2020年度第7回雑誌会(2020.07.13)

2020 年度第7回雑誌会
日時:07月13日(月)15:30-17:00
場所:オンライン開催


発表者:酒井(B4)
タイトル:TROPOMI enables high resolution SO2 flux observations from Mt.Etna, Italy, and beyond
著者:Queißer, M., M. Burton, N. Theys , F. Pardini, G. Salerno, T. Caltabiano, M. Varnam, B. Esse, R. Kazahaya
雑誌:Scientific report, (2019) 9:957, doi:10.1038/s41598-018-37807-w

要旨:

⽕⼭ガスに含まれる気体には⽔蒸気,⼆酸化炭素,⼆酸化硫⻩などがある.そのなかでも⼆酸化硫⻩は⼤気中にほとんど含まれていないうえ,⾚外線と紫外線に明瞭な吸収領域をもつため,光学機器による測定がしやすい.⽕⼭から放出された⼆酸化硫⻩の量を測定することができれば,⽕⼭ガス全体の噴出量を推定することができ,これは噴⽕のダイナミクスや噴⽕リスクの把握につながると考えられている.

⼆酸化硫⻩の噴出量を測定する⼿法として,第⼀に地上観測が挙げられるが,噴⽕活動の 激しい地域や島しょ部では地上観測は⾏いづらいため,観測網は不⾜しがちになる.この⽋点を補い,かつ地球規模の観測を実現させるため,本研究では⼈⼯衛星に搭載されたセンサー「TROPOMI」を使⽤して宇宙空間から⼆酸化硫⻩の放出のようすを把握することを試みた.これまでにも⼈⼯衛星のセンサーを使った観測は⾏われてきたが、「TROPOMI」は⼤ 気中の⽔蒸気の影響を受けにくい紫外線領域の観測が可能で,かつ空間分解能が⽐較的⾼ い.

本研究の⽬的は,「TROPOMI」による観測結果を地上観測の結果と⽐較し,⼆酸化硫⻩ の放出量を把握する上で「TROPOMI」の使⽤がどの程度有効かを検証することである.観測の結果,「 TROPOMI」の観測データをもとに推定された⼆酸化硫⻩のフラックスを,地上観測のそれと⽐べると,⽉平均はよく⼀致,⽇平均もおおむね⼀致していたが,30 分スケールでは⼀致している時間帯と⼀致していない時間帯があった.そのうえで著者は,主なエラー要因として,上空の雲の存在と,「TROPOMI」の観測結果を⼆酸化硫⻩のフラックスに変換する際に使⽤する気象データの不正確さが挙げられるとしている.


発表者:谷岡
タイトル:Fiber‐Optic Network Observations of Earthquake Wavefields
著者:Lindsey, NJ., E.R. Martin, D.S. Dreger, B. Freifeld, S. Cole, S.R. James, B.L. Biondi, J.B. Ajo‐Franklin
雑誌:Geophys. Res. Lett., (2017) doi:10.1002/2017GL075722

要旨:

地下の状態を詳細に把握するためには地震計分布は間隔が広く、偏りが大きいためどうしてもバイアスがかかってしまう。そこで新しい観測技術、DAS(distributed acoustic sensing)が数10㎞に及ぶ通信光ファイバーケーブルをメートル間隔のセンサー網へ変換させる技術として注目されている。本論文では3つの違ったDASアレイを地震観測網として解析に利用できる可能性を示す。アラスカ・フェアーバンクスのアレイでは20分のスタッキングにより実際の地震計の記録(0.8-1.6Hz)と相関の非常に良い波形が得られた。北カリフォルニアのLの形に配置されたDASアレイでは、Geysers Geothermal Fieldの地震からのほぼ垂直に入射した振動を記録し、色々なフェーズのbackazimuthやslownessの推定に成功した。最後にスタンフォード大学に存在する通信導管内にファバーケーブルを設置し、遠地地震のP波やS波の到達時間の観測にはケーブルと周りの土とのカップイングはそんなに気にする必要はないことを示した。将来の超高密度地震観測に利用されることが期待される。