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地震に関すること 火山に関すること 津波に関すること その他
質問と回答

Q29. 最近活動が活発になってきた霧島周辺の火山が大規模な噴火をするようになった場合に、北海道ではどのような影響が想定されますか?

A. ご質問ありがとうございます。

霧島周辺の火山ということで、中部~南九州の阿蘇山、霧島山、桜島などが大規模な噴火をするようになった場合に、北海道にどのような影響が考えられるか、についてお答えします。大規模な噴火といっても、その大きさによって影響の及ぶ範囲はかなり違いますので、過去に起こった実際の噴火との比較で考えてみたいと思います。

霧島山の新燃岳は2011年の1月に噴火しましたが、この噴火で放出されたマグマは、0.02立方キロメートル程度と見積もられています。地元では大量の火山灰が降り、日常生活や観光にも影響が出ましたが、北海道への直接的影響はありませんでした。霧島山は1716年にこの10倍程度のマグマを出す噴火を経験していますが、これでも北海道への直接的な被害はなかっただろうと考えられます。また、桜島はここ数年、1年あたりの爆発回数が1000回を超える活動を見せています。まれに高さ5000mを超える噴煙を上げる爆発をしますが、ご存知のように北海道まで直接の被害は及んでいません。北海道と南九州は1500キロほど離れていますので、この程度の噴火では直接的な被害が及ぶことはまずないと言えます。

一方、阿蘇山では、約9万年前にカルデラを形成する最後の噴火が起こったとされていますが、このときの噴出物量は100立方キロメートルを超えており、中部九州の大半に火砕流が到達したと考えられています。また、当時の火山灰は北海道の地層にも残っています。もし現在、これと同様の噴火が起こったとしたら、九州が壊滅状態になることはもちろん、北海道にも甚大な影響が出ることは疑いありません。火山灰が降り積もると、農作物に被害が出ますし、交通も麻痺してしまいます。さらに、大量の火山灰が大気中に長期間とどまり日光が遮られますので、何年にもわたって地球規模の寒冷化が起こると考えられています。

上に書いたことは、霧島山と桜島は安全で、阿蘇山は危険な火山だという意味ではありません。現在の阿蘇山、霧島山、桜島などの火山活動が、カルデラを形成するような巨大噴火に発展する兆候はありませんが、数万年という時間スケールで考えた場合には、地球上のどこかで同程度の噴火は起こる可能性が高いと考えていただければと思います。

(火山活動研究分野・橋本武志)