論文解説





2020年

Mayama S., Hamazaki N., Maruyama Y., Matsubara S., and Kimura A.P.

Transcriptional activation of the mouse Scd2 gene by interdependent enhancers and long noncoding RNAs in ovarian granulosa cells

Journal of Reproduction and Development 66: 435-444

PubMed

我々はこれまでマウス卵巣の顆粒膜細胞における転写調節メカニズムを解析しており、エンハンサーとlong noncoding RNA(lncRNA)が重要であることを明らかにしてきました(Matsubara et al., 2010; Matsubara et al., 2014; Kimura et al., 2017)。今回はこのことをさらに別な遺伝子(Scd2) で検証しました。マウスScd2遺伝子は脂質代謝に機能する遺伝子 で、卵巣と脳で高発現を示し、卵巣では顆粒膜細胞で特異的な発現を示しました(Fig. 1)。ヒトとマウスのゲノム配列を比較したところ、マウスScd2遺伝子座には4つのConserved Noncoding Sequence(CNS)が存在することが判明しました(Fig. 2)。また、これらのCNSを含むさまざまなゲノム領域をRT-PCR解析した結果、CNSとは別の2か所のScd2上流配列がScd2発現と相関して転写されていることがわかりました(Fig. 3)。これら上流領域の転写産物はlncRNAであるため、それぞれをlncRNA-sc1lncRNA-sc2と名づけて、さらに解析を行いました。その結果、lncRNA-sc1lncRNA-sc2はいずれも顆粒膜細胞の核に局在し(Fig. 3D)、顆粒膜細胞の初代培養系でノックダウンするといずれもScd2発 現の低下を引き起こしました(Fig. 4)。これらのことから、2つのlncRNAはともに顆粒膜細胞でScd2の転写活性化に関わることが考えられます。一方、クロマチン免疫沈降 法でヒストンH3K9/K27アセチル化レベルを調べたところ、4つのCNSのうちCNS1とCNS2で顆粒膜細胞特異的なピークが検出されました (Fig. 5)。さらに、顆粒膜細胞の初代培養系におけるレポーター解析では、CNS1とCNS2が両方存在している時にそれぞれエンハンサー活性を示しました (Fig. 6)。以上のことから、マウスScd2は顆粒膜細胞に おいて、2つのlncRNAと相互依存的な2つのエンハンサーによって転写活性化されることが示唆されます(Fig. 7)。









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