by RDR6 and 21-22 nucleotide small interfering RNAs.

植物のTEsはRdDMにより発現調節を受けている。これまでRdDMといえばPOLⅣの関与する経路(POLⅣ-RdDM)がよく議論されてきたが、最近になってその他にRDR6の関与する経路(RDR6-RdDM)が存在する可能性が注目されるようになった。今回著者らはRDR6-RdDMの特徴をつかむ目的でRDR6によりsiRNA生成されるTEsのゲノムワイドな解析を行なった。その結果、転写が活性化する条件下でRDR6により生成されるsiRNA量が特異的に増加する2つのTEサブファミリーが同定された。それらを更に調査した結果、RDR6-RdDMはPOLⅣ-RdDMとは独立してサイレンシングの新規確立と再構成の両者に機能することが明らかになった。

田中担当

20130910
Nina V. Fedoroff (2012)
Science 338, 758-767
Transposable Elements, Epigenetics, and Genome Evolution

20世紀終わりごろから、トランスポゾンがエピジェネティックなメカニズムに多大な影響をもたらしている事が注目されるようになった。特に、植物は動かずに環境に適応するため、動物よりエピジェネティックなメカニズムを進化させているはずである。これには大きく分けると、ヒストン修飾、DNAのメチル化、RNA依存性DNAメチル化の三つがある。また、真核生物はエピジェネティックなサイレンシングにより、トランスポゾンを蓄積させたことを筆者は強く主張している。

升田担当

20130902
Gabriel Castrillo et al. (2013)
Plant Cell 10.1105/tpc.113.114009
WRKY6 Transcription Factor Restricts Arsenate Uptake and Transposon Activation in Arabidopsis

ヒ素は植物にとって大きなストレス要因である。ヒ素は主にヒ酸(As(V))の形で自然界に存在する。ヒ酸への抵抗は植物が生き残ってくる上で重要な戦略の一つである。ヒ酸抵抗に関する研究は多くなされてきたが、ヒ酸の感受に関する研究はあまりなされていない。この研究では主にヒ酸感受に関わる分子メカニズムを調査した。ヒ酸はリン酸塩と似ておりリン酸輸送体を介して細胞内へと取り込まれる。リン酸輸送体の一つであるPHT1;1はPiよりもAs(V)に応答して発現が抑制される。その抑制は急速なものであり、逆にAs(V)がなくなると即座にその発現は元に戻る。またPHT1;1は抑制されると同時に膜からエンドサイトーシスを介して液胞へと輸送され。As(V)はPHT1;1以外にもいくつかの遺伝子の発現を抑制しており、それらの遺伝子のプロモーター領域にはAREというシスエレメントが存在していた。さらにPHT1;1のAREエレメントもその配列がAs(V)による抑制に重要であるとわかった。AREに結合する候補としてWRKY6が同定され、実際にWRKY6はPHT1;1の抑制に必要であり、その過剰発現体ではPHT1;1は発現が低下し、欠失変異体ではAs(V)存在下でもPHT;1の発現が減少しなかった。As(V)によって発現が抑制される遺伝子の約半分はトランスポゾンであった。さらにその活性化はWRKY6によって抑制されているとわかった。実際WRKY6を過剰発現させるとAs(V)存在下でもトランスポゾンの活性化はほとんど見られなかった。これらのトランスポゾンにはW-boxというシスエレメントが存在し、W-boxとWRKY6が相互作用することで抑制が起こっていることが明らかになった。WRKY6はAs(V)の取り込みの抑制と同時にトランスポゾンの活性化も抑制していると明らかになった。これらのトランスポゾンは一般的にサイレンシングのマーカーとなるH3K9me2と活性化のマーカーH3Acの2つのヒストン修飾のパターンがAs(V)によって発現される前後で変化せず、発現が見られないサイレンシングされている他のトランスポゾンと同じパターンを示した。これは他のサイレンシングの解除機構によってこれらのトランスポゾンは制御されていることを示唆した。

松永担当

20130809
Si-Hui Zhong et al. (2013)
PNAS 110, 9171?9176
Warm temperatures induce transgenerational epigenetic release of RNA silencing by inhibiting siRNA biogenesis in Arabidopsis

