論文解説





2021年

Bandara T.A.M.K., Otsuka K., Matsubara S., Shiraishi A., Satake H., and Kimura A.P.

A dual enhancer-silencer element, DES-K16, in mouse spermatocytederived GC-2spd(ts) cells

Biochemical and Biophysical Research Communications 534: 1007-1012

PubMed HUSCAP

我々はマウスとヒトの精巣で機能する多機能性ゲノムとしてdual promoter-enhancerを同定し、報告しました(Kurihara et al., 2014; Kurihara and Kimura 2015)。今回、我々は、公開されているChIP-seqデータを解析する過程で、マウス精母細胞において、エンハン サーに見られるヒストン修飾(H3K4me1とH3K27ac)とサイレンサーに見られるヒストン修飾(H3K27me3)がどちらもピークとなるゲノム 配列を発見しました(Fig. 1)。DES-K16と名づけたこの領域はKctd16遺 伝子のイントロンに存在し、レポーター解析ではエンハンサー活性を示しました(Fig. 2)。そこで、マウス精母細胞由来のGC-2spd(ts)細胞において、ゲノム編集法を用いてDES-K16領域を削ったところ、上流のYipf5遺伝子の発現が有意に減少しました(Fig. 3ABC)。そして驚くべきことに、DES-K16配列を削ることで、それまで発現が見られなかったKctd16遺伝子の発現が検出されるようになりました(Fig. 3D)。このことは、DES-K16がGC-2spd(ts)細胞でYipf5遺 伝子のエンハンサーとKctd16遺伝子のサイレンサーという両方 の機能を持つことを示唆しています。しかも、このことは、マウスの減数分裂過程でYipf5が 精母細胞で発現上昇し、Kctd16が精母細胞で発現減少すること とも一致していました(Fig. 4)。したがって、DES-K16はマウス精母細胞で機能するdual enhancer-silencerであると考えられます。これまで知られていたdual enhancer-silencerは、そのエンハンサー活性とサイレンサー活性を異なる細胞種で発揮するのに対して、DES-K16は1つの細胞種で両 方の機能を発揮する点が興味深いところです。









木 村グループのトップページ