next up previous contents
: 斉次方程式の解法 : 線形常微分方程式 : 線形常微分方程式   目次

オイラーの公式

常微分方程式にしても偏微分方程式にしても、それらの解はおおかた指数函数か 三角函数の組合わせで書かれる。そこで、まず、復習として、指数函数と三角函 数の結び付きを示すオイラーの公式から始める。

定理 1.1 (オイラーの公式)   $ \forall x\in \mathbb{R}$に対し、次のオイラーの公式が成り立つ。

$\displaystyle e^{ix} = \cos x + i \sin x$ (1.1)

この式を使うといくつかの三角函数の公式が即座に導出される。

定理 1.2 (加法定理)   $ \forall x\in \mathbb{R}$及び $ \forall y\in \mathbb{R}$に対し、次の加法 定理が成り立つ。
$\displaystyle \cos(x\pm y) = \cos x \cos y \mp \sin x \sin y$     (1.2)
$\displaystyle \sin(x\pm y) = \sin x \cos y \pm \cos x \sin y$     (1.3)

[証明]. $ e^{i(x+y)}=e^{ix}e^{iy}$の両辺に対してオイラーの公式を使うと、

$\displaystyle \cos(x+y)+i\sin(x+y)$ $\displaystyle = (\cos x+i\sin x)(\cos y+i\sin y)$    
  $\displaystyle = ( \cos x \cos y - \sin x \sin y ) + i ( \sin x \cos y + \cos x \sin y )$    

実部と虚部を比較すると式(1.2)及び(1.3)の正符号を得る。 負符号は$ y$$ -y$に置き換えれば良い。

定理 1.3 (ピタゴラスの定理)   $ \forall x\in \mathbb{R}$に対し、次のピタゴラスの定理が成り立つ。
$\displaystyle \cos^2 x + \sin^2 x = 1$     (1.4)

[証明]. オイラーの公式からピタゴラスの定理を導く(三角函数は幾何以外の原理によっ て定義されていると仮定する)。

$\displaystyle 1 = e^{ix} e^{-ix} = ( \cos x + i \sin x ) ( \cos x - i \sin x ) = \cos^2 x + \sin^2 x$    

定理 1.4 (余角の公式と補角の公式)   $ \forall x\in \mathbb{R}$に対し、次の余角及び補角の公式が成り立つ。

$\displaystyle \cos \left( \DF{\pi}{2} - x \right)$ $\displaystyle = \sin x$ (1.5)
$\displaystyle \sin \left( \DF{\pi}{2} - x \right)$ $\displaystyle = \cos x$ (1.6)
$\displaystyle \cos \left( \pi - x \right)$ $\displaystyle = -\cos x$ (1.7)
$\displaystyle \sin \left( \pi - x \right)$ $\displaystyle = \sin x$ (1.8)

[証明]. 余角の公式について証明する。

$\displaystyle e^{i\left(\DF{\pi}{2}-x\right) } = e^{i\left(\DF{\pi}{2}\right)}e^{-ix} = i ( \cos x - i \sin x ) = \sin x + i \cos x$    

左辺は $ \cos\left(\DF{\pi}{2}-x\right) + i
\sin\left(\DF{\pi}{2}-x\right)$であるから、実部と虚部を比較して式 (1.5)及び(1.6)を得る。補角の公式も同様にして得る。

オイラーの公式は、次のテイラー展開を使って証明する方法がある。

定理 1.5 (テイラー展開)   実数値函数 $ \forall f\in \mathcal{C}^\infty(\mathbb{R})$について、 $ x_0 \in \mathbb{R}$回り

$\displaystyle f(x)$ $\displaystyle = f(x_0) + f'(x_0)(x-x_0) + \DF{1}{2!} f''(x_0) (x-x_0)^2 + \cdots$    
  $\displaystyle = \sum_{k=0}^\infty \DF{f^{(k)}(x_0)}{k!} (x-x_0)^k$ (1.9)

とテイラー展開できる。

テイラー展開は函数の局所的な振る舞いを調べる際に有効な方法である。逆に函 数の大域的な振る舞いについては、後述のフーリエ展開を用いて調べる。以下に 具体的な例を示そう。

例 1.1 (指数函数のテイラー展開)   $ e^{x}$$ x=0$回りで展開する。

$\displaystyle e^{x} = 1 + x + \DF{x^2}{2} + \DF{x^3}{6} + \DF{x^4}{24} + \DF{x^5}{120} + \cdots$ (1.10)

例 1.2 (三角函数のテイラー展開)   $ \cos x$及び$ \sin x$$ x=0$回りで展開する。

$\displaystyle \cos x$ $\displaystyle = 1 - \DF{x^2}{2} + \DF{x^4}{24} + \cdots$ (1.11)
$\displaystyle \sin x$ $\displaystyle = x - \DF{x^3}{6} - \DF{x^5}{120} + \cdots$ (1.12)

[証明]. [(オイラーの公式の証明)] 例の三角函数のテイラー展開から、 $ \eqref{eq:1-11}+i\eqref{eq:1-12}$よ り、

$\displaystyle \cos x + i \sin x = 1 + i x - \DF{x^2}{2} - i \DF{x^3}{6} + \DF{x^4}{24} + \cdots$ (1.13)

である。例の指数函数のテイラー展開の$ x$$ ix$に置き換えると、

$\displaystyle e^{ix} = 1 + i x - \DF{x^2}{2} - i \DF{x^3}{6} + \DF{x^4}{24} + \cdots$ (1.14)

式(1.13)と式(1.14)の各右辺の級数の収束半径は$ \infty$ であり、指数函数及び三角函数はともに実解析函数であることから、このオイ ラーの公式は証明された。