植物は周囲の温度変化に迅速かつ可逆的に対応するように、GeneticあるいはEpigeneticな制御システムを進化させてきた。しかし、穏やかな温度上昇といった、マイルドなストレスに対する応答性については、よく明らかになっていない。今回、シロイヌナズナ受容体BRI1と、イネ病原菌認識受容体XA21の新規キメラ受容体NRG1を作製し、シロイヌナズナに導入したところ、sense transgene-mediated posttranscriptional gene silencing (S-PTGS) を引き起こした。さらに、NRG1を導入したシロイヌナズナを30℃で生育したところ、S-PTGSが抑制されることがわかった。また、このエピジェネティックな形質は世代を超えて遺伝することがわかった。30℃生育下でのS-PTGSの抑制は、RDR6によるdsRNA生合成の抑制が原因と推測されていたが、BRI1のantisense転写産物は、NRG1導入植物を30℃で生育させたときにも確認できた。さらに調査したところ、30℃生育下ではRDR6のタンパク質、酵素活性に影響はみられず、SGS3タンパク質の存在量が減少していた。このことから、30℃で生育させたシロイヌナズナでは、SGS3タンパク質が減少し、S-PTGSが抑制されることが示唆され、温度とエピジェネティクスの新たな関係性について報告することができた。

山岸担当

20130710
Qianwen Sun et al. (2013)
Science 340, 619-621
R-Loop Stabilization Represses Antisense Transcription at the Arabidopsis FLC Locus

FLOWERING LOCUS C (FLC)遺伝子はそのantisense転写産物であるCOOLAIRによってヒストン修飾などを介した転写抑制を受けることが知られている。ホメオドメインタンパクであるAtNDXはCOOLAIRのプロモーター周辺に形成されるR-loop構造内のssDNAに結合し、R-loopの構造を安定化させることでCOOLAIRの転写を抑制する。R-loopは発見された当初は非常に珍しい構造だと思われていたが、最近ではゲノムの安定性を決める要因の一つとして着目されている。今回の結果はR-loop 構造が他の因子との相互作用を介してlcnRNAの発現調節に関与する実際の例の1つを示したものである。

升田担当

20130621
Leonie Suter et al.(2013)
PLos ONE 8, e60364
Environmental Heat and Salt Stress Induce Transgenerational Phenotypic Changes in Arabidopsis thaliana

植物は環境の変化に生き残るために適応する必要がある。エピジェネティックな変化は環境からのシグナルに素早く反応し遺伝子の発現を変化させることができる。環境状態によって誘導された変化が遺伝するかはこれまでも多くの議論がなされてきたが、今回の実験によりエピジェネティックな変化が遺伝すると示唆された。2つのエコタイプを用いて生殖細胞が分化する前の生育段階で熱と塩ストレスを3世代に渡って与え続け、2つの純系およびそれらの掛け合わせの4世代目(G4)でそれらのストレスを与えるまたは与えずに観察した。熱ストレスでは片方の純系においてのみG4でストレスがないときに花成が早まるのが観察された。また塩ストレスでは相互の掛け合わせのうちひとつでのみG4が塩ストレス下で塩耐性の高まるのが見られた。またこれらの変化はG4でストレスを与えないとき5世代目では消えてしまった。これらから環境ストレスによって世代を超えた表現形の変化を引き起こすことまた母性、父性どちらの遺伝でも効果が見られ、環境による変化の両方の性からのエピジェネティックな遺伝が示唆された。観察された影響がエコタイプによって異なり、遺伝子配列と引き起こされたエピジェネティックな遺伝の間には相互に関連があるとも示唆された。

田中担当

20130612
Tim R Mercer & John S Mattick (2013)
Nature Structual & molecular biology 20, 300?307
Structure and function of long noncoding RNAs in epigenetic regulation

世界的な転写の分析により、lncRNAがゲノムの大部分で転写されていることがわかっている。しかし、研究が速く進み過ぎて収集がつかなくなっているため、「lncRNAについて整理」したのがこのREVIEWである。まとめとして、以下の三点が挙げられる。①細胞には様々なlncRNAがあり、遺伝子発現の調節をしている。②情報伝達、ガイド分子、足場として働く。③エピジェネティックな調節ネットワークの一部であろう。lncRNAはたくさん見つかっているが種類分けができていない。また、多くのゲノム情報を調節していると考えられているが研究が不十分である。このため、今後はこの二点について研究を進める事が課題である。

