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藻類・原生生物の世界は実に多様である。その多様性の由来(起源)に思いを馳せている。真核細胞の成り立ち(オルガネラの起源など)を探る上でも藻類・原生生物は魅力的な材料である。この面白さをなるべく多くの人達に伝えたいと思う。本人は渦鞭毛藻類という単細胞生物を対象として研究をおこなっている。
 渦鞭毛藻類はいろいろな面で「変わった」生物である,と同時に生物学のいろいろな分野の研究材料としても魅力的な生物だと思う。渦鞭毛藻類について詳しく知りたい方は「渦鞭毛藻のホームページ」を参照されたい。研究の主体は渦鞭毛藻類であるがそれ以外のグループを扱うこともしばしばあるので,渦鞭毛藻以外に興味のある方でも気軽に相談してください。最近の研究テーマは次の通り。
1.
 細胞内共生と葉緑体の共生進化に関する研究
 渦鞭毛藻は葉緑体の獲得という進化的イベントを考えるときには興味深い生物 群である。ごく一部の種ではあるが,細胞内共生を介して葉緑体を獲得しつつある進 化的中間段階を示すものがいるからである。珍しいとは言え,探してみると結構その ような渦鞭毛藻はいるらしい。私たちはまず渦鞭毛藻類に見られる細胞内共生/葉緑 体獲得過程の実体を明らかにしたいと考えている。さらには起源的には葉緑体と密接 な関係がある眼点(走光性に関与する構造)にも着目し,眼点の多様性とその分布の 解明からもこの問題にアプローチしようとしている。
2.
 砂地性原生生物(渦鞭毛藻類を含む)の多様性の実体の解明
 海岸の波打ち際から20メートルも内陸側に入ったところで,砂を掘ってみる。1mも掘ると海水がしみだしてくる。この水を調べてみると実に多様な原生生物(主に 渦鞭毛藻類)が存在していることを我々は見いだした。しかもその半分以上が新種で あった。今までほとんどだれも注目しなかった地下の暗黒の世界に原生生物の多様な 世界が存在するのである。その多様性の実体を解明し,それらの系統関係を解析する ことにより,これら暗黒世界の生物群の由来を明らかにしたい。
3.
 渦鞭毛藻類全般の分子系統学的研究と分類の再検討
 渦鞭毛藻類の分類系は形態と生活形に基づいて行われる。しかしながら例えば 葉緑体の特徴などはほとんど考慮されてこなかった。葉緑体の獲得が共生現象と結び ついた比較的稀な現象であるならば,葉緑体の特徴は系統を反映しているはずである 。にもかかわらず同じタイプの葉緑体をもつ生物が全く別の目に分類されるというよ うなことがおこなわれてきた。このような疑問から,形態学的な手法(光学顕微鏡, 電子顕微鏡)に加え,分子系統学的な方法を導入し,様々な種の系統関係を明らかに し,現行の分類系の再検討をおこなうことを目的に研究を進めている。
4.
 渦鞭毛藻類の光受容メカニズムに関する研究
 渦鞭毛藻には顕著な走光性を示す種が数多く知られる。しかしながら光受容物 質を含め,その光受容メカニズムについてはほとんど明らかになっていない。しかも 赤色に反応する種や,黄色に反応する種,青色に反応する種など渦鞭毛藻の中だけで も走光性の作用スペクトルに多様性が見られることが報告されている。渦鞭毛藻にお ける光受容物質は何か?この走光性作用スペクトルの多様性は何に由来するのか?岡 崎の基礎生物学研究所大型スペクトログラフを用いて渦鞭毛藻類の光受容メカニズム の解明を目指して研究をおこなっている。(他機関との共同研究)
5.
 寄生性渦鞭毛藻の研究
 動物プランクトンや魚類のえらに寄生する渦鞭毛藻類が知られている。我が国におけるこの分野の研究(特に系統分類学的アプローチ)は極端に少ない。そこで我が国沿岸の寄生性渦鞭毛藻の実体を把握し,それらの系統的位置を分子系統学的に明らかにすることを目指している。大塚攻氏(広島大学水産実験所)との共同研究。
6.
 クレプトクロロプラスト~盗んだ葉緑体~の研究
 渦鞭毛藻類や繊毛虫の中には食物として取り込んだ葉緑体を一定期間保持しておき,光合成をさせている種類が知られている。これらの葉緑体をクレプトクロロプラストと呼ぶが,やがては消化されてしまうので真の共生ではない。が,この現象の広がりは思ったよりありそうであり,生態的にも,進化的にも興味深い。特に渦鞭毛藻類を材料としてこの現象に関する系統進化学的研究を進めたいと考えている。将来的にはこの機構を可能にする分子的背景も探求したい。
7.
 淡水産渦鞭毛藻類の研究
 渦鞭毛藻類の分類学的研究は海産種が中心で淡水産種に関する知見は(特に我が国では)少ない。また,それら淡水産渦鞭毛藻類の系統関係や起源(おそらく海から来たのだろうが,どの種が陸水に上がったのか?)については世界的にも知見は少ない。我が国の淡水藻類の多様性の実体と系統関係を明らかにすべく研究をおこなっている。
8.
 渦鞭毛藻類の細胞外被形成に関する研究
 多くの渦鞭毛藻は,細胞外被に鎧板をもつ。鎧板はセルロースの板で種類毎に一定の数と配列をもつ。鎧板は細胞膜の内側にあるthecalvesicleという膜の中に形成される。細胞分裂の際に鎧板はどのように再生されるのか?鎧板の数や形はどのような機構で種類毎に一定に保たれるのか?これらについてはほとんど何もわかっていない。これらの点を明らかにすることを目的に研究をおこなっている。本プロジェクトは奥田一雄氏,関田諭子氏(高知大学細胞生物学研究室)との共同研究である。
9.
 土壌性鞭毛虫類の多様性と系統の解析
 忘れがちであるが,土壌の中にも生物の多様な世界が存在する。土壌中の微生物には細菌類,藻類,原生動物などが含まれる。土壌性原生動物の中では繊毛虫類と有殻アメーバは比較的良く調べられている。一方,我が国における土壌性鞭毛虫類に関する知見は少ないのが現状である。表層土壌を持ち帰り,培養するとボド類,ストラメノパイル類,ケルコゾア類などの鞭毛虫が得られる。しかしながらこれらの系統の解析や分類学的な研究は今後の課題である。当研究室では土壌性の鞭毛虫類に関する研究を進めていこうと考えている。
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