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地震に関すること 火山に関すること 津波に関すること その他
質問と回答

Q20. 阿蘇山の火口の中にある水は、雨水だと聞きましたが、エメラルドグリーンに見えるのはなぜですか?

A. ごらんになったのは、阿蘇山中岳第1火口の火口湖ですね。地元では「湯だまり」と呼ばれています。この湯だまりは、単に雨水が火口にたまった水たまりではありません。おそらく、表面からもうもうと湯気が立っているのが見えたと思いますが、お湯の温度は60~70℃もあるのです。

京都大学などの研究によれば、このように高温になっているのは、火口の底から熱い火山ガス(ほとんどは水蒸気です)や温泉が噴き出してきているからだと考えられています。湯だまりにはもちろん雨水も流れ込みますが、それだけでは湯気となって蒸発するのに追いつきません。地下から水蒸気や温泉が吹き出してこなければ、1ヶ月ほどで湯だまりはなくなってしまうでしょう。

この湯だまりに吹き込んでいる火山ガスの9割程度は水蒸気ですが、それ以外にもいろいろな化学物質が含まれています。湯だまりには常にこうした化学物質が地下から運ばれてくる一方で、表面ではお湯が水蒸気となって蒸発するために、化学物質は「煮詰められ」だんだんと濃くなっていきます。そして湯だまりは、ついには岩石をも溶かしてしまうほどの性質を持つようになります(レモン汁に10円玉を浸けておくと表面の汚れが溶け落ちてピカピカになるのと同じ性質で、強酸性と呼ばれます)。つまり、湯だまりは単に雨水が温められたものではなく、火山ガスや岩石から溶け出した成分など、さまざまな物質を溶かし込んだ強烈な温泉であるということなのです。

ちなみに、湯だまりの色は時期によって変わります。もっと緑色が濃いこともあれば、明るい灰色になることもあります。おそらく、色の変化はお湯に含まれる成分の変化を表しているのでしょう。ということは、火山ガスの成分や吹き込む量にも関係があるはずです。このため、阿蘇の湯だまりに限らず、火口湖の色の変化を観測して火山の状態の変化をいち早く察知しようという研究も行われています。次にこまちさんが阿蘇山を訪れたときには、湯だまりは違った色になっているかもしれませんよ。

この質問は、夏休みの自由研究の一部のようですね。温泉にはどのような成分が含まれていて、どの成分がどんな色を出すのかについて、図書館やインターネットなどで調べてみてはどうでしょう。その結果をもとに、阿蘇の湯だまりに含まれている成分を推測してみるのも面白いと思います。

(火山活動研究分野・橋本武志)