松永担当

20130522
Andrzej T et al. (2012)
Genes & Dev. 26, 1825-1836
Spatial and functional relationships among Pol V-associated loci, Pol IV-dependent siRNAs, and cytosine methylation in the Arabidopsis epigenome

現在の、シロイヌナズナにおけるRNA-directed DNA methylation (RdDM) のモデルは、PolIV由来のsiRNAと、PolV転写産物が一致する、少数のde novoメチル化サイトから予測されたものである。このモデルがゲノムワイドで適用できるか検証するため、PolV ChIP-seq、ゲノムワイドバイサルファイトマッピング、small RNA seqを行った。多くのPolV associated lociではDNAシトシンのメチル化、siRNA biogenesis siteが一致し、現在のモデルに適合すると考えられる。しかし、1/4のPolV associated lociでは一致しない結果となった。また、50%のPolV associated lociに共通するコンセンサス配列がみつかったものの、PolV occupancyを説明するのに十分とは言えない。さらにPolIV、PolVはCHHメチル化の直接的な触媒活性はなく、ターゲッティングを担っていることが示唆される結果も得られた。

山岸担当

20130508
Filippo M. Cernilogar et al. (2011)
Nature 480, 391?395
Chromatin-associated RNA interference components contribute to transcriptional regulation in Drosophila

RNAi経路について転写後制御の経路については今までよく報告されてきたのに対して、転写自体の制御におけるRNAi因子の機能はあまり知られていなかった。しかし今回の実験により、DrosophilaのRNAi因子であるAGO2とDCR2はユークロマチン上に広く分布し、POLⅡなどの転写因子や転写調節因子との直接的な相互作用により遺伝子発現を転写レベルで調節する機能をもつ可能性が示唆された。さらにAGO2とDCR2がもつこの機能はheat shock後の遺伝子発現調節が正常に行なわれるために重要であることも示された。

升田担当

20130410
Xi Wang et al. (2013)
PLoS Genetics 9, e1003255
Transposon Variants and Their Effects on Gene Expression in Arabidopsis

TEは多くの植物においてゲノムの大部分を占めている。またTEの転写や転移の制御はsiRNAやエピジェネティックなマークによってなされている。TEとsiRNAを介した制御の相互作用を解析するためにCol-0、Bur-0、C24という3つのシロイヌナズナのラインを用いてゲノムワイドにTE、siRNA、そして遺伝子の発現や配列、そしてそれらの有無を解析した。遺伝子近傍にTEがあるか、あるときそのTEの配列が系統間で違いがあるかで遺伝子の発現レベルに違いがみられた。またTEと遺伝子の発現レベルの間には正の相関が見られ、遺伝子近傍にあるTEの数と遺伝子の発現レベルの間には負の相関が見られた。24nt siRNAを調べると、多数の位置で検出されるsiRNA(msiRNA)が検出されるTEは1箇所でのみ検出されるsiRNA(usiRNA)が検出されるTEよりも遺伝子から遺伝子から近い傾向が見られた。さらにsiRNA、特にusiRNAはTE中の配列が系統間で異なっている配列でより多く検出される。これらよりusiRNAにターゲットされるTE配列はより配列に欠失が起こりやすいと示唆される。つまりこれらの結果からTEがsiRNAのターゲットにされることは配列の変化に影響を与え、その結果として遺伝子発現の進化が起こるのだろうと示唆された。

2012年度

升田担当

20121002
Christina Lang-Mladek et al. (2010)
Molecular Plant 3, 594-602
Transgenerational Inheritance and Resetting of Stress-Induced Loss of Epifenetic Gene Silencing in Arabidopsis

