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三者共通講義

講師:  益川 敏英  (京都産業大学)
タイトル:若手夏の学校と私

1953年の基研創立を契機に1955年より始まった若手夏の学校は、若手研究者自身が企画・運営するユニークな形をとり、 「学問の交流」・「それを取り巻く環境についての交流」・「原始的交流」を三つの柱として活動してきた。 私自身は1962年、信濃大町の木崎湖で開催された夏の学校に初参加し、 このとき他校の素粒子を専攻する院生と初めて出会った。 この機会を基盤として知人の輪が広がり、今日の諸々の活動のベースになっている。 また他校と自校の同一性と差異も理解できた。 午後の講義を抜け出して木崎湖で他校の院生と泳いだことも、今日研究会を準 備する時に役立っている。


講義A (弦理論)

講師:  橋本 幸士  (理化学研究所)
タイトル: Dブレーン

Dブレーンは、弦理論に必要不可欠な高次元物体であり、素粒子現象論など さまざまな周辺の物理に影響を与えてきた。本講義では、Dブレーンとその 重要性・応用を概観する。 まず、弦理論の基本的な概念と、そこに現れる高次元の物理学を概観する。 ソリトンの概念を学び、ソリトンと次元との 関係、素粒子物理学におけるソリトンの重要性を述べる。 弦理論に現れる高次元物体であるDブレーンを解説し、そこから、ブレーンワールド シナリオと呼ばれる高次元素粒子理論、強結合ゲージ理論の解析への応用など、 弦理論の最先端の話題について述べていく。


講義B (場の理論)

講師:  河本 昇 (北海道大学大学院理学研究院)
タイトル: 超対称性の格子上での定式化とその背景

下記のテーマの中から時間の許す範囲内で選択したテーマを修士の若手にもわかる様に、 基本的な考え方を中心に易しく解説する。

  1. 重力を含む場の理論の格子上での定式化のこれまでの成果とこのアプローチの最終目標
  2. 格子上での場の理論の定式化と格子フェルミオンの問題
    Staggered fermionとDirac-Kaehler fermionの関係
  3. 量子化とツイストされた超対称性
  4. 重力のランダム格子上での定式化:Regge格子重力の基本的考え方
  5. 微分形式を用いたゲージ理論の定式化
  6. 超対称ヤング・ミルズ理論の格子上での定式化
  7. 超対称性の格子化の難しい点と新しい考え方
  8. これからの展望

講義C (現象論)

講師: 尾田 欣也 (大阪大学 大学院理学研究科 物理学専攻)
タイトル: 余次元の物理とブラックホール生成

超弦理論をはじめとして、我々の住んでいる時空が実は4次元ではなく、 余分な次元は観測にかからないぐらい小さく巻きついているのだ、 という理論的な可能性はなかなか魅力的なものです。 講義ではこのような仮定の下での物理を議論します。またLHCにおけるブラックホール生成の可能性についても触れる予定です。