論文解説
Matsubara S.,
Takahashi T., Kimura A. P. 2011. Localization
and subcellular distribution of prolyl oligopeptidase in the mouse
placenta. J. Mol.
Histol. 42: 251-264. PubMed HUSCAP
マウスの胎盤は、最も母親側の
Maternal decidua (Md)、真ん中のJunctional zone
(Jz)、最も胎児側のLabyrinth
(La)という3つの層で構成
されている(下図)。我々が解析を行っているPOP (prolyl oligopeptidase)の
mRNAは成熟した胎盤で、JzにあるSpongiotrophoblast (SpT)
細胞で強く発現していた(Matsubara
et al.,
2010)。今回は妊娠期間中のPOPの機能を明らかにするために、成熟過程の胎盤におけるPOPの詳細な発現パターンの解析を行った。in
situ
hybridization解析の結果からPOP
mRNAの発現は、胎盤の構造が完成するE10.5とE11.5ではLa全体およびJzで強く発現していたのに対し、E12.5以降ではJzのみで強い発
現を示すことがわかった
(Fig.2A)。そこで、より詳細な解析をタンパク質レベルで行うためにPOP特異的な抗体を作製して免疫組織化学染色を行った。その結果、POPタン
パク質はE11.5ではホルモンや
成長因子を合成するparietal-trophoblast giant
cell (P-TGC)細胞とSpT細胞およびほぼすべてのLa細胞で発現していたが、E16.5とE18.5ではLaにおいてcanal-
associated TGC
(C-TGC) とsinusoidal TGC (S-TGC)のみが強い発現を維持していた(Figs.4,
5)。これらの結果からマウス胎盤におけるPOP
mRNAとタンパク質の局在はE12.5を境に変化することが明らかになった(下図)。さらに、POPタンパク質の細胞内局在を調べるために細胞を分画し
てWestern
blot解析と活性測定を行ったところ、POPのシグナルは細胞質と膜分画に検出された。以上の結果から、細胞質POPおよび膜POPは胎盤のさまざまな
細胞で多様な機能
を持っていることが示唆された。