植物はさまざまに環境の変化に応答する。すでにサイレンシングされてしまったGUS導入遺伝子を持った個体に温度や紫外線といったストレスを与えると、GUSのサイレンシングが解除され、再び発現が見られるようになった。さらにGUSだけでなく内生のトランスポゾンも同様にストレス処理によってサイレンシングが解除されているものがあった。このサイレンシングの解除は2?3世代のみ次世代に伝わる。しかし遺伝は個体全体ではなく、いくつかの小さなエリアの細胞に限られており、サイレンシングが発達後期におこりこの遺伝が確率論的に起きていることを示唆した。さらに休止段階の世代を超えるストレス効果を調べるために種収穫後から播くまでの時間を変化させると、時間がたつほどサイレンシングの解除は弱まっていた。サイレンシングされた遺伝子座における発現変化はDNAメチル化パターンの影響を受けることが多い。そこで、サイレンシングが解かれたGUSや内生トランスポゾンにおいてメチル化レベルを調べたが、メチル化レベルに大きな違いは見られなかった。しかしヒストンアセチル化には大きな変化が見られた。さらに熱と紫外線といったかかるストレスによってもヒストンアセチル化に違いがあった。これらからストレス誘導性のヒストンアセチル化の変化とサイレンシングの解除には関係があると示唆され、ヒストン脱アセチル化酵素HDA6の欠失体では確かにサイレンシングされていた遺伝子の転写増加が確認された。つまり温度や紫外線といったストレスは植物の内生トランスポゾンなどのサイレンシングを緩和し、それはヒストンアセチル化の増加と関連がある。しかし次世代への遺伝は限定的であると示唆された。

山岸担当

20121015
Patrice Dunoyer et al. (2010)
The EMBO Journal 29, 1699-1712
An endogenous, systemic RNAi pathway in plants

Inverted Repeat (IR)配列はヘアピン構造のdsRNAの鋳型となることからsRNAを介した遺伝子の発現調節機構への寄与の可能性が着目されている。以前の研究では植物体に導入された外来IRによるRNAiを介した内在遺伝子の発現調節が観察された。今回の実験では2つの内在IRに着目し、これらが外来IRと同様の生成過程や長距離輸送などを含む機構によりpost transcriptional gene silencing やRNA directed DNA metylatinに機能することを示唆する結果が得られた。また、これらのIRはその種類や存在するエコタイプによって、生成されるsiRNAのサイズ、局在場所、ストレス下での蓄積量などに違いがみられる。このことは、これらのIRが環境ストレス応答の一部としての進化を遂げた例であり、IRの中には植物の周囲の環境に対するストレス応答と密接な特異的機能をもつように進化してきたものが存在する可能性を示している。

松永担当

20121108
Ales Pecinka et al. (2010)
The Plant Cell 22, 3118?3129
Epigenetic Regulation of Repetitive Elements Is Attenuated by Prolonged Heat Stress in Arabidopsis

植物は周囲の温度変化に対し、様々な形で応答していることが知られている。我々は今回、シロイヌナズナにおいて、高温ストレスに応答する様々な反復因子について報告する。これら反復因子の活性は、一過的なものであり、その活性化パターンは因子によって異なっていた。また、これらの活性化は大幅なDNAシトシンの脱メチル化、ヒストン修飾の変化に因らず、nucleosome occupancyの減少、あるいはヘテロクロマチンの脱凝縮によって引き起こされていた。一方で、この活性化は一過的なもので、直ちに再サイレンシングされる。クロマチンのアセンブリを担う因子の変異体では、再サイレンシングが遅れることがわかった。これらの点から高温ストレスによる反復因子の活性化は大きなエピジェネティックな変化はなく、一過的に起こることが示唆された。

升田担当

20121121
Guillaume Moissiard et al. (2012)
Science 336, 1448
MORC Family ATPases Required for Heterochromation Condensation and Gene Silencing

