2020年度第6回雑誌会(2020.07.06)

2020 年度第6回雑誌会
日時:07月06日(月)15:00-16:30
場所:オンライン開催


発表者:遠藤(B4)

タイトル:High-resolution imaging of hydrothermal heat flux using optical and thermal Structure-from-Motion photogrammetry
著者:A. Lewis, R. Sare, J.L. Lewicki, G.E. Hilley
雑誌:Journal of Volcanology and Geothermal Research 393 (2020) 106818, doi:10.1016/j.jvolgeores.2020.106818

要旨:

衛星観測での⾒かけの表⾯温度と放射熱流量の測定は,広範囲の粗い画像を提供するのに対し,その場観測では⼩さい範囲の⾼い時間分解能でより正確なデータを収集できる.熱⾚外カメラを使った撮影はそれらの間のスケールの観測である.最近の研究では無⼈航空機システム(UAS)を使⽤した観測が⾏われているが,SN⽐が⼤きい環境下でのみ適⽤可能である,低解像度,狭い画⾓により不⼗分な結果が得られるといった問題点がある.

本研究では,アメリカ・カリフォルニア州のSN⽐が⼩さい3地点で地上から昼間に光学画像,夜間に光学画像と同じ位置・カメラ⾓度で熱⾚外画像を撮影した.光学画像にStructure from Motion(SfM)を適⽤し,3次元モデルを作成した.この時決定された光学カメラのカメラ位置・⾓度を熱⾚外画像に適⽤することで,⾒かけの表⾯温度と放射熱流量の⾼解像度オルソ補正マップの作成を⾏った.

今回の⼿法はSN⽐が⼩さい場所で,その場観測と衛星観測の間のスケールでの観測となる.熱⾚外画像のみのSfMと⽐較して,光学画像を合わせて使うことで3D精度,点密度,信頼性が向上した.しかし観測地点と対象間での蒸気噴出,サブピクセルの温度変化,放射率の空間変動の誤推定といった影響により⾒かけの表⾯温度を過⼩評価している可能性があるため,⾒かけの表⾯温度とその場観測の温度を⽐較し,これらの影響を検討する必要がある.


発表者 :後藤(B4)
タイトル:Underwater and drone based photogrammetry reveals control at Geysir geothermal field in Iceland
著者 :Thomas R.Walter, Philippe Jousset, Masoud Allahbakhshi, Tanja Witt, Magnus T.Gudmundsson,Gylfi Pall Hersir
雑誌 :Journal of Volcanology and Geothermal Research Volume 391, 1 February 2020, 106282, doi:10.1016/j.jvolgeores.2018.01.010

要旨 :

間⽋泉は,周期的な噴出を伴う局所的な熱⽔湧出孔である.多くの場合,管理区域内にあるため,間⽋泉の原動⼒や⽕道形状はほとんど知られていない.アイスランドのギェイシル地熱帯における深部の現象と表⾯での現象との関連性をよりよく理解するために,2016 年 6⽉ 27 ⽇から 8 ⽉ 5 ⽇にかけて,リニアメントやホットスポットの空間分布とテクトニックな構造の関係について明らかにするための調査が⾏われた.無⼈航空機(UAV)に搭載した⾼解像度の光学カメラおよび熱⾚外カメラを使⽤することで,1500 枚以上の光学画像,7000 以上の熱⾚外画像を取得した.その際,光学カメラは⽇中に,⾚外線カメラは夜間に撮影した.取得した光学画像,熱⾚外画像それぞれに Structure from Motion(SfM)処理を⾏うことで三次元モデルを作成した.作成した三次元モデルから表⾯現象の特徴を解析した.まず,光学画像から作成したデジタル標⾼モデルにおけるリニアメントはバイモーダルな分布を⽰し,NNE-SSW,E-W ⽅向が⽀配的であった.これはリニアメントが地形傾斜と平⾏に分布する河川と,テクトニックな構造と平⾏に分布するものに⼤別されることを⽰している.熱⾚外画像によって,エリア全体に分布する 364 の異なるサーマルスポットが識別された. サーマルスポットの 98%以上はメインエリアに存在し,テクトニックな構造と平⾏に配列している. さらに,⽔中カメラを使⽤することで,深度 20 m を超えるグレートギェイシル間⽋泉,ストロックル間⽋泉から詳細な画像を初めて取得できた.グレートギェイシル間⽋泉の⽕道形状は,表⾯近くではほぼ円形だが,深さが 9‒12 m になると,細⻑い⻲裂に変わることが分かった.ストロックル間⽋泉の⽕道形状も,表⾯に近い部分では円形で,深くなるにつれ楕円形に,そして⻲裂が⼊ることが明らかになった.これらの深い⻲裂の伸⻑⽅向は,地表⾯で確認されたサーマルスポットの配列⽅向と⼀致している.これはギェイシル地熱地帯がテクトニックな構造によって⽀配されていることを⽰唆し,近傍の地震によって活動の変化が引き起こされるメカニズムと関係している可能性がある.


