1.活火山のマグマ供給系の構造と進化に関する研究:詳しくはココ
2.大規模カルデラ火山のマグマ溜りの構造と噴火プロセスに関する研究:詳しくはココ
3.火山の発達とマントルダイアピルの関連に関する研究:詳しくはココ
4.火山活動とマグマタイプの広域・時空変遷から見たマグマの成因とテクトニクスに関する研究:詳しくはココ
5.白頭山9〜10世紀の大規模噴火と、その古代朝鮮王国に与えた影響に関する研究:詳しくはココ
6.千島列島の火山活動・地震活動および地殻変動に関する研究:詳しくはココ
7.特定噴火の火山地質学的および岩石学的研究:詳しくはココ
8.火山地質・層序および火山岩岩石学に関する基礎的研究:詳しくはココ


研究各論

1.活火山のマグマ供給系の構造と進化に関する研究:噴火の中長期噴火予測手法の開発
 火山直下のマグマ供給系の構造とそこでのマグマ進化のプロセスは解明することは、岩石学の主要命題のひとつである。またマグマにとっては噴火準備過程の場でもあり、マグマ供給系の現状を知ることは、火山の中〜長期的予測のための最も基礎的なデータである。
 マグマ供給系の構造と進化をできるだけ高精度で解明するために、複数の活動的な火山を選び研究を行っている。まず個々の噴火推移を火山地質学的手法で正確に復元し、それに基づき高密度のサンプリングを行い岩石学的に解析することで噴火直前のマグマ供給系の構造とそこからの噴火プロセスが復元できる。そしてその手法をできるだけ過去に遡ることで、マグマ供給系の進化が解明できる。
 特定領域研究の分担テーマであるために、最近の重要テーマとして研究を行っている。 

(1)ルアペフ火山(ニュージーランド)
 マグマ供給系の構造の特徴は、マッシュ状の浅所安山岩質マグマ溜りに、深所から玄武岩質マグマが間歇的に繰り返し貫入することにより、複数の小型のマグマポケットが生成される。噴火期において、浅所マグマ溜り内にあるマグマポケットがひとつずつ順次噴火するので、噴火断続的に発生する。和田(教育大)・Wood(IGNS)両氏との共同研究である。

                     ルアペフ火山

(2)三宅島
 宮坂(安間)氏との共同研究である。過去500年間で見ると特異な噴火であった2000年噴火も、マグマ供給系の変遷から合理的に説明ができた。

(写真)

(3)西南北海道3火山
 北海道駒ケ岳、有珠山そして樽前山は、日本を代表する最近の噴火実績を有する活火山であり、将来の噴火が危惧されている。その中〜長期的噴火予測を行うために、この数年に集中的に研究を行っている。それぞれ吉本・高橋・宮坂(駒ケ岳)、中村・松本(有珠)、そして古川・平賀・古堅・富樫(樽前)の各氏との共同研究である。
 その結果、駒ケ岳および樽前の両火山は噴火活動期の末期にあり、将来的には噴火活動休止期に移行すると予測できる。一方、有珠山については未だ確実な予測ができる段階とはなっていない。
        
        駒ヶ岳上空                        有珠山上空                     樽前山上空

(4)十勝岳
 北海道では珍しい玄武岩質安山岩マグマ主体の活火山であり、西南北海道の3火山と同様に将来の噴火が危惧される火山である。この火山では噴火史や噴火様式の変遷に混乱があったので、まずそれらの再検討を行った。マグマ供給系の検討が進行中である。藤原・長谷川(摂)両氏との共同研究である。

              十勝岳巡検

(5)桜島
 最近になって研究に着手した。宮坂・富樫両氏との共同研究である。

         桜島大根

2.大規模カルデラ火山のマグマ溜りの構造と噴火プロセスに関する研究
 1995年から2年間、ニュージーランドのタウポでの生活で大規模珪長質火砕流とカルデラに親しみを持ってしまった。洞爺カルデラ(フィーブリー氏との共同研究)、支笏カルデラ(北川・若佐両氏との共同研究)や鹿児島の池田カルデラ(稲倉氏および鹿児島大学の小林哲夫氏との共同研究)で研究を行ってきた。その結果、これまでの研究で議論されてきたような単独の成層珪長質マグマ溜りの存在だけでは説明できない多様性が、噴出物に記録されていることが明らかになった。最近は以下のカルデラも研究を行っている。
(1)阿寒カルデラ(長谷川・山本(愛媛大)両氏との共同研究)
(2)十勝三股カルデラ(石井・山本(愛媛大)両氏との共同研究)
(3)摩周カルデラ(岸本氏との共同研究)

        大規模火砕流の露頭(北見市)