別の方法によって、オイラーの公式を証明してみよう。これまでの方法では、暗 に指数函数はネピアの公式によって、三角函数は幾何学的な方法によって別個に 定義されていると仮定した。ここでは、指数函数と三角函数の定義を常微分方程 式の特解とする。ある種の微分方程式を満たす函数を特殊函数と呼ぶが、指数函 数や三角函数は、もっともよく知られた(という意味でもっとも特殊な)「特殊」 函数と考えても良い。

定義 1.1 (指数函数)   指数函数は以下の微分方程式の初期値問題の解とする。

$\displaystyle \der{f}{x}$ $\displaystyle = f \qquad (x \in \mathbb{R})$ (1.15)
$\displaystyle f(0)$ $\displaystyle = 1$ (1.16)

この定義から以下の性質が直ちに従う。

補題 1.1  

$\displaystyle \der{f}{x}$ $\displaystyle = f \qquad (x \in \mathbb{R})$ (1.17)
$\displaystyle f(0)$ $\displaystyle = a$ (1.18)

の解は$ f(x)=ae^x$である。

[証明]. $ g=\DF{1}{a}f$と置くと、指数函数の定義から$ g(x)=e^x$

補題 1.2  

$\displaystyle \der{f}{x}$ $\displaystyle = a f \qquad (x \in \mathbb{R})$ (1.19)
$\displaystyle f(0)$ $\displaystyle = 1$ (1.20)

の解は $ f(x)=e^{ax}$である。

[証明]. $ y=ax$と置くと、指数函数の定義から$ f=e^y$となる。

補題 1.3  

$\displaystyle \dd{f}{x} - (a+b) \der{f}{x} + abf = 0 \qquad (x \in \mathbb{R})$ (1.21)

但し、$ ab\neq 0$かつ$ a\neq b$とする。この一般解は $ f(x)=C_1e^{ax}+C_2e^{bx}$である。

[証明]. 式(1.21)は、因数分解により、

$\displaystyle \left(\der{}{x}-a\right) \left(\der{}{x}-b\right) f = 0$ (1.22)

となる。任意の函数$ g=g(x)$について、恒等式

$\displaystyle g = \DF{\left(\der{}{x}-b\right) g}{a-b} + \DF{\left(\der{}{x}-a\right) g}{b-a} \equiv g_1 + g_2$ (1.23)

が成り立つ。ここで仮定として$ g$は微分方程式(1.21)の解であり、

$\displaystyle g_1$ $\displaystyle = \DF{\left(\der{}{x}-b\right) g}{a-b}$ (1.24)
$\displaystyle g_2$ $\displaystyle = \DF{\left(\der{}{x}-a\right) g}{b-a}$ (1.25)

とする。式(1.24)の両辺に $ \left(\der{}{x}-a\right)$を作用させ、 式(1.25)の両辺に $ \left(\der{}{x}-b\right)$を作用させると、

$\displaystyle \left(\der{}{x} - a\right) g_1$ $\displaystyle = \DF{\left(\der{}{x}-a\right)\left(\der{}{x}-b\right) g}{a-b} = 0$ (1.26)
$\displaystyle \left(\der{}{x} - b\right) g_2$ $\displaystyle = \DF{\left(\der{}{x}-b\right)\left(\der{}{x}-a\right) g}{b-a} = 0$ (1.27)

となる。式(1.26)と(1.27)の解は補題1.1及び 1.2より、

$\displaystyle g_1$ $\displaystyle = C_1 e^{ax}$ $\displaystyle g_2$ $\displaystyle = C_2 e^{bx}$    

$ g=g_1+g_2$であったから、微分方程式(1.21)の解は、 $ f= C_1 e^{ax}
+ C_2 e^{bx}$

ここで、三角函数を次のように2階の常微分方程式の解として次のように定義す る。

定義 1.2 (三角函数)  

$\displaystyle \dd{f}{x}+f=0, \quad f(0)=1, \quad \der{f}{x}(0)=0$ $\displaystyle \stackrel{\mathrm{def}}{\Longleftrightarrow}f(x) = \cos x$ (1.28)
$\displaystyle \dd{f}{x}+f=0, \quad f(0)=0, \quad \der{f}{x}(0)=1$ $\displaystyle \stackrel{\mathrm{def}}{\Longleftrightarrow}f(x) = \sin x$ (1.29)

[証明]. [(オイラーの公式の別証明)]

$\displaystyle \dd{f}{x} + f = \left(\der{}{x}+i\right)\left(\der{}{x}-i\right) f = 0$    

の解は、 $ f(x)=C_1e^{ix}+C_2e^{-ix}$である。初期条件が、$ f(0)=1$及び $ \der{f}{x}(0)=0$の場合、

$\displaystyle C_1 + C_2$ $\displaystyle = 1$    
$\displaystyle i ( C_1 - C_2 )$ $\displaystyle = 0$    

であり、 $ C_1=C_2=\DF{1}{2}$となる。これより、

$\displaystyle \cos x=\DF{1}{2}(e^{ix}+e^{-ix})$ (1.30)

である。初期条件が$ f(0)=0$及び $ \der{f}{x}(0)=1$の場合、同様にして、

$\displaystyle C_1 + C_2$ $\displaystyle = 0$    
$\displaystyle i ( C_1 - C_2 )$ $\displaystyle = 1$    

であり、 $ C_1=-C_2=\DF{1}{2i}$となる。これより、

$\displaystyle \sin x=\DF{1}{2i}(e^{ix}-e^{-ix})$ (1.31)

式(1.30)及び(1.31)より $ e^{ix}=\cos x + i\sin x$


next up previous contents
: 斉次方程式の解法 : 線形常微分方程式 : 線形常微分方程式   目次
Masaru Inatsu 平成21年7月27日