論文解説





2013 年

Matsubara S., Maruyama Y., and Kimura A.P.

A 914-bp promoter is sufficient to reproduce the endogenous prolyl oligopeptidase gene localization in the mouse placenta if not subject to position effect

Gene 524: 114-123

PubMed  HUSCAP

我々はプロリルオリゴペプチダーゼ(prolyl oligopeptidase, POP)遺伝子の発現調節機構を解析している。今回はin vitroで十分に強い活性を持つことがわかっている914 bpのPOP遺伝子プロモーターがin vivoでどのような活性を示すのかについて、トランスジェニックマウスを作製、解析することによって調べた。まず、このプロモーター配列に緑色蛍光タン パク質(enhanced green fluorescent protein, EGFP)遺伝子をつなげたDNAコンストラクトを作製し、マウス受精卵の核に注入した。この卵から得られたマウスを調べたところ、注入したコンストラク トがゲノム中の異なる位置に挿入されたマウスを6匹得ることに成功した。もしもEGFPが発現していればそのマウスの組織が緑色に光ることが予想されるの で、これら6匹について緑色の蛍光を発するか調べたところ、2匹が全身緑色に光ることがわかった(Fig. 2)。このことは残りの4匹において導入したDNAコンストラクトが閉じたクロマチン領域に挿入されたことを示唆しており、したがって、用いた914 bpのPOP遺伝子プロモーターにはクロマチンを開く活性がないことを示唆した。また、蛍光を発したマウスと蛍光を発しなかったマウスについて、それぞれ 導入したDNAコンストラクト中のPOP遺伝子プロモーターにおけるDNAメチル化を調べたところ、蛍光を発しなかったマウスにおいてのみ高いレベルの DNAメチル化が検出された(Fig. 3)。このことは蛍光を発しなかったマウスにおいて、導入したPOP遺伝子プロモーターがエピジェネティックなサイレンシングを受けていることを示してい る。次に蛍光を発したマウスにおいてEGFPの発現がPOPの発現と同じようなパターンを示すのか調べた。その結果、これら2匹のマウスでEGFPの組織 分布はPOPと異なっており(Fig. 1)、卵巣においてもPOPと異なる発現局在を示した(Fig. 4)。一方、胎盤においてはこれら2匹のマウスの両方でEGFP蛍光がPOPと同じような変化を示すことがわかった(Fig. 5)。つまり、E10.5-E12.5の時期ではJzとLaと呼ばれる領域が緑色の蛍光を発し、E13.5以降ではJzのみが蛍光を発した。このことは用 いた914 bpのPOP遺伝子プロモーターが位置効果を受けない場合に、胎盤におけるPOP遺伝子の発現を十分に活性化できることを示している。また、今回の解析で はこの胎盤におけるPOP遺伝子の活性化にAP-2gammaと呼ばれる胎盤特異的な転写因子が関与する可能性も示した (Fig. 6)。








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