3.火山の発達とマントルダイアピルの関連に関する研究
 火山には寿命があることの意味を、マグマの進化から解明することを目指している。自分自身でも森吉火山の研究でそのことは検討したが、如何せん森吉火山は古い火山であり、この目的には適さない研究対象であった。この回答は利尻火山において石塚氏との共同研究で得られた。現在、利尻と同様に独立した火山である羊蹄火山において研究が進行中である(有田・江草・藤田・坪井各氏との共同研究)。
      
                利尻山上空                             羊蹄山上空

4.火山活動とマグマタイプの広域・時空変遷から見たマグマの成因とテクトニクスに関する研究
 火山岩組成の広域変化は院生時代から興味の対象であり、東北地方の第四紀火山について研究を行ってきたが、よりテクトニクスの観点から変化に富む北海道において、時間変遷も意識した研究を行っている。現在とりまとめ中、あるいは進行中の研究は以下のとおりである。
(1)千島弧〜東北日本弧会合部の第四紀火山岩組成の広域変化
(2)北海道における過去2000万年間の火山活動の変遷と関連テクトニクス(廣瀬・岩崎両氏との共同研究)
(3)滝川単成火山群の提唱とその意義に関する研究(新井・岩崎両氏との共同研究)
(4)日本海東縁の火山活動とマグマタイプの時空変遷とテクトニクス(清野・小杉との共同研究)

(写真)

5.白頭山9〜10世紀の大規模噴火と、その古代朝鮮王国に与えた影響に関する研究
 東北大学の谷口教授らのグループに加わり研究を行っている。これまでの最も重要な成果は、これまで知られていなかった9世紀噴火の発見である。2002年から現地調査を行ってきたが、今後4年間にわたりプロジェクトは継続する。担当するテーマは以下のとうりであり、我々の研究室からは西本・田中・吉田の各氏が研究に加わっている。
(1)9および10世紀噴火推移の復元とマグマ供給系の構造および噴火プロセス
(2)9および10世紀のマグマ多様性に関する地球化学的研究
(3)白頭山地域の過去1000万年間のマグマ時空変遷
今年は中国の他に、北朝鮮で調査する予定であるが、どうなることやら。

         白頭山天池

6.千島列島の火山活動・地震活動および地殻変動に関する研究
 1999年に朝日新聞社の全面的な協力により、国後島爺爺岳火山の研究を行った。それ以降、さらに千島列島全域について研究を発展させることを考えてきたが、今年度から科研費が採択され、やっと現実のものとなった。石塚(産総研)・吉本(東大)・石崎(富山大)・廣瀬(地質研)・金子(東大)・石川(静岡大)の各氏を中心とする地質・岩石学グループ,大場(東工大)を中心とする地化グループ、そして笠原(地震火山センター)氏を中心とする地物グループ、それにロシア・米国の研究者を加えた共同研究を実施する。
 今年度は国内外の準備を行うが、大変な仕事になると予想している。
 
                    爺爺岳

7.特定噴火の火山地質学的および岩石学的研究
 興味ある噴火事象について火山地質学的および岩石学的に検討し、そのメカニズムを解明することも行っている。過去の噴火については火山地質の技術を持つ我々の独壇場である。具体的には以下のような研究である。
(1)ニュージーランド、トンガリロ火山の1万年前の噴火(小林(鹿児島大)・Nairn(IGNS)・山川の各氏との共同研究)
(2)大雪山、約3万年前のお鉢平火砕噴火と御蔵沢溶岩流流出(進行中)(若佐・斉藤各氏との共同研究)
(3)有珠1663年噴火に関する研究(松本・中村(地環研)各氏との共同研究)
(4)ラバウル火山、1994年2火山同時噴火に関する研究(高橋・西村(地震火山センター)各氏との共同研究)


8.火山地質・層序および火山岩岩石学に関する基礎的研究
 ある火山地域の地質層序を編むこと、基本的な岩石記載を行うことは地質学・岩石学の基本である。そのことで新しい発見があったり、疑問点が浮かび新たなテーマ設定ができることになる。地質図を書くことが目的では困るが、これからも基礎的な研究は続けたいし、特に学生達にはその醍醐味を味わってほしいと思っている。これまでの研究では北大で以下のような対象で研究をおこなった。
(1)岩手(伊藤)
(2)後支笏カルデラ(増田、丸山、古川の各氏)
(3)大雪〜十勝火山列(澤田・石崎・竹元・斉藤の各氏)
(4)ニペソツ〜丸山(齊藤)
(5)斜里(船山)
(6)渡島大島(早川)
(7)目潟火山(吉永)
現在では
(1)阿寒地域の火砕流層序(長谷川)
(2)十勝地域の火砕流層序(石井)
(3)摩周火山(岸本)
(4)渡島小島(小杉)
でテフラ層序や火山体の研究を行っている。

研究テーマ