発表者: 中島
タイトル: Did ice-charging generate volcanic lightning during the 2016–2017 eruption of Bogoslof volcano, Alaska?
著者: Van Eaton, Alexa R., David J. Schneider, Cassandra M. Smith, Matthew M. Haney, John J. Lyons, Ryan Said, Robert H. Holzworth, Larry G. Mastin
雑誌 : Bulletin of Volcanology (2020) 82: 24, 出版年⽉⽇: 2020年2⽉6⽇, doi:10.1007/s00445-019-1350-5

要旨:

今回紹介するVan Eaton et al. (2020) では、2016年12⽉から2017年8⽉にかけてアラスカ・ボゴスロフ⽕⼭で発⽣した噴⽕活動の観測成果と⼀次元噴煙モデル計算から本活動に伴う⽕⼭雷の発⽣要因を明らかにするとともに、噴⽕監視に対する⽕⼭雷観測の応⽤範囲を理解することを⽬指した。

先⾏研究によると、⽕⼭噴⽕に伴う電気的信号は⼤まかに三つに分けられる。そのうちの⼀つに噴煙中の雷光 (plume lightning) がある。これは噴煙柱が対流を引き起こした際に発⽣する。この現象が普通の雷⾬や⼭⽕事に伴う雷のように氷による帯電 (icecharging) によるか、砂嵐や塵旋⾵の際に確認できるケイ酸塩による帯電 (silicatecharging) によるか、もしくは双⽅によるのか、は未だ明らかでない。2016–2017年のボゴスロフ⽕⼭噴⽕は観測及び噴⽕活動の条件が良く、この疑問を探求するには絶好の機会であった。

研究対象地域のボゴスロフ⽕⼭はアリューシャン列島東端近くに位置する⽕⼭島である。研究対象となる噴⽕活動は本源⽞武岩質マグマと海⽔が接触して発⽣したスルツェイ式噴⽕であった。活動は主として浅い海の下で推移したが、⼤気中でも少なくとも2度のドーム成⻑が確認されている。本活動では9ヶ⽉の間に70件の独⽴した爆発を記録した。

本紹介論⽂ではともにグローバル雷観測網である、ワシントン⼤学が運⽤するWWLLN (World Wide Lightning Location Network) 及びVAISALA社が提供するGLD (Global Lightning Dataset) 360 のデータを主に使⽤した。これらは雷撃 (stroke) に伴うVLF (Very Low Frequency; 3–30 kHz) 帯電波の放射を世界中に展開されるアンテナで捉え、雷の発⽣を検知する。VLF帯電波は電離圏で反射するため、数千 km伝播することができる。そのため、⼗分なエネルギーで放射されてさえいれば地球上のどこで発⽣した雷であっても検出し、発⽣時刻と⼆次元位置を得ることができる。

著者らはこれらの成果を⼆つのデータセットへと整理した。⼀つは通常通りの⽅法で算出されたWWLLNGLD360の解析成果を合わせたもので、4550件以上の爆発に伴う雷撃信号が得られた。加えて、⽕⼭に最も近いGLD360の観測点⼆点のみを使⽤し、雷撃の発⽣時刻及び位置を推定した。これにより前者と⽐べて位置の精度が低く雑⾳が⼤きいものの、より低電流の雷撃 (< 2 kA) への感度を持たせることができる。したがってより早く活動が検出できる可能性があるため、早期警戒への応⽤が期待できる。

このデータセットを研究対象地域から約60 km南のオクモク⽕⼭に設置されたマイクロフォン観測データ中の⽕⼭雷由来信号及びそのケーブルで発⽣する⽕⼭雷に伴うグリッチ (電気的雑⾳) 信号の検出成果とともにまとめた。そして、他の観測 (衛星観測から推定される噴煙柱⾼度及び質量噴出率、衛星画像、写真、超低周波⾳観測) や⼀次元噴煙モデル “Plumeria” の計算結果と⽐較した。その結果、⼩・中強度の質量噴出率 (104–106 kg/s) の噴⽕の際にはグローバル観測網で検出できる規模の⽕⼭雷の発⽣に氷が触媒として作⽤するようである、と著者らは結論づけた。その他詳細については当⽇紹介する。