弟子屈付近の地震活動





この地域は、昔から浅発地震活動が活発であり、2つの活火山(雌阿寒岳、アトサヌプリ)が存在するなど、火山活動に関係する地震が発生している。この地域に当センターでは、地震及び地殻変動を監視する目的で1983年に弟子屈観測点(TES)が設置された。
1994年3月頃からこの地域に地震活動が活発し、この地域の地震活動を把握する目的で、6月29日からアトサヌプリ火山に近い、仁伏地区に地震計(上下動成分のみ)を設置した(仁伏観測点)。
下の図は、94年1月から96年5月まで、3観測点以上で観測された地震の震源を示している。




大きな地震は、94年6月頃に集中して起きていることが分かる。この時期にM3.3の地震を観測している。下図は、94年1月から96年1月までの仁伏観測点で観測された地震の日別数を示している。但し、6月28日までは弟子屈観測点での日別数を示している。上図の時系列分布が示しているように、震源は仁伏観測点のほうが弟子屈観測点よりも近く、弟子屈観測点は地質的な影響で小さな地震を検出するのは困難なため、数は少なく見えるが、実際にはその後の活動よりも多い可能性がある。
次に、仁伏観測点が設置された後の地震の数を見ると、10月4日に23個、5日に31個観測されている。10月4日22時23分には、北海道東方沖地震が発生している。この時期に数が増えたことは、東方沖地震によって地震が誘発されたのかもしれない。




その後、95年11月と96年1月に数が増えているが、現在はほとんど観測されていない。
また、弟子屈地域では、このような地震活動をふまえて、観測体制を強化する目的で、96年から仁多、屈斜路に地震計と体積ひずみ計を設置した。また、虹別地区に地電位を観測するための電極を設置した(VAN法)。その他にも、この地域の地下構造を調べるために地震計のアレー(郡列)観測も実施している。

参考文献

本谷ほか、1996、北海道東部弟子屈地域、アトサヌプリ周辺の地震活動、北海道大学地球物理学研究報告、59,211-220.
札幌管区気象台地震速報(1994)