好奇心に満ちた若い君に


  私たちの研究室では生殖生物学に興味をもっています。この分野にはまだ多くの謎が解明されずに残っています。例えば、哺乳類では一度に排卵される卵の数が種によって決まっています(ヒトでは1つ、マウスの場合は10個程度)。これはどのようにして決まるのでしょうか。これまで生物学者が長い年月をかけて真剣にこの問題に取組んできました。しかし、未だにその答が見つかっていないのです。また、この問題と比べると、ずっと簡単そうに見える排卵の仕組みについてさえ、哺乳類においては明快に説明できる学者はまだ出てきておりません(当研究室の研究によりメダカ排卵の分子機構が解明されましたが、より研究が盛んな哺乳類においては今なお解明されていません)。

 

 

 近年、少子化、晩婚化などにより生殖医療(不妊治療、高齢出産など)の分野はより重要な位置を占めるようになってきましたが、これらの分野の発展に生殖生物学も大きく寄与しています。生物の根底にある仕組みを解き明かし理解することが、その後に続く応用への重要なステップとなります。つまり、生殖生物学は応用研究の基礎となる情報を提供する重要な学問といえます。

 

 一昔前、内分泌攪乱ホルモン(環境ホルモン)が社会的関心事となりました。現在はあまり騒がれてはおりませんが、今なお、この問題は生殖生物学の分野において大きな問題として残っています。環境ホルモンが生物の生殖器官に悪影響をもたらし、極端な場合には、その種の存続に関わる重大な事態にも至ると指摘されています。しかし、それらの物質がどのような作用で生殖機能を乱すのかという点に及ぶと、正しく答えられないのが現状です。この最大の理由は、生殖生物学における基本的な課題の多くが解き明かされていないからです。

 

 以上のように、生殖生物学の分野には、私どもの興味を駆り立て、しかも、チャレンジに値する多くの課題が残っています。それらが一つ一つ解き明かされることによって、関連する種々の問題(クローン生物、不妊治療、人工繁殖、人口爆発等の問題)を解決するための糸口が見えてくるのです。この意味では、生殖生物学は今まさに時代が強く要請している学問と言えます。

 

 純粋に一つの学問として打ち込みたいと思っている君。あるいは時代の要請に応えたいと思っている君。 意欲的な若者が、生殖生物学における発見の喜びを共に享受できるパートナーとして、また、今後のサイエンスを担わんとする若き研究者(の卵)として、 私たちの研究グループに加わってくれることを期待しています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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