これまでの実験からCMT3とDRM2の重複した作用によってサイレンシングされているとわかっているSDCという遺伝子のプロモーターを用いてSDC::GFP遺伝子を導入した。このときwtではGFPの発現はサイレンシングによってwt,cmt3,drm2では見られないが、cmt3とdrm2の二重変異体では発現が見られる。Cmt3、drm2にSDC::GFP遺伝子を導入したラインにおいて変異原処理でGFPの発現がみられる個体を探索すると2つのラインがとれてきて、それらではAtMORC6とAtMORC1に変異が入っていた。これらの変異体では多くのTEsが発現上昇していた。しかし、それらのTEのメチル化レベル、H3K9me2、siRNA量に変化はなかった。つまりAtMORC1,6はそれらの維持に必要ではなく、DNAメチル化の下流または新しいメカニズムによってサイレンシングを起こしていると示唆された。クロマチンの相互作用をHi-C解析により調べるとAtMORC1,6の変異体ではユークロマチンの腕と染色体の動原体周囲の領域の間の相互作用が増加していた。このことからAtMORC1、6は動原体周囲のヘテロクロマチンの凝集、それによる遺伝子サイレンシングを行うのではないかと示唆された。またMORCのホモログのひとつである線虫のmorc-1は遺伝子サイレンシングを担っていると報告されており、これらからMORCファミリーは真核生物においてクロマチン構成と遺伝子サイレンシングの制御には働いていると示唆された。

山岸担当

20121207
Joseph P. Calarco et al. (2012)
Cell 151, 194-205
Reprograming of DNA Methylation in Pollen Guides Epigenetic Inheritance via Small RNA

花粉を構成する3種の細胞(microspore MS, vegetative nucleus VN, sperm cell SC)それぞれでのメチローム解析解析により、細胞種間でのDNAメチル化レベルの比較がなされた。その結果、レトロトランスポゾンのCHHメチル化レベルはMSとSCで減少し、VNやembryoで高く維持されていた。さらにいくつかの実験によりこのVNやembryoでのCHH高メチル化レベルは24 nt siRNAを介した新規のDNAメチル化によることが示唆された。また、VNではエピアレルやインプリントジーン近傍のトランスポゾン内のDNAグリコシラーゼのターゲット領域のCGメチル化が減少していた。こうした細胞種間でのDNAメチル化レベルの違いはトランスポゾンサイレンシングやインプリントジーンの機構に寄与している可能性がある。ほ乳類ほど知られていないが、植物においても生殖細胞におけるエピジェネティック修飾のリプログラミングが重要な機能を担うことが示唆された。

松永担当

20130110
Devin Coleman-Derr and Daniel Zilberman (2012)
PLoS Genetics 8(10), e1002988
Deposition of Histone Variant H2A.Z within Gene Bodies Regulates Responsive Genes

真核生物に広く保存されているヒストンバリアントのH2A.Zは、転写開始点に局在していることが報告されている。近年シロイヌナズナにおいて、ゲノムワイドにヒストンH2A.Zの局在とDNAメチル化に反相関の関係があることが報告された。しかし、シロイヌナズナにおいてヒストンH2A.Zのloss-of-functionラインを用いた解析から、遺伝子領域でのDNAメチル化状態は野生型と大きな変化はないことがわかった。従って、反相関の関係はDNAメチル化が、ヒストンH2A.Zの結合を妨げていることが原因と考えられる。また、ヒストンH2A.Zは環境に応答する遺伝子(responsive genes)の制御と関係していることが報告されていた。ゲノムワイドにヒストンH2A.Zの局在を調べたところ、responsive gensでは、gene bodyに局在していることがわかった。遺伝子の発現レベルと、ヒストンH2A.Zの局在比較から、gene bodyがメチル化されている遺伝子ではH2A.Zが結合できずに、安定した遺伝子発現を行うが、gene bodyにH2A.Zが局在している遺伝子は、環境ストレスに高い応答性を示すことがわかった。

升田担当

20130125
Xuehua Zhong et al. (2012)
nature structural & molecular biology 19(9), 870-786
DDR complex facilitates global association of RNA polymeraseⅤ to promoters and evolutionarily young transposons

