羅臼町地すべり調査報告(暫定版)

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北海道大学大学院理学研究院附属地震火山研究観測センター 准教授 高橋浩晃

(hiroaki@mail.sci.hokudai.ac.jp)

 

概要:

羅臼町羅臼峠付近(幌萌町)の海岸で424日午前中から原因不明の隆起が発生しているとの情報が入った.現地は活断層である標津断層帯古多糠セグメントの最東端部にあたり,地震や火山活動との関連性の確認のため緊急に現地調査を実施した(調査期間:257時〜13時).

 

結論:

北見工業大学調査団(山崎新太郎団長)により原因が地すべりによるものと確認されたため,地震や火山活動と関連はないと判断した.

 

   現場は山岸他(1993)による「北海道の地すべり地形」には記載なし.防災科研J-SHIS地すべりマップにも記載なし.

   気象庁羅臼地震観測点から1km程度

   近接GEONETはなし

 

謝辞:調査に際し舟木商店の舟木さん・M名さんには便宜をはかって頂きました.北見工業大学山崎新太郎先生には現地調査でお世話になったほか空撮写真もご提供頂きました.本記事は山崎先生・田近淳さん(株ドーコン)・石丸聡さん(道総研地質研)・岡崎紀俊さん(道総研地質研)・笠原稔さん(北大名誉教授)との議論によります.記して感謝の意を表します.

 

地元の方の情報

   隆起は24日午前11時か12時くらいから視認できるようになり4-5時間で高さ<10m程度まで成長

   この間振動や音などはなし

   はじめのうちは海岸の隆起だけで,左右側方崖の崩壊は認められず

   24日初期の段階から隆起部の陸側段丘斜面には亀裂を認める

   滑落崖は25日午前7時までは認められず.この後同日午前9時くらいまでの2時間の間に出現.この間も特段の音・振動などは認めず

   この付近の海底からは湧水(冷泉)が認められる

   滑落崖付近は雪の堆積場となっている

現地概察:

   レーザー測距による末端部の幅は300m程度

   レーザー測距による主滑落崖の幅は150m程度,深さ最大20m程度,幅も深さ程度か(未測定)

   海岸隆起部(テラス)の上部はほほ平らで台地上の形態を呈す

   テラスには海岸に並行な走行をもつ開口クラックを多数認める.クラックの幅は時間とともに拡大

   調査時点ではテラス付近の段丘崖から湧水は認めず

 

地形概察:

北見工業大学山崎新太郎先生によるドローンによる空撮.写真の利用については山崎先生までお問い合わせください.

 

国土地理院1978年撮影の空中写真を切り出し地すべりを加筆.数値はレーザー測距による現地測定値.

出典:国土地理院1978年撮影航空写真をダウンロードし切り出し・加筆しました.

http://mapps.gsi.go.jp/contentsImageDisplay.do?specificationId=933972&isDetail=true

 

海岸隆起の概念モデル:→暫定版であり今後大幅に修正される可能性があることをご了解ください.

本モデル作成において山崎新太郎さん(北見工大)・田近淳さん(株ドーコン)・石丸聡さん(道総研地質研)・岡崎紀俊さん(道総研地質研)・笠原稔さん(北大名誉教授)との議論を参考にしています.記して感謝の意を表します

(隆起テラスの地形的特徴)

   隆起テラスの段丘崖側に凹みがある.この凹みの底部はもとの海岸であり,押し出し等により二次的に作られたものではない.

   隆起テラスは平坦で変形がほとんどない.開口クラックは発達(写真3).

   隆起テラスの両翼とも非常にシャープに切り立っている(写真2,写真4).

(作業仮説)

1.      並進すべりに伴うスラスト+バックスラストによるポップアップ構造(田近,1995).隆起テラスの両翼は非常にシャープである(写真4).隆起テラスは弱い固結を示す泥岩である.

2.      瀬野徹三ほか(2000)によると,デコルマ上部の未固結の層に固結した層(バックストップ)が楔上に入ると大きく盛り上がる.この現象は1999年台湾集集地震の際に見られた.1896年三陸津波地震で津波が大きくなった原因もこの現象である可能性が指摘されている(Tanioka and Seno, 2001).

3.      岡田義光(2003)によると,低角逆断層すべりの場合,断層上端部にピーキングと呼ばれる地表のピーク状の隆起がみられることが知られている.これは無限小歪下の弾性論に基づいており,地すべりのような非弾性変形が卓越する現象で同様に扱えるかは不明である.

4.    押し出し+回転により末端部での隆起が予想される.実際の地形には段丘崖と隆起テラスの境界部に凹みがみられる.

5.   

文献:

岡田義光,断層モデルによる地表上下変動のパラドックス,測地学会誌,4999, 2003

https://www.jstage.jst.go.jp/article/sokuchi1954/49/2/49_2_99/_pdf

瀬野徹三・大槻憲四郎・楊昭雄,台湾集集地震はなぜ,どのようにおきたのか,科学,705082000.

http://www.eri.u-tokyo.ac.jp/people/seno/Papers/kagaku2000.chichi.pdf

Tanioka Y. and T. Seno, Sediment effect on tsunami generation of the 1896 Sanriku Tsunami Earthquake, Geophys. Res. Lett., 28, 3389, 10.1029/2001GL013149, 2001.

http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1029/2001GL013149/abstract

田近淳,堆積岩を起源とする地すべり堆積物の内部構造と堆積層,地下資源調査所報告,591995

http://www.gsh.hro.or.jp/publication/digital_report/gsh_report/67pdf/gshr67_059_145.pdf

 

関連写真:

撮影時間4/26/07:00-13:00

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
以下の写真 は クリエイティブ・コモンズ 表示 2.1 日本 ライセンスの下に提供されています。 このライセンスにそった利用ができます.

写真1.現場の北東側からの遠景.ねずみ色の部分が隆起した場所で幅300m程度,高さ<10m程度.その両サイドが側方崖の末端部に相当.

 

写真2.隆起したテラスを南西側方崖末端部から.テラスはほぼ平坦で海底にあった海藻やウニを認める.隆起部は泥岩質.

写真3.隆起したテラスの様子.ほぼ平坦である.海岸線に並行な走行をもつ開口クラックを多数認める.

写真4.隆起したテラスの海側末端部.

写真3.滑落崖.25日朝7時ころには認められず,その後の2時間の間に出現.レーザー測距による手前から奥手までの距離は150m程度,深さ20m程度.旧国道(現町道)が崩落しているほかNTT柱が宙吊りになっている.