POLⅣ、ⅤはPOLⅡから進化し、ゲノムやトランスポゾンで新規のメチル化をターゲットとするようにRdDMで働く。POLⅣは24nt siRNAのゲノム全体での生産、POLⅤはRdDM下流で働く。AGO4やSOT5LはPOLⅤの下流で働くが、DDRというクロマチンリモデリング複合体はPOLⅤの上流で働く。DDR複合体はDRD1、DMS3、RDM1タンパクによって構成される。
ChIo-seqを用いて、PolⅤ最大のサブユニットであるNROE1のゲノムワイドのマップを作成した。すると動原体周囲のヘテロクロマチンでは豊富だが、セントロメア領域では豊富でなかった。Wtとnrpe1の変異体を用いてsmall RNA-seqとゲノムバイサルファイトseqを行ったところ、変異体のNRPE1結合領域でDNAメチル化レベルが高く、wtではCHHやCHGのメチル化が低下しており、NRPE1依存的であるとわかった。また24nt RNAもwtのNRPE1結合領域で豊富であり、変異体では低下することからNRPE1依存的24nt RNAが豊富であるとわかった。クロマチン構成要素の3つのサブユニットの変異体でNRPE1が豊富に結合する部位を調べるとNRPE1の豊富さは減少していた。しかしタンパクレベルではwtと変化がなかったことからDDR複合体はPOLⅤとそのクロマチンターゲットの結合を促進していると示唆された。NRPE1結合サイトは明らかに遺伝子プロモーター領域に多く見られた。NRPE1が多い領域ではさらにDNAメチル化や24nt small RNAが多かった。また多かれ少なかれプロモーター領域はNRPE1が存在しており、これらは遺伝子のプロモーターがPOLⅤを弱いあるいは一過的な方法でリクルートすることを示唆している。NRPE1はトランスポゾンにも多く見られ、NRPE1が結合したトランスポゾンは非NRPE1結合のトランスポゾンよりもメチル化レベルが高く24nt small RNAが多かった。これらはRdDMの一般的なモデル、トランスポゾンのような領域が主なターゲットであるというのを支持している。しかし同時に近くにトランスポゾンがあるプロモーターは特にPOLⅤのターゲットとなるとも支持している。POLⅤの結合サイトを見ると、進化的に若いトランスポゾンにおいて多く、トランスポゾンの年齢がPOLⅤのターゲットとなるかを左右することが示唆された。

山岸担当

20130222
Andrea D. McCue et al. (2012)
PLoS Genetics 8(2), e1002474
Gene Expression and Stress Response Mediated by the Epigenetic Regulation of a Transposable Element Small RNA

先行研究での配列データベース解析により、Transposable Element (TE)であるAthila6由来のmiRNA854が宿主のUBP1b遺伝子の転写後調節に作用する可能性が示唆された。 UBP1bはストレス下においてmRNAの翻訳調節に関わると考えられるストレス顆粒の構成因子であり、植物のストレス応答において重要であると考えられている。今回の研究では実際にsiRNA854がAthila6から生成され、UBP1b 3’UTR内のターゲット配列との相互作用により発現調節機能をもつことが示された。これまでトランスポゾンは自らのエピジェネティック修飾の変化を介して近傍の遺伝子発現をシスに制御することが知られてきたが、今回の結果はTE由来のsiRNAが宿主のストレス応答関連の遺伝子を直接ターゲットとする発現調節機構が存在することを示唆している。

松永担当

20130322
Misuzu Nosaka et al. (2012)
PLoS Genetics 8(9), e1002953
Role of Transposon-Derived Small RNAs in the Interplay between Genomes and Parasitic DNA in Rice

Transposable elements (TEs) は真核生物ゲノムの主要な構成要素であり、genomic parasitesとも表現される。トランスポゾンの活性はホストゲノムの安定性に影響を与えるため、RNA silencingなどのホスト側の防御機構によって、その多くが抑制されている。イネのCACTA DNAトランスポゾン内に存在するmicroRNA820 (miR820) は、de novo DNAメチル化酵素遺伝子であるOsDRM2をターゲットに、その発現を負に制御している。さらに、OsDRM2の発現抑制によって、いくつかのTEsのDNAメチル化レベルが減少し、発現レベルが上昇することがわかった。またある種のイネゲノムでは、miR820とOsDRM2のターゲット配列の塩基に置換があるものの、塩基対の形成能を維持したまま共進化していることがわかった。これらの結果から、トランスポゾンが、宿主の防御機構を回避していることが示唆された。

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  • 孫くんの送別会を行いました。

  • 学位授与式が行われました。 ご卒業おめでとうございます。

  • ラボの忘年会を行いました。今年は餃子パーティーです。